映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

アンダー・ユア・ベッド

2024年12月21日 | 映画(あ行)

異常なストーカーではあるけれど

* * * * * * * * * * * *

家でも学校でも、誰からも必要とされず、
存在自体を無視されていた男・三井直人(高良健吾)。
学生時代には、誰からも名前すら覚えてもらえません。
しかし、たった1人、「三井くん」と名前を呼んでくれた女性・佐々木千尋(西川可奈子)のことを
忘れることができません。

11年後、三井は千尋との再会を夢見ていましたが、ついに彼女を見かけます。
しかし彼女にはかつての快活さはなく、
暗く沈んで、まるで別人のようになっていました。
そこで、三井の千尋への純粋な思いは暴走をはじめます。

三井は千尋の家のすぐそばで熱帯魚店を開き、
その階上の居所から、千尋の家を監視しはじめたのです。
千尋は結婚して、夫と赤子との3人暮らし。

三井は、千尋を盗撮、盗聴しはじめ、
やがてついには家に侵入してベッドの下に潜み、
夫婦の営みまでを監視しはじめたのです・・・。

三井はもう間違いなくストーカーと化しているのですが、
その異常性にかすかに共感できる気がしてくるのも、本作の不思議なところ。

三井が千尋の家を監視して分ったのは、彼女が夫から酷い暴力を受けているということ。
ひどく憤りを感じる三井ですが、そもそも自分がやっているのも違法行為だし、
暴力を止めに入りたくても、自分の腕力にまったく自信がない。
ベッドの下で、ひたすら耐えているだけの情けないやつなのです・・・。

三井の願いは、ただ千尋のそばにいたい、近くで彼女の存在を感じていたい、
ということのみ。

そもそも学生時代に会っていたはずの千尋は、
三井のことをまったく覚えていなかったのです。
そんな相手に過剰に思い入れて、でも何も言い出せず何もできず・・・。
異常で情けない男の物語。

 

なかなかに心揺さぶられます。


<Amazon prime videoにて>

「アンダー・ユア・ベッド」

2019年/日本/98分

監督・脚本:安里麻里

原作:大石圭

出演:高良健吾、西川可奈子、安部賢一、三河悠冴

ストーカー度★★★★☆

透明人間度★★★★☆

満足度★★★.5