ひたすら自分の絵を極める
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浮世絵師葛飾北斎の知られざる生涯を描きます。
そもそも、その人生の歩みは詳しいことがほとんど分かっていない北斎。
だからこそ、想像の余地がたっぷりあるということで。
食うこともままならない貧乏絵師、勝川春朗(柳楽優弥)。
後の葛飾北斎です。
写実を極めようとする彼は、確かに技術的には確かなものがあります。
自分の腕だけを信じる彼は、師匠のもとを飛び出して一匹狼。
しかし、当時の大手の版元、蔦屋重三郎(阿部寛)は言う。
なんのために絵師になったのか?と。
蔦屋が見出した歌麿(玉木宏)は、女性の絵を描かせれば随一で、
なんとも色香が漂う。
若手で一躍売れっ子となった写楽は、
誰にもまねのできない独創性で人々の度肝を抜く。
自分にしか描けない絵とは・・・?
悩み落ち込む北斎がついに開眼するとき・・・。
本作はこの青年期の北斎を柳楽優弥さんが演じ、
後半、老年期を田中泯さんが演じています。
老年期、彼の絵はしっかりと彼独自のものとなり円熟しています。
妻は先に亡くなり、娘が彼の身の回りの世話をしている。
この、お栄さんが主役の物語もありましたね。
北斎はある日、卒中で倒れ、手が不随となってしまいます。
しかしまだ足下もおぼつかないうちに旅に出る。
そして旅から戻ってから書き始めたのが富嶽三十八景。
いやはや、すごいですね。
思うにこの旅が彼にとっては絶好のリハビリになったようで・・・。
このとき71歳。
なくなったのは90歳か・・・。
当時としては破格の長生きですね。
そして本作、北斎の青年期~老年期を通して、
時代背景として、幕府の庶民の娯楽への弾圧が描かれています。
質素を旨とする幕府が、派手なもの、享楽的なものを禁じたのですね。
そうした弾圧にも負けず、「自由」に芸術を極めようとする情熱、力。
これこそが今にも通じる心意気でございます。
世界をも魅了した、大波の向こうに浮かぶ富士山の絵。
やっぱりいいなあ・・・。
「HOKUSAI」
2020年/日本/129分
監督:橋本一
脚本:河原れん
出演:柳楽優弥、田中泯、阿部寛、永山瑛太、玉木宏
芸術を極める度★★★★☆
満足度★★★.5
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