映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「カササギたちの四季」道尾秀介

2014年04月11日 | 本(ミステリ)
ミスリード + 真の解答

カササギたちの四季 (光文社文庫)
道尾 秀介
光文社


* * * * * * * * * *

開店して2年。店員は2人。
「リサイクルショップ・カササギ」は、
赤字経営を2年継続中の、ちいさな店だ。
店長の華沙々木は、謎めいた事件があると、
商売そっちのけで首を突っ込みたがるし、
副店長の日暮は、売り物にならないようなガラクタを高く買い取らされてばかり。
でも、しょっちゅう入り浸っている中学生の菜美は、
居心地がいいのか、なかなか帰ろうとしない―。


* * * * * * * * * *

道尾秀介氏による連作短編集。
4作が収められていてそれぞれ春夏秋冬に対応しているという
オシャレな構成です。
「リサイクルショップ・カササギ」店長の華沙々木と
修理担当の日暮が、ちょっとした日常の事件を解決していきます。
となれば、名探偵ホームズ役が華沙々木で、
とんまなワトソン役が日暮・・・と一瞬思ってしまう。
しかし本作、そう一筋縄には行きません。
華沙々木は自分自身がホームズ的天才的ひらめきの持ち主だと思い込んでいるのですが、
実は大マヌケのピント外れ。
しかし心優しき日暮は、華沙々木とある少女のために
密かに真相を導き出し、
なおかつ華沙々木の迷推理の裏付けまで創作してしまうという離れ業をやってのけます。
ミスリード+真の解答という二重の驚き。
これぞ本巻の醍醐味。
そしてまた道尾氏のこの手腕に感服してしまうわけです。
答え1個でも大変なのに2個も・・・。


これらの短編の冒頭は、季節感に満ちた描写が綴られた後、
「・・・風は穏やかで、財布には金がない。」のように
「財布には金がない」のフレーズがいつも出てきます。
いつも強欲な和尚にゴミ同様の品物を法外な値段で無理やり買い取りさせられた帰り道・・・。
でも最後の話で、この和尚の意外な側面を私達は知ることになるという構成がニクいのです。
しかもそこのところだけ「財布には金がある。」
店に入り浸っている何やらわけあり風の少女・菜美の事情に触れるのは3作目ですし。


道尾作品にしてはさほど暗くありませんし、
ユーモアと驚きに満ちた、楽しめる作品です。


「カササギたちの四季」道尾秀介 光文社文庫
満足度★★★★☆


最新の画像もっと見る

コメントを投稿