映画と本の『たんぽぽ館』

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「余寒の雪」 宇江佐真理 

2008年12月19日 | 本(その他)
余寒の雪 (文春文庫)
宇江佐 真理
文藝春秋

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時代小説は、以前まで全く守備範囲外だったのですが、
ひょんなことから、この宇江佐真理さんの本を読んでみて、
すごく気に入ってしまったのです。
こちらは推理小説ではないのですが、
この著者の作品には捕物帳もありまして、
しかしなぜか私はまだそちらは読んでいないという・・・。
まあ、守備範囲外なら、外の楽しみを求めたわけですが、
そのうちやはり読んでみましょう・・・。
また、著者は函館在住でして、同じ北海道、
地元びいきで、ますますファンになってしまいました。

一般的にはマイナーな松前藩のストーリーが時々出てくるのも、地元ならでは。
時々、こちらの地元紙である北海道新聞にエッセイが載ります。
さて、この本は結構古いものですが、
・・・単行本の出版が2000年。
時代小説は、多少年数を経てもも古くならないのがいいですね。
例えばリアルタイムが舞台のミステリなら、
10年前のミステリはケータイも普及していないといった有様で、
たちまち古びてしまいますから・・・。

さて、この本は7つの短篇が入っていますが、
どれも納得の行く情緒深い物語です。
江戸時代・・・この規制だらけの封建社会。
特に女性は生きにくいのです。
でも、そんな中でも精一杯自分のあるがままを生きようとする、
そんな姿に心打たれます。


表題となっている「余寒の雪」。 
この作品は、男髷を結い、女剣士として身を立てようとしている知佐が主人公。
あるとき彼女は江戸見物と称して、
江戸のある屋敷に連れて行かれたのですが、
これは実は両親の策略で、そこの家に嫁がせようとしたもの。
相手は先の妻を病でなくした町方役人。
子持ち。
結婚なんて考えもしていなくて、子どもも苦手な知佐は、当然拒否。
しかし、当分その屋敷に世話になることになる。
そこで生活するうちに、しだいに知佐の心境が変化していくわけです。
知佐自身、まだ子どもっぽさを残していたのですが、
次第に大人の女へと成長してゆく。
この彼女を温かく見守る俵四郎も、なかなかのものだと思うのですが・・・。
それこそ、大人の余裕ですね。
ほのぼのと、かすかなロマンをもただよわせ、乙女心を掻き立てる結末。
やっぱり、この方の作品は好きだなあ・・・。

満足度★★★★☆



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