映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ビザンチウム

2014年06月25日 | 映画(は行)
ヴァンパイアも楽じゃない



* * * * * * * * * *

ヴァンパイアもの・・・。
皆さんお好きですね-。
かつてホラーだったこのジャンルは、今や仄暗いロマンものとして定着。
私は萩尾元望都「ポーの一族」からのヴァンパイアファンではありますが
近頃はさすがに食傷気味で、映画も劇場公開では見なくなってきました。
本作は、「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」のニール・ジョーダン監督が
20年ぶりに再び手がけたヴァンパイアもの。



16歳で時が止まっている少女エレノア(シアーシャ・ローナン)が
たった一人の肉親クララ(ジェマ・アータートン)とともに
見知らぬ街から街へ移り住みながら200年の時を生きています。


海辺のさびれた保養地のゲストハウス「ビザンチウム」を訪れた二人。
エレノアは難病の青年フランク(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)と出会い、心ひかれていきます。



この二人の女性の性格が対照的。

クララは娼婦として身を立てており、
男を操る手練手管に長けています。
口から出る言葉は嘘ばかり。

一方エレノアは孤児院で無菌培養で育ち、
清廉な心を持ち続けている。
老人や余命幾ばくもない病人の許しを得た上、その血を得て生きる・・・
という慎み深いヴァンパイア。

ところがこの二人を追う何者かの影が・・・。
それはヴァンパイアの“血の掟”に背くこの二人を抹殺しようとする者達だった・・・。



永遠の生を得ているはずのヴァンパイアも実は大変生きにくいのです。
新鮮な血を得なければ生きられないというのは、
実は永遠に食べ続けなければ生きられない私達とさして変わりません。
その上掟に縛られ、人間界にあっては一つ処にとどまって暮らすこともできない。
そうまでして、生き続けていかなければならないのは、
もはや苦痛でしかないでしょうに・・・。
とまあ、そういう苦悩を抱えつつ、
孤独に生きるからこそのロマンなのでありましょう。



「ビザンチウム」は東ローマ帝国首都コンスタンティノポリスの古名、
現在のトルコ、イスタンブールであります。
詩人ウィリアム・バトラー・イエイツ「ビザンティウムへの船出」から
インスピレーションを得た題名とのこと。
作中に、十字軍遠征の時にビザンチウムで得た“剣”が登場しますが、
それこそがヴァンパイアの息の根を止める剣だったりします。
この海辺の町の沈んだ情景が素敵でした。

ビザンチウム [DVD]
シアーシャ・ローナン,ジェマ・アータートン,サム・ライリー,ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ
ポニーキャニオン


2012年/イギリス・アイルランド/118分
監督:ニール・ジョーダン
原作:モイラ・バフィーニ
出演:ジェマ・アータートン、シアーシャ・ローナン、サム・ライリー、ジョニー・リー・ミラー、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ

「ビザンチウム」
シックな風合い★★★★☆
ロマン・哀愁★★★☆☆
満足度★★★☆☆


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