映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

吟ずる者たち

2024年12月28日 | 映画(か行)

百試千改

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一見、詩吟をする人たちの話?と思ったのですが、
そうではなくて、酒造りの人々の話。
つまり吟醸酒の「吟」でした。

東京で夢破れ、故郷の広島に帰ってきた永峯明日香(比嘉愛美)。
彼女は、ここの酒蔵の家で育ちました。
この酒蔵というのが、広島で日本初の吟醸酒を造った三浦仙三郎の杜氏の末裔が開いたもの。
明日香は酒造りに興味はあったものの、
養女である自分が家を継ぐことはそぐわないと思い、酒造りを避けていたのです。

実家に戻った明日香は目標を見失い、所在なく過ごしていましたが、
ある時、父が家宝とする仙三郎の手記を目にします。

仙三郎は明治時代、腐造を起こさず安定した日本酒醸造技術を確立しました。
「百試千改」を信条とし、研鑽を重ねて、軟水による低温醸造法を導き出したのです。

そんな千三郎の日本酒に対する執念に感化され、
また父が病に倒れたこともあって、明日香は酒蔵の仕事に就くことを決意。
そして、新たな挑戦を試みます。

本作は現代の明日香のパーツと、明治時代の千三郎のパーツが交互に描かれています。

当初、酒造りで最大の難関は「腐造」なんですね。
酒がうまく発酵できずに腐ってしまう。
そういえば、以前のNHK朝ドラで、牧野富太郎氏の実家が造り酒屋で、
最後は「腐造」が出たために潰れてしまった、というエピソードがあったような。
そんなことにならないための、一定の方法を突き止めたのが、
三浦仙三郎なんですね。

百回試して千回改める。
試行錯誤の繰り返しで、ようやく答えが出る。
「百試千改」。
良いことばです。

吟醸酒、飲みたくなってしまった・・・。


<Amazonプライムビデオにて>

「吟ずる者たち」

2021年/日本/115分

監督:油谷誠至

出演:比嘉愛美、戸田菜穂、渋谷天外、中尾暢樹、大和田獏、中村俊介

日本酒愛度★★★★★

満足度★★★.5