孤島で生きるときに必要な物
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トム・ハンクスのほとんど一人舞台、印象深い作品です。
速さを誇る宅配便“フェデックス”のシステム・エンジニアであるチャック(トム・ハンクス)。
一秒も無駄にしないことを信条としています。
恋人ケリー(ヘレン・ハント)とのデートも秒刻み。
そんなチャックが飛行機事故で、無人島に流れ着きます。
文明から切り離された孤島でたった一人。
しかしなんとか4年を生き延びて・・・。
孤島での暮らしがリアルに描写されていきます。
聞こえるのは波の音ばかり。
音楽もありません。
ここで彼は原始の人がたどった道をなぞります。
まずは、椰子の実をどうやって割るか。
石でたたいても割れない。
が、そのうちに石が割れて、鋭い切片ができます。
これがナイフの代わりにならないかとチャックは気づく。
うむ、これぞ石器ですね。
そして必要なのは火。
これにはチャックも苦労します。
以前何かで見た火を作る方法、細い棒を両手の平でこすって回転させ摩擦熱を起こす。
しかし相当頑張ってもこれでは火はおこりませんでした。
幾度も試行錯誤。
彼は空気が大事であることに気づきます。
そうして初めて炎が上がったとき彼は狂喜乱舞します。
マッチ一つあればあんなに簡単に手に入る火だけれども・・・。
そしてもう一つ。
実はこれがいちばん大事。
もしかするとそれは宗教のような物であるかもしれません。
島には事故機に積み込まれていた荷物もいくつか流れ着いていました。
チャックはお客様の荷物だから、あけずにおいたのですが、
背に腹は代えられず、ついに荷をほどいてみる。
その中にあったのが、フィギュアスケートとバレーボール。
スケートの刃は唯一の金属として、主にナイフ代わりにずいぶん役に立ちました。
そしてチャックはバレーボールに顔の絵を描いて、
ウィルソンと名付け、彼に話しかけることにしたのです。
それは友人のようでもあり、彼自身のようでもある。
この地で生きるために、彼には彼自身を俯瞰する存在が必要だったのではないでしょうか。
それは神とは違うかもしれないけれど、彼の「思い」を受け止めるただ一つの存在。
何か原始的な宗教の芽生えのようなものを感じました。
最後に筏で海へ乗り出したチャックは、
もちろんウィルソンも連れて行くのですが、ついには波にさらわれ、いなくなってしまいます。
でもまるでそれと入れ違いになるように、
チャックはようやく貨物船に発見されて救われる。
何か象徴的な物を感じます。
ところで、チャックは荷物を一つだけ開けずに取っておきました。
それは、いつかきっと生還して、この荷物を正しい受取人に送り届ける、
そういう決意というか希望のようなものだったのですね。
さて、文明社会に戻ったチャック。
しかし4年を経て、彼の恋人はすでに他の男と結婚をして子どももいた・・・。
夢見たはずの心地のよいベッドで、ただ一人孤独の夜を迎えるチャック。
ここのところが凄いと思うのです。
めでたし、めでたしではなく、孤島にいても都会のビル街にいても、
変わらぬ孤独・・・。
良い物語ですね。
これも以前見てお気に入りの作品でしたが、何度見てもよいと思います。
<Amazon prime videoにて>
「キャスト・アウェイ」
2000年/アメリカ/144分
監督:ロバート・ゼメキス
出演:トム・ハンクス、ヘレン・ハント、ニック・サーシー
孤独度★★★★★
満足度★★★★.5
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