映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ステージ・マザー

2021年03月06日 | 映画(さ行)

女性の生きがい

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テキサスの田舎町に住む主婦メイベリン(ジャッキー・ウィーバー)。
長い間疎遠だった息子リッキーの訃報を受け、
リッキーの暮らしていたサンフランシスコへ向かいます。 
そしてリッキーのゲイのパートナーであるネイサン(エイドリアン・グレニアー)から、
息子とネイサンが共同経営でゲイバーを経営していたことを知らされます。
バーはリッキー名義となっていたため、経営権はメイベリンにあるというのです。
とはいえ、そのバーも経営難で破綻寸前。
メイベリンは、息子の意志を継いでゲイバー再建のために立ち上がりますが・・・。

本作は、LGBTの差別問題というよりも、女性の自立を描くものだと思います。

メイベリンは、これまでひたすら夫に従い、
ゲイについての偏見も、夫の考えに同調していただけだったのですね。
息子の葬儀へは、夫は参列を拒否。
メイベリンはいくら何でも息子の葬儀くらいには出たいと思い、
また、息子が生きていた街や人々を見たいと思ったのでしょう。
葬儀場の教会では、ドラァグクイーンのショーまがいになっていて、
あわてて逃げ出してしまうメイベリンでしたが。

ネイサンは、リッキーの母親がゲイバーを奪いにきたと思い、
彼女に冷たく接するのですが、
仲を取り持ったのが、リッキーの友人であるシエナ(ルーシー・リュー)。
彼女はシングルマザー。
だから息子を思う母親の気持ちもよくわかったのでしょう。
そうしていきなりゲイバーの経営に乗り出したメイベリン。
専業主婦のドシロウトです。
でも彼女は教会の聖歌隊の指揮を務めていただけあって、音楽には造詣が深いのです。
そこで、ここでのショーは口パクではなく、ナマの歌声でいこう。
そして、地元のゲイのためではなく、
サンフランシスコへくる観光客を対象としてはどうか、と思うのです。

また彼女は、店の経営のことだけではなく、息子と同じ年頃の従業員たち一人一人の相談に乗り、
実に母親的お節介をやいて、問題解決を図っていくのです。

テキサスに一人残された夫は、帰れ帰れと矢の催促・・・。
「愛しているから」などといって、
本当は自分で家事をするのが面倒くさいだけ、と私は思う。

いつしかメイベリンは仕事にやりがいを見出し、
また周囲からも頼りにされるようになっていく。
そしてちょっぴり恋の出会いも・・・?

いろいろなことにチャレンジして力を発揮できる可能性を持ちながら、
結婚でそれを埋もれさせてしまうことがどんなに多いか。
そのことを私は深く思うのです。

息子の死という残念なきっかけではありましたが、
人生、どこからでもやり直しはできるのですね!

 

<サツゲキにて>

2020年/カナダ/93分

監督:トム・フィッツジェラルド

出演:ジャッキー・ウィーバー、ルーシー・リュー、エイドリアン・グレニアー、
   マイア・テイラー、アリスター・マクドナルド

 

転身度★★★★☆

満足度★★★★☆

 

 



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