ふたつの故郷でゆれる心
* * * * * * * * * *
アイルランドから、ニューヨーク・ブルックリンにやってきた少女のストーリー。
エイリシュ・レイシー(シアーシャ・ローナン)は、姉のすすめで
アイルランドからブルックリンへやって来ました。
女性ばかりの寮に住み、デパートの売り子として働く新生活。
しかし、この大都会ニューヨークでは戸惑うことばかりで、
激しいホームシックになってしまいます。
そんな時、イタリア系移民のトニー(エモリー・コーエン)と知り合い、
恋をすることで、彼女の生活は次第に生彩を帯びて来ます。
2年が過ぎ、仕事にも慣れ、夜は大学で会計士の勉強をし、恋人もいる。
なんとすばらしい日々。
しかしそんな彼女のもとに、ある悲報が届きます。
やむなくアイルランドへ帰国するエイリシュ。
故郷は思いの外穏やかで、温かでした。
請われて、やむなくある事務所で仕事をし、旧友たちと遊びに行ったりもする。
特に、以前は毛嫌いしていたジム・ファレル(ドーナル・グリーソン)が
好意を寄せてくれていることも知り・・・。
エイリシュの心は揺れ動きます。
ブルックリンへ戻るべきなのか、それとも、この故郷に残るべきなのか・・・。
でも実は、今となってはブルックリンも、彼女を待つ人がいる故郷なんですけどね。
独り立ちのはじめは、心細くて故郷が懐かしい。
そんな心もとないエイリシュのシーンがなんといっても胸を打ちます。
家を出て独り立ちをする。
多くの人が多かれ少なかれ経験をすることですよね。
だから、とても共感がもてます。
しかも、今のように簡単に行き来できたりはしない。
船に揺られ、船酔いで苦しい思いをして数日、ようやく辿り着く場所。
エイリシュは、故郷に帰って、そこが以前自分がいた時とは違うと感じたはずです。
仕事にも、恋にも、余裕がある。
昔のように自信のない自分とは違う。
それは自分がニューヨークで成長したからに他ならないのです。
そして、そこには自分を待ってくれている人がいる。
どちらに進むべきかは明らかなのですけれど・・・。
ちょっと、優柔不断に過ぎたかもしれません。
でもそこが人間というもの。
何事も理屈だけでは物事は進みません。
でも彼女の目をさましてくれたのが、皮肉にもあのいや~な人物だったというのが、
なかなかイケています。
こんなふうな、一人の女性が自立して歩み始めるストーリーというのは山ほどあると思うのですが、
本作が格別なのは、この舞台がアメリカで、そしてニューヨークというところでしょう。
自由の国アメリカ。
そのイメージは今も残っています。
一介の田舎出の少女でも何者かになれて、幸せになれる。
そういう、ささやかではあるけれどアメリカンドリームを叶えるから、
その凛とした佇まいがなお一層美しく感じられる。
ただし、現実を言えば、
今アメリカへ渡ろうとする移民の方は、なかなかこういう夢も果たせないのではないでしょうか。
貧乏人はどこまで行っても貧乏人のまま・・・というこの社会の構図の中では・・・。
だからもしかしたら、本作は失われた「夢」の物語なのかもしれません。
ブルックリンの施設で、アイルランド移民の老人たちが集い、
一人が懐かしい故郷の歌を歌い上げるシーンがあって、ここは泣けました。
素晴らしい歌だったなあ・・・。
つまりは結局、ここにも夢破れた人々が大勢いる、ということでしたか。
今も昔も、やはりそう変わらないのかな・・・・。
エイリシュの、グリーンのカーディガンが印象的です。
シアーシャ・ローナンの瞳の色によく似合う。
「ブルックリン」
2015年/アイルランド・イギリス・カナダ/112分
監督:ジョン・フローリー
出演:シアーシャ・ローナン、ジュリー・ウォルターズ、ドーナル・グリーソン、エモリー・コーエン、ジム・ブロードベント
時代性★★★★☆
満足度★★★★★
