映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

散歩する侵略者

2017年10月01日 | 映画(さ行)
愛の概念とは



* * * * * * * * * *

数日行方がわからなくなった夫・真治(松田龍平)が、
別人のようにぼんやりして戻って来て、何もせず、
けれども毎日散歩に出かける。
妻・鳴海(長澤まさみ)は戸惑いを隠せません。



同じ頃、町で一家惨殺事件が発生。
犯人と思われるその家の娘・あきら(恒松祐里)は逃走中。



その事件を追うジャーナリスト桜井(長谷川博己)は、
同じくあきらを探しているという少年・天野(高杉真宙)と出会います。

ここで、天野はあっさりと自らの正体を明かしてしまうのですが、
つまり「自分たちは地球を侵略に来た宇宙人」だというのです。


彼らは人の体に乗り移り、地球人の「概念」を吸収します。
「家族」とは・・・。
「仕事」とは・・・。
「所有する」こととは・・・。
そして「愛」とは・・・?



なんだろうこれは、近未来のSF? コメディ?
などと思いながら見ていきましたが、「寓話」というのに近いかもしれません。
あとで調べると舞台劇が原作と知り、なるほど、と納得しました。


通常のSF作品なら地球侵略を狙う「宇宙人」は排除すべき敵。
けれど桜井はなにやら天野に惹かれていき、友情らしきものが芽生えていきます。
鳴海も、もう離婚寸前の間柄だった夫が宇宙人であると知り、
逆に心配になって彼を守る立場となっていく。
「愛」の概念は複雑すぎて、宇宙人もそれを簡単には吸収しきれないのですが、
じわじわとそれは彼らの中に広がって行くようでもあります。



宇宙人たちが乗っているのが白いヴァン。
国防軍側が黒いヴァン。
どちらが敵なのか、いつの間にか立場が逆転しています。
とても興味深い作品でした。


松田龍平さんの宇宙人ぶりがナイス。
・・・というか、彼はいつものままだったような気もします。
もともと「宇宙人」だったのか!

<シネマフロンティアにて>
「散歩する侵略者」
2017年/日本/129分
監督:黒沢清
原作:前川知大
出演:長澤まさみ、松田龍平、高杉真宙、恒松祐里、長谷川博己

ユニーク度★★★★★
満足度★★★★☆


最新の画像もっと見る

コメントを投稿