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「夢幻花」東野圭吾

2016年06月15日 | 本(ミステリ)
黄色い朝顔の謎

夢幻花 (PHP文芸文庫)
東野 圭吾
PHP研究所


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花を愛でながら余生を送っていた老人・が殺された。
第一発見者の孫娘・梨乃は、祖父の庭から消えた黄色い花の鉢植えが気になり、
ブログにアップするとともに、この花が縁で知り合った大学院生・蒼太と真相解明に乗り出す。
一方、西荻窪署の刑事・早瀬も、別の思いを胸に事件を追っていた…。
宿命を背負った者たちの人間ドラマが展開していく"東野ミステリの真骨頂"。
第二十六回柴田錬三郎賞受賞作。


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かつて「青いバラ」を作り出すために、
多くの研究家が躍起になったという話は聞いたことがあります。
ここで登場するのは「黄色い朝顔」。
そういえば、見たことはありません。
老人・秋山周治は、ついにその黄色い朝顔を咲かせたと思われたのですが、
その後何者かに殺害されてしまいます。
孫娘の梨乃は、この黄色い朝顔のために祖父は殺されたのではないかと思うのです。
もし黄色い朝顔を本当に創りだしたのなら、
世界的な快挙であり、利益にも繋がる・・・。


さてしかし、黄色い朝顔はそのような植物学的価値とは別に
もう一つの秘密を持っていた・・・。
虚を突かれました。
なるほど、この方がよほど人を狂わせる。


本作の冒頭に悲惨な通り魔殺人事件が描かれているのですが、
その後のストーリーではなかなかその話に繋がりません。
しかし驚くべき真相によって、その事件との繋がりが見えてくる辺りは、
さすがに見事です。
原子力発電の研究をしていた大学院生・蒼太が、
東日本大震災後道を見失ってしまっていたのですが、
最後にその進むべき道を見出していくさまも心地よい。


それにしても黄色い朝顔。
江戸時代には実際にあったそうなのですが・・・。
なぜ失くなってしまったのでしょうね・・・?

「夢幻花」東野圭吾 PHP文芸文庫
満足度★★★★☆


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