映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「探偵は教室にいない」川澄浩平

2021年10月28日 | 本(ミステリ)

自由で、甘いものに目がない、ナイスな探偵

 

 

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わたし、海砂真史(うみすなまふみ)には、ちょっと変わった幼馴染みがいる。
幼稚園の頃から妙に大人びていて頭の切れる子供だった彼とは、
別々の小学校にはいって以来、長いこと会っていなかった。
変わった子だと思っていたけど、中学生になってからは、
どういう理由からか学校にもあまり行っていないらしい。
しかし、ある日わたしの許に届いた差出人不明のラブレターをめぐって、
わたしと彼――鳥飼歩(とりかいあゆむ)は、九年ぶりに再会を果たす。
日々のなかで出会うささやかな謎を通して、
少年少女が新たな扉を開く瞬間を切り取った四つの物語。
第二十八回鮎川哲也賞受賞作。

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川澄浩平さんは、北海道出身の作家さん。
漫画原作者から小説へと歩みを勧めてきた方です。

本巻は日常のナゾの連作短編。
中学生、海砂真史が語り手で、探偵役となるのはその幼なじみの鳥飼歩。
彼は頭脳明晰ながら非常に独創的で、簡単に言えば変人でもある。
なぜか学校にもほとんど行っていない。

真史は背高のっぽのバスケ部員。
同じバスケ部の親しくしている友人3人と自分自身の抱える問題を
それぞれ解きほぐしていく4篇という構成がステキです。

そして何より、彼らが住んでいるのは札幌で、
私にとっても実に生活圏である地名やその描写満載なので、
勝手に親しみを覚えてしまいました。

 

最後の一篇は、真史が父親と衝突したことで家出をして、
思わぬアクシデントが起きてしまうというストーリー。
その大筋はよいのです。
でも真史さんの性格を見ると、かなりその両親も寛大で理解ある人たちであろうと推察される。
それなのにその父親の吐く言葉があまりにも類型的な、
権威をカサに着たオヤジ風なのがちょっと違和感でした。
真史を家出させるための親子げんかという仕掛けがわざと過ぎる・・・。

とはいえ、この歩クンの甘いもの好きと変人ぶり、
そして探偵ぶりは大いに気に入りましたので、
続編もぜひ読もうと思います。
「不登校」をネチネチと、いじめが元でとかなんとか
書いていないところがカラッとしていて気に入っています。
まあ彼の場合は、いじめではないと思いますが。

「探偵は教室にいない」川澄浩平 創元推理文庫

満足度★★★★☆

 



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