映画と本の『たんぽぽ館』

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正体

2024年12月02日 | 映画(さ行)

逃亡を続ける真の目的

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本作は私、WOWOWのドラマを見て、原作も読んでいるので、
とてもなじみ深い作品です。
でもやっぱり、横浜流星版も見てみたくて・・・。

 

一家3人を殺害した凶悪犯で、死刑判決を受けている鏑木慶一(横浜流星)が脱走します。

鏑木は様々な場所で潜伏生活を送り、
様々な人と知り合い、交流を持っていくのですが、
やがて警察の手が迫り間一髪の逃走を繰り返します。

最初の逮捕時から鏑木に向き合っている刑事・又貫(山田孝之)は、
鏑木がそれぞれの場所で出会った人々を取り調べますが・・・。
やがて、彼が必死に逃亡を繰り返す真の目的が明らかになっていきます。

内容を知っているので、いまさら驚きはない・・・と思っていたのですが、
意外にも(?)感動させられてしまいました。

潜伏生活、できるだけめだたないようにしていたいはずの鏑木ですが、
つい人の良さがでてしまい、余計なお世話までしてしまう・・・。
そう、どう見ても彼が殺人犯であるわけがないと、私たちも納得していきます。
逃走先のエピソードは本当はもっと多くて、
その全貌を知りたい方はぜひ原作の方を読んでください。
でも、原作のラストは映画とはちょっと違いますね。
映画の方が好きです!

鏑木が事件で誤認逮捕されたのは17歳のとき。
本作の冒頭では21歳になっています。
そんな彼が終盤でこんな風に言う。

「逃亡生活の中で、初めてお酒を飲んで、友達ができて、好きな人ができて・・・」

通常ならば、青春を謳歌しているはずの年代。
逃亡生活という過酷な状況にありながら、
ごくごくささやかな人らしい幸せを手にできたことを喜んでいるのです。
ちなみに彼は親がいなくて、施設で育ったのですね。

あまりにも幸薄いこれまでの人生が思いやられて、実に切ない。
そして、こんなささやかな体験すらも、
その機会を失わせてしまう「冤罪」というものの恐ろしさ。
あってはならないことです。

WOWOWドラマの亀梨和也さんももちろんよかったのですが、
本作の横浜流星さんも文句なしによかったです。

原作はこちら→「正体」染井為人

 

<シネマフロンティアにて>

「正体」

2024年/日本/120分

監督:藤井道人

原作:染井為人

出演:横浜流星、吉岡里帆、森本慎太郎、山田杏奈、田中哲司、松重豊、山田孝之

冤罪の残酷さ★★★★☆

満足度★★★★.5



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