ある戦争

複雑な思いに掻き立てられる

＊　＊　＊　＊　＊　＊　＊　＊　＊　＊

タリバンの圧政下アフガニスタン。
デンマーク軍が平和維持活動に派遣されていました。
クラウスは母国デンマークに妻子を残し、デンマーク軍の隊長として任務にあたっています。



冒頭で、あたりを巡回中に地雷を踏んで命をなくす兵士のシーンがあります。
彼らは地雷探知機を持って歩いていたので、
危険な場所なのだなあ・・・と思いながら見ていたのにもかかわらず、
突然の爆発音に、私はびっくりして飛び上がってしまいました。
かように危険な場所であり、「平和維持活動」とは言いながら、
命がけなのだと思い知らされます。



さて、クラウスも共に行動したある日の巡回中、彼らは敵の急襲を受けてしまいます。
仲間の一人は銃撃を受けて重症。
あまりの攻撃の激しさに、このままでは全滅の危険もあります。
クラウスは軍規に背き、敵の姿を視認しないままに、爆撃支援を要請します。
結果、攻撃は収まり、重症の兵士も救うことができたのですが、
その空襲で子供も含む民間人11人が犠牲になってしまっていたのでした・・・。
クラウスはこのことの責任を問われ、軍事裁判を受けることになりますが・・・。



あの銃弾の降り注ぐ緊急時に、冷静な判断を下すのは大変なことです・・・。
そんな過酷な現場にいなかったものが、机上論で人を裁くということが、
とても傲慢なことのように思えてなりませんでした。
あれ、つい最近もこんなことを思ったなあ・・・と思い返してみると、
「ハドソン川の奇跡」ですね。
こういうものを見ると「法」というものの冷酷さを思わずにいられません。
確かにすべてを人情で流すことはできないですけれど。



それにしてもやはり、クラウスの判断で犠牲になった人がいたわけで、
裁判の結果がどうあろうと、彼の自責の念は拭うことはできないのではないかと、
そんな気がします。
これはデンマークのお話。
今や多くの国が同様に「平和維持軍」を派遣しているのですね。
日本の自衛隊が、このような立場に立つことのないように、祈ってしまいます。
でも、このような各国の状況を見ると
「ずるい」と思われても仕方ないのかな、などとも思ったりして。
いずれにしても、複雑な思いを掻き立てられる作品です。

「ある戦争」
2015年/デンマーク/115分
監督・脚本：トビアス・リンホルム
出演：ピルウ・アスベック、ツバ・ノボトニー、ソーレン・マリン、ダール・サリム

理不尽度★★★★★
満足度★★★★☆