映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

追憶と、踊りながら

2017年03月31日 | 映画(た行)
故国を離れ肉親をなくした老女は何を思う・・・



* * * * * * * * * *

ロンドンの介護ホームで暮らすカンボジア系中国人の女性ジュン。
息子のカイが面会にきてくれることだけを楽しみにしています。
カイは、友人のリチャード(ベン・ウイショー)と暮らしているのですが、
ジュンはなんとなくリチャードが嫌いなのです。
そもそも言葉が通じません。
ジュンはかなり前からイギリスに移住していたようなのですが、
ついに英語は覚えないままなんですね。
一方この地で育った息子カイは英語も中国語もペラペラ。
移民の家族にはよくある構図です。
さて母は、カイとリチャードは単なる友人と思っているのですが、
実は恋人同士なのです。
カイはそのことを母に言い出しかねていました。
しかし、勇気を出してカミングアウトし、母と一緒に暮らしたいと思うのです。
リチャードもカイが望むならそれで良しと思っています。
そこで母に真実を告げようとしたその日・・・。



ジュンは、なんとなく気配を感じ、
カイに馴れ馴れしいリチャードを苦手だと思うようになっていたのでしょうね。
なんというかこのカイとリチャードのベッドで戯れるシーンとかが、なかなか美しいのですよ・・・。
ボーイズラブ好きの女子の視線にも十分に耐えられると思います。
が、しかし、
映画でも初めからわかるように描かれているのでネタバラシしてしまいますが、
カイはその日亡くなってしまうのです。
だから彼が現れるのは、すべて回想シーン。
カイを最も愛し、かけがいのない存在と認める母とリチャード。
双方の喪失感はもう、見ているだけでも切ないです。

それでリチャードはカイのお母さんを放っておけない気がして、
施設に通い面会するのですが、やはり言葉が通じない。
知り合いの女の子に通訳を頼みます。



言葉などなくても通じるものはたしかにありますよね。
そう、先日見た「ボーダレス」のように。
けれど、細かなことはやはりムリ。
言葉の壁というのは意外と大きい。
通訳がついてやっとほっとするけれども、
ダイレクトに話せないのはやはりまどろっこしい。
でも本当は一番大事なこと、カイを思う気持ちは共通のもの。
そこだけお互いに理解できれば、かなり歩み寄ることはできそうなのだけれど・・・。
故郷も帰る家も家族も失くしたジュンの切なさが胸にしみます・・・。



追憶と、踊りながら [DVD]
ベン・ウィショー,チェン・ペイペイ,アンドリュー・レオン,ナオミ・クリスティ
アットエンタテインメント


「追憶と、踊りながら」
2014年/イギリス/86分
監督・脚本:ホン・カウ
出演:ベン・ウイショー、チェン・ペイペイ、アンドリュー・レオン


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
心に沁みる (こに)
2017-04-01 16:01:42
心に染入る映画でしたね。
「香水」とは全く違うベンに驚きました。
もし、自分が今から海外で暮らすことになったら…カイの母親の心情が容易に想像出来てまた切なかったです。
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香水! (たんぽぽ)
2017-04-01 19:24:12
>こにさま
ベン・ウイショーは最近007にも出ていますが、やっぱり「香水」の印象が強いですよね。私も未だに、そういう連想をします。
返信する

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