映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

チョコレートドーナツ

2014年05月24日 | 映画(た行)
マイノリティが寄り添って・・・



* * * * * * * * * *

1970年代アメリカの実話を元にしています。
同性愛に対して差別と偏見がまだまだ根強かった時代。
ショーダンサーで日銭を稼いでいたルディ(アラン・カミング)。
カリフォルニアで歌手になるのが夢です。
そして、正義感に萌え、世の中を変えたいと思い弁護士になったポール(ギャレット・ディラハント)。
この二人が好意を持ち付き合い始めますが、
その矢先、母の愛を受けずに育ったダウン症の少年マルコ(アイザック・レイバ)と共に暮らすことになります。
世間からは差別と偏見の目で見られるマイノリティの3人ですが、
寄り添い、慈しみ合ってささやかな幸せの日々を過ごしていました。
しかし、それもほんの一時。
ルディとポールがゲイのカップルであるということで、
マルコを奪われてしまうのです。



自由と平等の国アメリカで、
ゲイであることが原因で子供の親権が得られないというのが信じられません。
そのことが「子どもの教育に悪い」というのですね。
最も公正であるべき裁判の場でこの始末。
しかし、実の母は薬物使用で逮捕されているのです。
ほとんど育児放棄、というよりもむしろ児童虐待の向きさえある母親のほうが、
より親としてふさわしいだなんて・・・。



ポールはゲイであることが知られ、職を失ってしまいながらも、
マルコを守ろうとします。
そこまでしてマルコを守りたいという気持ちをなぜ汲み取ってもらえないのか・・・。
嘆いても仕方がない。
そんな時代なのです。


いつまでたっても国家紛争はなくならず、貧富の差もなくならない。
そんなしようもない世の中だけど、
少しづつ前進していることもあるのだということが救いです。
人種差別や、性同一性障害、身体障害者への偏見や差別・・・。
決してなくなってはいませんが、かつてよりはましになっていますよね・・・。



ルディは、母性本能脳のカタマリみたいな人です。
そういう面では女性的ですが、
目的のためにはまっしぐらで行動的、という点では男っぽいところもある。
いや、こういうのは男性的とか女性的とか言う問題ではないですね。
人間として素晴らしい!
そしてまたこのアラン・カミングの心震わす歌声が素晴らしいのです。
ずっと聞いていたかったな・・・。



しかし現実はなんて、酷いのでしょう。
ラストは衝撃的ですが、だからこそなお、
ほんのひと時の3人の幸せだった日々が、愛おしく感じられる・・・

「チョコレートドーナツ」
2012年/アメリカ/97分
監督:トラビス・ファイン
出演:アラン・カミング、ギャレット・ディラハント、アイザック・レイバ、フランシス・フィッシャー、グレッグ・ヘンリー
原題 Any Day Now
歴史発掘度★★★★☆
満足度★★★★☆