不在の父と、いつもそばにいた叔父
* * * * * * * * * * * *
ピューリッツァー賞受賞ジャーナリストで作家のJ・R・モーリンガーが
2005年に発表した同名自叙伝の映画化です。
ニューヨーク州ロングアイランド。
J・R少年が母と共に実家に戻ってくるところから本作は始まります。
アメリカでは家を出た子供が実家に戻ってくるというのは、
日本よりも「負け犬」感が強いですね。
母はJ・Rが生まれてまもなく夫は家を出て行ってしまい、
シングルマザーとして頑張っていたのですが、
ついに家賃も滞納するようになり、実家に戻るしかなかった。
彼女はそのことをとても恥じているし、
両親(J・Rの祖父母)に愛されている実感もなかったので、
実家に戻ることは本当にどうしようもない最後の決断だったわけです。
でもその実家には、叔父や叔母、いとこたちもいてとても賑やか。
悪くはないけれど、ちょっとうるさすぎる・・・。
そんな中で、J・Rは、叔父・チャーリー(ベン・アフレック)の経営するバーで
多くの時を過ごしました。
叔父チャーリーと彼の友人でもあるバーの常連客の話を聞き、
バーにある多くの本を読んで、彼は少年~青年期を過ごします。
さて、J・R(タイ・シェリダン)は聡明で、奨学金を受けて大学の進学も果たします。
そして少年の頃に夢見た小説家になりたいと思う。
こんな彼の胸中にいつもあったのは彼の父親のこと。
父は声だけは良かったのでラジオのDJの仕事をしていて、
ほとんど会ったこともないのに、声だけは聴くことができました。
そして彼の名前は、その父の名を受け次いで「ジュニア」。
でも、実は父は、母を捨てたことでも分かるようにアル中のろくでなし・・・。
そのこともJ・Rは知っている。
だからこそ、父をどう捉えていいのか分からない。
そしてそれはどこか彼自身のアイデンティティをぐらつかせている・・・。
まあ本作は、そんな彼の自立への道のりなのです。
結局最後のある「事件」で、J・Rは一つの気づきを得るのです。
気づきというか、腑に落ちるという感じでしょうか。
父のことなんか関係ない。
自分はあの叔父のテンダー・バーで育てられたのだ、と。
このことは多分、誰か他の人から言われてもダメだったと思うのです。
ふと何気ない生活の中で、自分でストンと腑に落ちること。
そういうことってあると思うのですよね。
彼が納得するにはそういうことが必要だったのだと思います。
自分を考えるときに、実は「血」はあまり重要ではない。
J・Rが夢の中で、少年の自分に
「小説家になれていないじゃないか、くず男!」
と、小突かれるシーンがステキでした。
この家、祖父は大学を出ていて、叔父も頭は良かったけれどお金がなくて進学は断念。
でも叔父は独学で多くの本を読んで、いろいろなことを知っています。
母も本当は大学へ行きたかったけれど、やはりお金がなくて無理でした。
そしてJ・Rが奨学金を得てやっと大学に進むことができる。
貧しさの連鎖は今も変わらないですね・・・。
そこの所はもっといい制度があればいいのにと思います。
<Amazon prime videoにて>
「僕を育ててくれたテンダー・バー」
2021年/アメリカ/106分
監督:ジョージ・クルーニー
原作:J・R・モーリンガー
出演:ベン・アフレック、タイ・シェリダン、リリー・レーブ、クリストファー・ロイド
少年の成長度★★★★☆
時代性★★★★☆
満足度★★★★☆
アップしたらまたお知らせに来ます~。
とても良質な映画でしたね。
たんぽぽさんの感想とてもいいですね~。
私のは一言だけで大雑把です。。。💦💦
https://blog.goo.ne.jp/mysketchbook/e/eb0e744ff39a22cfacf6d3330c26c883
私は、「叔父さん」が出てくる話が、なぜか好きなのです。
少年と叔父さんは大抵相性がいい。
叔父さんは、親ほど少年に対して責任感がないので、
教育的でないことまで教えてくれたりしますもんね。
だから本作も興味津々で見ました。