映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

グランド・ブダペスト・ホテル

2014年06月17日 | 映画(か行)
郷愁を呼ぶ砂糖菓子、しかしその甘さに騙されるなかれ



* * * * * * * * * *

1960年代。
古くてさびれたブダペストホテルで、
ある作家(ジュード・ロウ)が、ホテルのオーナーからこのホテルを手に入れた約30年前の経緯を聞くのですが、
本作はその時の話を描いています。


時はさかのぼり1930年代、
東ヨーロッパが誇る豪華で格式の高いグランド・ブダペスト・ホテル。
そこのコンシェルジュであるムッシュ・グスタヴ・H(レイフ・ファインズ)は、
従業員からも宿泊客からも厚く信頼を得ている有能な男。
ある時、長年懇意にしてきたマダム・Dが、何者かに殺害されてしまいます。
その遺産相続騒動に巻き込まれたグスタヴが、
ベルボーイのゼロ・ムスタファ(トニー・レヴォロリ)を引き連れ、
ドタバタの冒険劇を繰り広げます。



独特のユーモアを根底に、
ミステリアスでちょっと甘く懐かしい感じがする。
なんともいえないこの雰囲気は、
なるほど、ウェス・アンダーソン監督独自のものですね。
家柄とか格式とか・・・そういうものが頑固としてあった時代。
まあ、実際はいいことばかりではなかったでしょうけれど、
欧米の方々はこういうことに郷愁を感じるのでしょうね。
カラートーンも全体に甘く、まるで砂糖菓子のようです。
残酷シーンまで砂糖にくるまれてる感じ。
コンシェルジュは自身のホテルと仕事に最大の誇りを持ち、
従業員もまたチームワークよく、自身の役割に誇りを持って、くるくるとよく働く。
豪華で清潔で、いかにも泊まってみたい感じのするホテル。



しかしその30年後のホテルの様子が、対比するとまた面白いのです。
いかにも古ぼけて寂れている。
時の流れのウツロイが実によく現れています。


そして、出演陣のなんとまた豪華なこと!
普通これだけ登場人物が多いと、私など途中でだれが誰やらわからなくなって、
興味が半減してしまう事が多いのですが、
これだけ見知っている俳優さん(しかも個性派揃い)が起用されていれば、
さすがに人の区別はつくので、わかりやすい!!



でも、油断はなりません。
様々なところに面白みの仕掛が散りばめられているので、
私などどれだけ見届けられたのか、怪しいところです。
最高のコンシェルジュ?
いやいや、意外と食わせ物だったりしますね・・・。
中心となる、ムッシュ・グスタヴと、ベルボーイのゼロのコンビが最高です。
これって、どちらかが「ボケ」の役に徹すれば、完全にドタバタコメディになるのですが、
本作はそうではなく、あくまでも上司と下っ端。
しかもそれぞれに優秀。
互いに助け合い、補いあっていくこのコンビには、なかなか胸がすきます。
こういう作品は出演している皆さんも何だか楽しそうだなあ・・・。



本作はドイツのゲルリッツという街でロケが行われたそうで、
ヨーロッパの古い町並みがそのまま残ってるわけです。
ちょっと行ってみたくなりますね。


劇場にまた行くゆとりはないかと思いますが、
DVDでもぜひまた見たい作品です。

「グランド・ブダベスト・ホテル」
2014年/アメリカ/100分
監督:ウェス・アンダーソン
出演:レイフ・ファインズ、F・マーレイ・エイブラハム、マチュー・アマルリック、エイドリアン・ブロディ、ウィレム・デフォー、ジュード・ロウ、トニー・レヴォロリ、シアーシャ・ローナン
郷愁度★★★★☆
ユーモア度★★★★★
満足度★★★★★


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