これまでの生き方の肯定。そして明日からも生きていく。
* * * * * * * * * *
藤堂志津子さんの、オーバー40の女たちの生きざまを描く短篇集。
どれも人生の半ばを過ぎた女性たちが登場します。
結婚していたり、そうではなかったり、まちまちですが、
共通点は、彼女らが自分のこれまでの生き方を後悔していないこと。
自分の生き方を少しずつ積み重ねながら今日に至ったことを、
彼女らはしっかり自覚して、肯定しているのです。
結婚していてさえも、夫に倚りかからない。
こうした女性たちがきっと「お一人さまの老後」を豊かに過ごすのだろうな・・・と、
ちょっぴり頼もしい気がします。
「バッド・ボーイ」
長年の母の介護を終えたひとり暮らしの由未子。
犬の散歩の途中、足を痛めて困り果てているところを一人の青年に助けられます。
彼、花樹は快活で親しげ。
犬の散歩のバイトを引き受けてくれたので、
由未子は彼にカレーを食べさせたり、クッキーを焼いたり。
しかし、実は花樹にはある下心があり・・・。
予想される結末ですが、でもはっとさせられるのは由未子の気持ちです。
彼女は騙されたと知って悲嘆にくれたり、彼を恨んだりはしない。
仕方ないか・・・と彼女は思う。
ここに来てまで相手によく思われたいからではなく、
あえて言うなら、卑しい人間にはなりたくないという由美子のささやかな美意識というか、
つっぱりや意地に近いものから。
一人で生きていこうとするものの矜持というのでしょうか、
はじめからそういうものを持っている人なのです。由未子は。
苦い話なのですが、後味は悪くない。
表題作「パーフェクト・リタイヤ」
60歳の定年を間近に控えた布沙子。
会社の何度かの吸収合併の際のリストラをくぐり抜けて、今日に至っています。
途中リストラに合わなかったのは、
ひたすら地味に目立たないようにしてきたおかげ、と思っています。
そんな布沙子は、退職後に一つの計画を持っています。
なんと、バーを経営すること。
40年独身で地味なOLを続けてきた彼女の、女として最後の楽しみ。
それは、これまでの人生を後悔しているというのではありません。
こうして過ごしてきたからこそ、
ある程度の資金もできたし、ここから新たな出発ができるということなのでしょう。
周りの人には想像もつかない転身です。
むろん、そのことは職場の人には内緒。
・・・なんだかそういうのもいいなあと思えてきます。
長年の愛人が、密かに彼女と共に過ごす老後を期待しているのもあっさり振り切り、
他の土地へ行くという鮮やかな切り返しが小気味良い。
「パーフェクト・リタイヤ」藤堂志津子 文春文庫
満足度★★★☆☆
パーフェクト・リタイヤ (文春文庫) | |
藤堂 志津子 | |
文藝春秋 |
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藤堂志津子さんの、オーバー40の女たちの生きざまを描く短篇集。
どれも人生の半ばを過ぎた女性たちが登場します。
結婚していたり、そうではなかったり、まちまちですが、
共通点は、彼女らが自分のこれまでの生き方を後悔していないこと。
自分の生き方を少しずつ積み重ねながら今日に至ったことを、
彼女らはしっかり自覚して、肯定しているのです。
結婚していてさえも、夫に倚りかからない。
こうした女性たちがきっと「お一人さまの老後」を豊かに過ごすのだろうな・・・と、
ちょっぴり頼もしい気がします。
「バッド・ボーイ」
長年の母の介護を終えたひとり暮らしの由未子。
犬の散歩の途中、足を痛めて困り果てているところを一人の青年に助けられます。
彼、花樹は快活で親しげ。
犬の散歩のバイトを引き受けてくれたので、
由未子は彼にカレーを食べさせたり、クッキーを焼いたり。
しかし、実は花樹にはある下心があり・・・。
予想される結末ですが、でもはっとさせられるのは由未子の気持ちです。
彼女は騙されたと知って悲嘆にくれたり、彼を恨んだりはしない。
仕方ないか・・・と彼女は思う。
ここに来てまで相手によく思われたいからではなく、
あえて言うなら、卑しい人間にはなりたくないという由美子のささやかな美意識というか、
つっぱりや意地に近いものから。
一人で生きていこうとするものの矜持というのでしょうか、
はじめからそういうものを持っている人なのです。由未子は。
苦い話なのですが、後味は悪くない。
表題作「パーフェクト・リタイヤ」
60歳の定年を間近に控えた布沙子。
会社の何度かの吸収合併の際のリストラをくぐり抜けて、今日に至っています。
途中リストラに合わなかったのは、
ひたすら地味に目立たないようにしてきたおかげ、と思っています。
そんな布沙子は、退職後に一つの計画を持っています。
なんと、バーを経営すること。
40年独身で地味なOLを続けてきた彼女の、女として最後の楽しみ。
それは、これまでの人生を後悔しているというのではありません。
こうして過ごしてきたからこそ、
ある程度の資金もできたし、ここから新たな出発ができるということなのでしょう。
周りの人には想像もつかない転身です。
むろん、そのことは職場の人には内緒。
・・・なんだかそういうのもいいなあと思えてきます。
長年の愛人が、密かに彼女と共に過ごす老後を期待しているのもあっさり振り切り、
他の土地へ行くという鮮やかな切り返しが小気味良い。
「パーフェクト・リタイヤ」藤堂志津子 文春文庫
満足度★★★☆☆
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