映画と本の『たんぽぽ館』

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「ハッカの薫る丘で」 森久美子

2017年01月11日 | 本(その他)
老境に入りながらも新しい人生を目指す

ハッカの薫る丘で (中公文庫)
森 久美子
中央公論新社


* * * * * * * * * *

中村美紀子は北海道で農家の嫁として働いている。
ある日、卒業以来五十年ぶりに開催される中学の同窓会の案内が届く。
一九六四年の東京五輪の開会式をカラーテレビで観ようと、
級友とバスの旅をしたことを思い出す。
当時実らなかった恋のことも…。
夫に従い自分をおさえ暮らしてきた美紀子だったが、友との再会を機に心に変化が生まれた。


* * * * * * * * * *

北海道が舞台で、主人公の年齢は私と近い主婦。
ということで親しみがわき読みました。


美紀子は中学卒業以来はじめての同窓会に出席します。
そこで、淡い初恋の相手と対面することになる。
それはちょうどあの東京オリンピックが開かれた1964年。
その開会式当時の思い出と初恋の相手との思い出が重なります。
現在の美紀子は、農家の嫁として夫との二人暮らし。
その夫との関係は上手くいっておらず、
今も自分に心を寄せていてくれる初恋の人に心が揺れ動く・・・。


あ、決してメロドラマがメインではないのですよ。
農業の新しいあり方を模索する、そういうテーマとストーリーは絡み合っています。
そして、読者としては嬉しい展開。
確かに興味深く読みました。


だけれども・・・。
ここの美紀子の夫が、かなり男尊女卑的・高圧的で、
嫌な感じのヤツに描かれています。
まあ、そうでなければ、初恋の相手ととはいっても、
単なる浮ついた不倫に見えてしまいますもんね。
私はこういう単純に「悪役的」な人物が登場する話は、どうも苦手です。
第一なんでそんな人と結婚したのよ、といいたくなる。
美紀子は幼稚園教諭の仕事をしていて、ちゃんと自立できていたのです。
ですが39歳になって、父親の圧力と世間の風に負けた(?)のでしょうかねえ。
特に好きとも思えない相手と結婚。
でもね、農家の一人息子でしかも親と同居って初めからわかっていたのですよね。
好きでなければ、並大抵の覚悟で結婚なんかできませんよ・・・。
そこにリアリティを感じられない。
時代が違う? 
いや~、この人私と似たような年だから、そんな時代じゃなかったでしょ、と思える。
多分、私が天邪鬼なんでしょう。
あんまり手放しでいい話だった~とは思えませんでした。
65歳のメロドラマ。まあ、いいか。
それを否定すると、自分まで年寄りの気分になっちゃいますもんね。

「ハッカの薫る丘で」森久美子 中公文庫
満足度★★☆☆☆


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