時を超えて、ここにいる意味
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2024年8月、当初一館のみで封切りされた本作。
東映京都撮影所の特別協力のもと撮影されたという自主制作作品です。
その後、口コミで話題が広まり上演館が増加していきまして、
興味はあったけれどもタイミングが合わずに見逃してしまっていた私も、
やっと見ることができました。
会津藩士、高坂新左衛門(山口馬木也)は、家老から長州藩士を討つよう密命を受け、
標的の男と刃を交えた瞬間、落雷によって気を失ってしまいます。
目を覚ますと、そこは現代の時代劇撮影所。
周囲は江戸時代の服装をした人ばかりなので、
新左衛門はしばらくこの異変に気づきません。
が、さすがにここは自分が元いた世界とはまるで異なることに気づきます。
江戸幕府は140年前に滅んだことを知って、愕然とし、
どうして良いのか分らなくなってしまう新左衛門。
でも、心優しい人たちに助けられ、生きる気力を取り戻していきます。
そして自らの磨き上げた剣の腕を頼りに、撮影所で斬られ役として生きていくことに。
そして順調に進み始めた新左衛門の新たな人生。
そんな時、彼に思わぬ出会いが訪れます。
さて、新左衛門と同時に落雷に討たれた長州藩士はどうなったのか、
そんなところも本作の重要なポイントです。
また、新左衛門が消えた後に、
故郷会津藩がたどった悲惨な運命を知ったときの彼の心境。
まったく偶然に起こったタイムスリップではありますが、
自分が時を超えてこんなところで生きている意味をも探ることになる新左衛門。
現代の撮影所近辺の人々が、ほのぼのと新左衛門を受け入れてくれるところが救いでもあります。
新左衛門は記憶喪失になってしまった、というテイでこの地に住み着いているのです。
特別にタイムスリップなどというSFになじみのない方でも、
すんなり受け入れられるストーリーだと思います。
ラストの緊迫感もよし。
映画は予算をかければよいというモノでもないのがよく分ります。
時代劇は今、確かに斜陽かもしれないけれど、
人の心の有り様は今も昔も変わらないので、
きっとまた一回りして、流行るときが来るのではないかな?
月9で時代劇ラブストーリーなんていかが・・・?
あ、すでに今年の大河ドラマは平安ラブストーリーだったな。
<サツゲキにて>
「侍タイムスリッパー」
2024年/日本/131分
監督・脚本:安田淳一
出演:山口馬木也、冨塚ノリマサ、沙倉ゆうの、峰蘭太郎
武士の生き様度★★★★☆
満足度★★★★★