深読みしたくなる
* * * * * * * * * * * *
吉野源三郎さん著作の題名をタイトルとしていますが、
内容は全く別物、宮崎駿監督によるオリジナルストーリーです。
ジブリアニメというとこれまでは、公開前に鳴り物入りで大プロモーションが繰り広げられ、
見る前に、もう見なくてもいいかと思ってしまうくらいでしたが、
本作については予告編もCMも宣伝もなし、という異例の公開。
私は初日のアサイチで見ましたが、
それでも満席というほどではないけれど、そこそこ賑わっていました。
さすがジブリアニメですね。
さて、事前にストーリーもキャストも何も知らされていなかったので、
ワクワク感が高まります。
時代は太平洋戦争末期。
主人公となる眞人(まひと)少年は、空襲の火災で母を亡くします。
そして、父の仕事の都合もあり、父の再婚相手の家がある田舎へ越してきます。
父の再婚相手は、眞人の母の妹。
つまり眞人にとっては叔母に当たる人。
そしてその実家は古い大きなお屋敷。
ある日、不意に行方不明となった義母を探すために、
眞人は謎のアオサギに導かれ、異界へ踏み込んでいきます・・・。
これはつまり、正統なファンタジー、「行きて帰りし物語」なのです。
まず眞人の置かれている状況。
戦時中であり、母を亡くしている。
父の再婚ということで、新たに「母」を迎え入れることになった。
その義母の妊娠。少年はまだ結婚のナマの意味をスンナリ受け入れられない。
そして転校。
少年にとっては実に苦しい出来事ばかり。
彼は表向き「いい子」を演じているので、誰にもそんな思いを打ち明けることもできず、
胸の奥にため込んだままになっているのです。
そんな彼が、異界へ踏み込みどんな体験を積んでいくのか・・・。
つまりこれは彼自身の胸の奥の暗い部分を見つめ、向き合うための旅なのです。
やがて彼が帰ってくることは、ファンタジーとしては読み込み済み。
だからまあ、四の五の言わずに、その冒険を楽しめばいい。
作中で、所々これまでのジブリ作品を思い出させるようなシーンがあって、
本作はやはり宮崎駿氏の集大成というべき作品なのだろうという気がしました。
アオサギを始め様々な登場人物や出来事の意味は、
おそらくもう一度見ないとはっきりしない気がするので、
多分もう一度見ることになるかも知れません。
見る人それぞれがそれぞれの深読みをして楽しむ。
これが本作の醍醐味なのかも。
さしあたって私は、ほとんど妖怪じみてわらわらと出てくるばあさまたちが好きです!
声優さんについては本当に事前の情報がなかったのですが、
見ているうちに気づいたのは2人。
菅田将暉さんと柴崎コウさん。
あとで木村拓哉さんも出ていたと知ってビックリ。
わからなかったのが、クヤシイ・・・。
そしてエンドロールとともに流れたのは米津玄師さん。
やった~って感じですね。
ざっと見て、とりあえずは楽しめるファンタジー。
その奥の深みを読み解くためには、一度ではムリかな?というのが率直な感想です。
<シネマフロンティアにて>
「君たちはどう生きるか」
2023年/日本/124分
監督・原作・脚本:宮崎駿
出演(声):山時聡真、菅田将暉、柴咲コウ、あいみょん、木村佳乃、木村拓哉
ファンタジー度★★★★★
ジブリ度★★★★★
満足度★★★★☆