優しい顔をしたサイコパス
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大学に入学はしたものの、自他共に認める三流大学。
やる気も起こらず、鬱屈した日々を送る雅也(岡田健史)。
そんな彼の元に、世間を震撼させた連続殺人事件の犯人・榛村(阿部サダヲ)からの手紙が届きます。
24件の殺人容疑ですでに死刑判決を受けている榛村ですが、
犯行当時、雅也の地元でパン屋を営んでいて、中学生だった雅也も良く店を訪れていたのです。
「話したいことがあるので会いに来て欲しい」との願いに、
怪訝に思いながらも雅也は面会に出向きます。
榛村は言う。
自分の罪は認めるけれど、最後の事件だけは冤罪。
犯人が他にいることを証明して欲しい、と。
雅也は納得いかないまでも、榛村の起こした事件について調べ始めます。
何しろ二十数人を殺して死刑も確定しているのなら、
たった一件くらい冤罪でも別にかまわないのでは?等と思ったりしますが、
もしそうであれば、真犯人が野放しになっているということでもあり、
やはりそのままにしてはおけません。
それにしても、この榛村の持つ闇、あまりにも恐すぎます。
彼が狙うのは17~18歳、つまり高校生の男女。
性別は問いません。
真面目で聡明、パン屋のカフェでノートを広げて勉強するような子。
そこで榛村は、さりげなく獲物に近づき会話して信頼を得ます。
たっぷりと時間をかけて。
そしてある日、彼の燻製小屋に拉致し拷問にかけて、苦しみ泣き叫ぶ姿を見て楽しむ・・・。
うう・・・。
コワイ、コワイ。
ところが、榛村の言う最後の事件では20代OLが被害者で、
拉致された様子もなく死体が置き去りにされていた。
というあたりで、確かにこれは別人が犯人なのでは?ということにも信憑性はある訳です。
雅也が調べるうちに、榛村の周囲の人たちはみな榛村を好きになっていくことに気がつきます。
確かに、かつての雅也自身もそうでした。
そしてまた、かつて雅也の母が榛村と近しい関係にあったということが発覚!!
え? それって??
なかなか衝撃的な展開にドギマギさせられます。
とんでもないサイコパスである上に、周到に人の心を操ろうとするモンスター。
自分を信頼させた後に、いたぶるという残酷な手口。
凡庸で人の良さそうなその顔の下に隠された底知れない闇。
阿部サダヲさん、恐るべし。
死刑囚と面会者はしっかりと隔てられていて、実際にふれあうことはできないのですが、
画面上では榛村がいつのまにか雅也にすり寄り、絡みついてきます。
圧倒的に不気味な演出に、感服。
岡田健史さんもアイドル色を消して、押さえ込んだ演技が良かったです。
そしてこれまた怪しい人物を演じた岩田剛典さんが、
知らなければ最後まで岩田剛典さんだと気づかなかったかも知れない
全く通常と違うイメージ。
すごいです。
冒頭にあった、男が何か花びらのようなものを水路に散らしていたシーン。
最後に分かりましたが、それは花びらではなくて・・・。
ひ~・・・。
<サツゲキにて>
「死刑にいたる病」
2022年/日本/128分
監督:白石和彌
原作:櫛木理宇
出演:阿部サダヲ、岡田健史、岩田剛典、宮崎優、音尾琢磨、中山美穂
戦慄度★★★★★
心の闇度★★★★★
満足度★★★★.5(恐すぎ)
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