一人台所で聞くラジオもいい
* * * * * * * * * *
それなりの時間を過ごしてくると、人生には妙なことが起きるものだ―。
昔なじみのミルク・コーヒー、
江戸の宵闇でいただくきつねうどん、
思い出のビフテキ、静かな夜のお茶漬け。
いつの間にか消えてしまったものと、変わらずそこにあるものとをつなぐ、
美味しい記憶。
台所のラジオから聴こえてくる声に耳を傾ける、十二人の物語。
滋味深くやさしい温もりを灯す短篇集。
* * * * * * * * * *
吉田篤弘さんの短編集です。
特には関連のない12の物語。
共通するのは、どの話にもラジオが登場するところ。
それも、静かな声で語りかける、聞いても聞かなくてもよさそうな、
いわばバックミュージック的に台所などで聞くラジオ。
登場人物たちはそういう習慣を身につけているのです。
私も昨今、ラジオを聞くことが多いのですが、
もう少しにぎやかなものが多いかなあ・・・。
しかもネットのタイムフリーで聞いていたりするのは、
本作で言う「ラジオ」とはちょっと違うのかもしれない。
吉田篤弘作品に似合うのはもう少しひなびた、
デジタルではなくアナログのラジオであり、レコードであったりします。
巻末で著者ご自身が述べていますが、
ここにあるストーリーは物語の「起承転結」を描くのではなく、
その始まりのところ、
「起承」か、時には「起承転」までで、
「結」には至らないものばかり、と。
物語の始まりの「束の間」の部分を描きたかったとのこと。
確かに、色々な物語が発展する予感がそこにあります。
が、そこは読み手が想像するしかありません。
若干、欲求不満はありながらも、余韻だらけのこの本。
やはりボソボソと静かなアナウンスが続くラジオを聞きながら
読むのがいいかもしれません。
12の物語、直接のつながりはありませんが
ほんの少し、重なっている部分もあるようですよ。
そこを楽しみに読むも良し。
「台所のラジオ」吉田篤弘 ハルキ文庫
満足度★★★☆☆
台所のラジオ (ハルキ文庫) | |
吉田 篤弘 | |
角川春樹事務所 |
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それなりの時間を過ごしてくると、人生には妙なことが起きるものだ―。
昔なじみのミルク・コーヒー、
江戸の宵闇でいただくきつねうどん、
思い出のビフテキ、静かな夜のお茶漬け。
いつの間にか消えてしまったものと、変わらずそこにあるものとをつなぐ、
美味しい記憶。
台所のラジオから聴こえてくる声に耳を傾ける、十二人の物語。
滋味深くやさしい温もりを灯す短篇集。
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吉田篤弘さんの短編集です。
特には関連のない12の物語。
共通するのは、どの話にもラジオが登場するところ。
それも、静かな声で語りかける、聞いても聞かなくてもよさそうな、
いわばバックミュージック的に台所などで聞くラジオ。
登場人物たちはそういう習慣を身につけているのです。
私も昨今、ラジオを聞くことが多いのですが、
もう少しにぎやかなものが多いかなあ・・・。
しかもネットのタイムフリーで聞いていたりするのは、
本作で言う「ラジオ」とはちょっと違うのかもしれない。
吉田篤弘作品に似合うのはもう少しひなびた、
デジタルではなくアナログのラジオであり、レコードであったりします。
巻末で著者ご自身が述べていますが、
ここにあるストーリーは物語の「起承転結」を描くのではなく、
その始まりのところ、
「起承」か、時には「起承転」までで、
「結」には至らないものばかり、と。
物語の始まりの「束の間」の部分を描きたかったとのこと。
確かに、色々な物語が発展する予感がそこにあります。
が、そこは読み手が想像するしかありません。
若干、欲求不満はありながらも、余韻だらけのこの本。
やはりボソボソと静かなアナウンスが続くラジオを聞きながら
読むのがいいかもしれません。
12の物語、直接のつながりはありませんが
ほんの少し、重なっている部分もあるようですよ。
そこを楽しみに読むも良し。
「台所のラジオ」吉田篤弘 ハルキ文庫
満足度★★★☆☆
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