映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

TITANE チタン

2023年04月30日 | 映画(た行)

怪作!

* * * * * * * * * * * *

幼少時、交通事故で頭蓋骨にチタンプレートを埋め込まれたアレクシア。
それ以来若干精神に変調を来しています。
車への執着が人一倍。
そして人への愛情は持てない。
そんな時に彼女の身の上にある「事件」が。

そしてアレクシアは警察に追われるようになり、
行き場をなくし、消防士ヴィンセントと出会います。
彼は10年以上前に息子が行方不明となり、
いまだに彼の帰りを待ちながら孤独に暮らしています。
そして次第に老いていく自分の身に恐怖を感じている。
そんなところへ息子になりすましたアレクシアが訪れ、
2人は妙な共同生活を送り始めます。

周囲の人は、どうも本当の息子ではないようだ・・・?
と疑いを持つのですが、ヴィンセントは願望が妄執となり、
ひたすらアレクシアを息子として守ろうとします。
しかしやがて、アレクシアにはどうしても「男」とは思えない変調が・・・。

さてさて、一体どういう物語なのか、と戸惑う所ではありますが・・・。

頭蓋骨にチタンプレートを埋め込まれたことで
「人間性」を失ってしまったかに思えるアレクシア。
もともと彼女は父に愛されていなかったようですが、
このことがあってからは、さらに疎まれるようになっていきます。

人に愛されないから愛し方も知らない。
人が命を失うことも、機械が壊れることと同じように捉えているのかも知れない。
ただし、それが犯罪であることは認識している。

そんな彼女がたどり着いたのは、いなくなってしまった息子に囚われてしまっている初老の男。
彼は始めアレクシアを本当に息子だと思ったのでしょうけれど、
次第に「違う」ことに気づいていったようではあるのです。
けれど、自分でも気づかないフリをして、ひたすら「息子」に愛を注ぐ。

こうなるともう、彼にとってはアレクシアは男でも女でもどうでもいい。
自分の性の対象ともならない。

なんと、こんな不可思議で奇怪な作品ながら「無償の愛」へとたどり着くわけで、
唖然とされてしまいます。

しかも、アレクシアはつまり人の「男」なしに妊娠したということで、
聖母マリアをも連想させるという・・・。

強烈な印象を残す作品。

<Amazon prime videoにて>

「TITANE チタン」

2021年/フランス・ベルギー/108分

監督:ジュリア・デュクルノー

出演:バンサン=ランドン、アガト・ルセル、ガランス・マルルエール、ライ・サラメ

奇々怪々度★★★★★

満足度★★★.5

 



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