映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「枕もとに靴  ああ無情の泥酔日記」 北大路公子

2014年05月05日 | 本(エッセイ)
まゆに唾を付けて・・・

枕もとに靴: ああ無情の泥酔日記 (新潮文庫)
北大路 公子
新潮社


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朝起きたら、なかなか記録的な二日酔いで、
そのうえ、枕もとには靴が置いてあったけど、あれはなに?
フリーライター、独身(薄い関係の彼氏あり)、実家住まいの著者が
ネットにつらつら書いてきた日記がいつしか評判を呼び、一冊の本に!
女優・作家を含む女性たちの大いなる支持を受け、
だがある時はファンすら呆然とさせた、酒とネコと酒の日々。


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キミコさんファンの私、
つい本作にも手が出てしまいました。
フリーライター、40代(本作中は30代)、実家住まいの独身キミコさんの
かつてネット上で公開された日記です。
でも読み始めるとあの、
かつて私を「逆向き電車に乗って数駅気づかせなかった」
あの名著「頭の中身が溢れ出る日々」ほどのパンチはないなあ・・・と思ったのです。
しかし、更に読み進んでいくうちに、少し引っ掛かりが・・・。


「春洗い」という章があり、
春のお彼岸だから「その年一番働いてほしいもの」を洗いに神社へ行った、というのです。
彼女の場合パソコンを持って行きたかったけれど
それは無理なのでマウスを持っていった。
それはお祓いか何かかと思えば、実際に水をかけてジャブジャブと洗うわけなのですね・・・。
へえ、そんな習慣があるところもあるのね・・・と私は思いました。
でも、彼女が住んでいるのは私と同じ札幌。
聞いたこともない・・・???
釈然としないまま、読み進むと今度は
「影日和」、「夜まつり」、「夏送り」・・・。
さすがに気付きましたが、これは彼女の創作なのでした。
しかもディテールに手が込んでいて、情緒が溢れてさえいる!!
恐れ入りました。
ただのぐうたらな酔っぱらいかと思っていたりして、
失礼してしまいました。
さすが、モノ書きの端くれ(またまた失礼!!)のお方だったのですね。
キミコさんの意外な発見をして、うれしい一冊でした。


ところでかつてこの本は書店の「防災コーナー」に置かれていた、
などというまことしやかな話も実は法螺なのか・・・?

「枕もとに靴  ああ無情の泥酔日記」北大路公子 新潮文庫
満足度★★★☆☆