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アイルランドから、ニューヨーク・ブルックリンにやってきた少女のストーリー。
エイリシュ・レイシー(シアーシャ・ローナン)は、姉のすすめで
アイルランドからブルックリンへやって来ました。
女性ばかりの寮に住み、デパートの売り子として働く新生活。
しかし、この大都会ニューヨークでは戸惑うことばかりで、
激しいホームシックになってしまいます。
そんな時、イタリア系移民のトニー(エモリー・コーエン)と知り合い、
恋をすることで、彼女の生活は次第に生彩を帯びて来ます。
2年が過ぎ、仕事にも慣れ、夜は大学で会計士の勉強をし、恋人もいる。
なんとすばらしい日々。
しかしそんな彼女のもとに、ある悲報が届きます。
やむなくアイルランドへ帰国するエイリシュ。
故郷は思いの外穏やかで、温かでした。
請われて、やむなくある事務所で仕事をし、旧友たちと遊びに行ったりもする。
特に、以前は毛嫌いしていたジム・ファレル(ドーナル・グリーソン)が
好意を寄せてくれていることも知り・・・。
エイリシュの心は揺れ動きます。
ブルックリンへ戻るべきなのか、それとも、この故郷に残るべきなのか・・・。
でも実は、今となってはブルックリンも、彼女を待つ人がいる故郷なんですけどね。
独り立ちのはじめは、心細くて故郷が懐かしい。
そんな心もとないエイリシュのシーンがなんといっても胸を打ちます。
家を出て独り立ちをする。
多くの人が多かれ少なかれ経験をすることですよね。
だから、とても共感がもてます。
しかも、今のように簡単に行き来できたりはしない。
船に揺られ、船酔いで苦しい思いをして数日、ようやく辿り着く場所。
エイリシュは、故郷に帰って、そこが以前自分がいた時とは違うと感じたはずです。
仕事にも、恋にも、余裕がある。
昔のように自信のない自分とは違う。
それは自分がニューヨークで成長したからに他ならないのです。
そして、そこには自分を待ってくれている人がいる。
どちらに進むべきかは明らかなのですけれど・・・。
ちょっと、優柔不断に過ぎたかもしれません。
でもそこが人間というもの。
何事も理屈だけでは物事は進みません。
でも彼女の目をさましてくれたのが、皮肉にもあのいや~な人物だったというのが、
なかなかイケています。
こんなふうな、一人の女性が自立して歩み始めるストーリーというのは山ほどあると思うのですが、
本作が格別なのは、この舞台がアメリカで、そしてニューヨークというところでしょう。
自由の国アメリカ。
そのイメージは今も残っています。
一介の田舎出の少女でも何者かになれて、幸せになれる。
そういう、ささやかではあるけれどアメリカンドリームを叶えるから、
その凛とした佇まいがなお一層美しく感じられる。
ただし、現実を言えば、
今アメリカへ渡ろうとする移民の方は、なかなかこういう夢も果たせないのではないでしょうか。
貧乏人はどこまで行っても貧乏人のまま・・・というこの社会の構図の中では・・・。
だからもしかしたら、本作は失われた「夢」の物語なのかもしれません。
ブルックリンの施設で、アイルランド移民の老人たちが集い、
一人が懐かしい故郷の歌を歌い上げるシーンがあって、ここは泣けました。
素晴らしい歌だったなあ・・・。
つまりは結局、ここにも夢破れた人々が大勢いる、ということでしたか。
今も昔も、やはりそう変わらないのかな・・・・。
エイリシュの、グリーンのカーディガンが印象的です。
シアーシャ・ローナンの瞳の色によく似合う。
「ブルックリン」
2015年/アイルランド・イギリス・カナダ/112分
監督:ジョン・フローリー
出演:シアーシャ・ローナン、ジュリー・ウォルターズ、ドーナル・グリーソン、エモリー・コーエン、ジム・ブロードベント
時代性★★★★☆
満足度★★★★★