コロナ禍の中で
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パンデミックを前にあらゆるものが停滞し、動きを止めた世界。
17歳でイタリアに渡り、キューバ、ブラジル、アメリカと、
世界を渡り歩いてきた漫画家・ヤマザキマリさんにとって、
これほど長い期間、家に閉じこもって自分や社会と向き合った経験はありませんでした。
でもそこで深く深く考えた結果、
「今たちどまることが、実は私たちには必要だったのかもしれない」
という想いにたどり着いています。
この先世界は、日本はどう変わる?
黒死病からルネサンスが開花したように、また新しい何かが生まれるのか?
混とんとする毎日のなか、それでも力強く生きていくために必要なものとは?
自分の頭で考え、自分の足でボーダーを超えて。
さあ、あなただけの人生を進め!
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ヤマザキマリさんの、コロナ禍の世界を見据えたエッセイ。
ヤマザキマリさんのご主人はイタリア人で、イタリア在住。
マリさんは、仕事の関係で日本・イタリア間を頻繁に行き来していたようなのですが、
このコロナ禍で、ずっと日本にとどまり、
ご主人とは長く別居生活になってしまったそうです。
でも毎日の会話は欠かさない。
ネットを通せば映像付きでも無料。
便利な世の中になっていてよかったですよね。
まあそんなわけで、本巻、多くは日本とイタリアの比較文化論のようになっています。
中国に次いでイタリアで、新型コロナウイルスのパンデミックとなった理由。
それはニュースなどでも言われていたとおり
近年の北イタリアと中国との深い結びつきもありますが、
イタリアの人々の、「論議好き」なところが大きい、と。
家族などが頻繁に集まっては食事しながら大声で自己主張・・・という、この習慣ですね。
今日本ではいちばんダメな例として真っ先にあげられることです・・・。
瞬く間に感染拡大したのも頷けます。
そしてイタリアの人々は決して中国を恨んだり目の敵にしたりはしないそう。
というのも、長い歴史の中でこの国の人々は常に外の国との軋轢の中を生きてきた。
良くも悪くも、外国との交わりの中で今日がある。
そうした認識があるから、今回のこともなりゆきで仕方がない、
中国が悪いわけではない・・・という感じのようです。
本巻ラストでは、「パンデミックと日本の事情」という章で、
かなり辛口の日本の現状批判も。
政府が提示する情報が不透明であること。
SNS上に見る凶暴な言葉の刃。
異質な人を排除する脆弱性。
戒律としての世間体。
そうそう、例えばコロナ感染が拡大している都会から地方への移動。
それが、「感染の危険性が大きい」ことよりも、
「世間の批判が大きい」ことの方が先に立っている
というおかしな状況が、今も根強い・・・。
これぞ、世間体の戒律。
色々、うなずいてしまうことの多い本です。
「たちどまって考える」ヤマザキマリ 中公新書ラクレ
満足度★★★.5
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