映画と本の『たんぽぽ館』

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ベン・イズ・バック

2019年11月29日 | 映画(は行)

薬物依存によるもう一つの危険性

 

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クリスマスイブの朝、薬物依存症の治療施設で暮らす19歳ベン(ルーカス・ヘッジズ)が
突然家に帰ってきます。


母ホリー(ジュリア・ロバーツ)は久々の再会に喜びますが、
妹アイビーと継父ニールはベンが何か問題を起こすのでは、と不安を抱きます。
しかしとりあえず、ベンが一日だけ家で過ごすことを納得した一家。
ところがその夜、一家が教会から帰宅すると、家の中が荒らされ、愛犬がいなくなっています。
昔の仲間の仕業と察したベンは家を飛び出していきますが・・・。

 

いったん薬物を使用し始めると、それを断つことがいかに難しいか、
と言う主題の話はこれまでにも多くあったと思います。
本作ではその上、薬物使用中の人間関係のもつれもまた
後々までついて回るということを表しています。

 

未成年のベンが薬物を入手するためのお金をどうするのか。
もちろん親からのお小遣いなどで足りるわけがありません。
自然同類の仲間もできるでしょうし、盗みを働いたり、
薬物の売買の末端を担ったりするようにまでなっていきます。
借金もできます。
地元を離れ、治療施設に入ることで薬物とともにそんな仲間からも遠ざかっていられるのですが、
一度地元へ帰れば、否応なく元の生活がそのままの形で待ち構えている・・・。

 

そこには仲間同士、一人だけ元に戻ることを許さないという意識もありそうです。
一度はまり込んだら蟻地獄のように、もう這い上がることはできないのか・・・。

 

ここでは、母ホリーのほとんど盲目的ともいえる息子への思いが胸を打ちます。
そもそもベンが薬物依存になったのは、ベンの興味本位とか家庭不和のためとかではなく、
医師の「依存性はない」という判断でベンの治療として薬物が用いられたことがきっかけなのでした。
なんとも理不尽です。
母親としては悔やむにも悔やめない。
見守るしかないという切なさが伝わるのです。
(ホリーはこの医師を未だに殺してやりたいくらい憎んでいるのですが。)
ベンが治療施設に入っていたというのも、今回が初めてではなかったようです。
幾度も入ったり、同じことを繰り返していたのですね。
ホリーにとって心配なのは今、ベンが薬物をやめられないことよりも、
過剰摂取による死なのです。

 

薬物依存の真実。
生命を脅かすものではありますが、
日本においては、社会的生命をも脅かします。
わかってはいるはずなのですが、どうして手を出してしまうのでしょう・・・。
いいことなんか一つもありません。

 

ベン・イズ・バック [DVD]
ジュリア・ロバーツ,ルーカス・ヘッジズ,キャスリン・ニュートン,コートニー・B・ヴァンス
Happinet

J:COMオンデマンドにて>

「ベン・イズ・バック」

2018年アメリカ/103

監督・脚本:ピーター・ヘッジズ

出演:ジュリア・ロバーツ、ルーカス・ヘッジズ、キャスリン・ニュートン、コートニー・B・バンス

 

薬物の危険性★★★★★

満足度★★★★☆



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