映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ベルファスト71

2016年07月19日 | 映画(は行)
紛争ではなく戦争



* * * * * * * * * *

1971年。
イギリス軍新兵のゲイリー(ジャック・オコンネル)は
北アイルランド・ベルファストに派遣されます。
当時北アイルランドでは、プロテスタント系とカトリック系、
住民間の紛争が激化しています。
「麦の穂をゆらす風」など、この頃のことをテーマにした作品も多いですよね。
特にIRA(アイルランド共和軍)という武装集団が出てくると、
これはもう「紛争」ではなく「戦争」になってきます。



さて、「治安維持」ということで、街にやってきた英国軍ですが、
彼らが来たことで暴動が巻き起こります。
ゲイリーはライフルを盗んだ少年を追ううちに、
隊から離れ、置き去りになってしまいます。
しかも彼とともにいたもう一人の兵は、目の前で撃ち殺されてしまうのです。

その時まで、「治安維持」と思っていたゲイリーは、
初めてこれが「戦争」であることを認識します。

ベルファストの人々の思惑は複雑です。
カトリック・プロテスタント、
その差異は受け入れがたく人々の中に存在しますが、
敵味方が入り乱れ裏切りやスパイ行為もあったりする。
そんな中で逃げ惑い、どこに助けを求めるべきかもわからないゲイリーの、
孤独なサバイバルストーリー。
スリルに満ちています。



冒頭で、派遣前にゲイリーが弟と会うシーンがあるのです。
作品中に詳しい説明はないのですが、
両親はいないらしく、弟は施設に入っている。
ゲイリーは弟を養うために軍隊に入ったことが想像されます。
そして、たった一人の弟のために、必ず生きて帰らなければならないということが暗示されるわけです。
また、ベルファストの街にも弟と同じくらいの年齢の少年たちが登場しますが、
その子供たちを見るゲイリーの目はいつも優しい。
こういうちょっとしたサイドストーリーが効いていると思いました。

ベルファスト71 [DVD]
ジャック・オコンネル,ポール・アンダーソン,リチャード・ドーマー,ショーン・ハリス,デヴィッド・ウィルモット
TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)


「ベルファスト71」
2014年/イギリス/99分
監督:ヤン・ドマジュ
出演:ジャック・オコンネル、ポール・アンダーソン、リチャード・ドーマー、ショーン・ハリス、バリー・キーガン

緊張感★★★★☆
満足度★★★.5