本当の自分の名前が知りたい
* * * * * * * * * * * *
少年・マルクは反抗期まっただ中。
アルコール依存の母も、その男も、学校も、何もかもが気に入りません。
そんなあるとき、母に死んだと聞かされていた「姉」から電話がかかってきます。
姉は生きていて、そう遠くないところに住んでいると知ったマルクは
姉に会ってみたいと思います。
マルクは義父が隠していたピストルを持ち出し、
薬局で強盗をして、旅の資金を作ります。
ところがその直後、顔見知りの刑事ジェラールと出くわし、
図らずも彼に銃を突きつけて、姉の住む町に向かうことに。
姉・ナタリーは始め弟と会うことも拒んでいたのですが、
やがて弟と向き合い、刑事に弟の罪を軽くするよう頼み始めます。
そして、少年と少年に付き添う姉、そして刑事のおかしな3人連れに・・・。
決してコメディではありません。
それぞれのこの先のことを思うと暗澹とせざるを得ないのですが、
それにしてもジェラールが、つい少年やその姉の情にほだされ
気持ちが緩んだところをだまされたりして、
自分で自分を呪うような出来事が繰り返されるのには、つい、笑ってしまいます。
結局お人好しなんですね。
マルクは今、実の父親ではなく母の再婚相手の姓を名乗っているのです。
でもそれは何か違うと思う。
母は実の父の名前も教えてくれないので、なんだかしっくりこない。
つまり自らのアイデンティティの問題なんですね。
自分が自分自身で在ろうとするときに、その寄る辺がない。
そこで、父と一緒に家を出ていた姉に会って、
やっと本来の自分の名前を知るのです。
そして、実は彼にはもう一人、里子に出されている妹もいます。
マルクは思う。
いつか姉と妹と自分、3人で暮したい、と。
もはや親は、子供が自分自身であろうとすることを阻害する者という認識なのでしょう。
3人連れのロードムービー。
印象深い作品です。
ところで見終わってから解説を読んで気がついたのですが、
本作、1990年の作品。
見ている間そんなに古いとは思っていなかった。
けどそういえば誰もケータイもスマホも持っていなくて、
公衆電話から電話をかけていたな。
どんな時代でも人の心のありようは変わりません。
<WOWOW視聴にて>
「ピストルと少年」
1990年/フランス/100分
監督・脚本:ジャック・ドワイヨン
出演:リシャール・アンコニナ、ジェラール・トマサン、クロチルド・クロ
少年の無軌道度★★★★☆
ロードムービー度★★★★☆
満足度★★★★☆
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます