映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

マシンガン・プリーチャー

2012年09月02日 | 映画(ま行)
銃を構えて神を説けるか



                     * * * * * * * * * 

アフリカ紛争地で子供たちを救う活動を続けているアメリカ人、サム・チルダース。
今作はこの方の実話を元にしています。


麻薬の密売人で前科もあるサムは、
ある事件をきっかけに改心し、熱心な教会の信者となりました。
ある時、ボランティアで内紛の続くスーダンを訪れますが、
そこで子供たちの悲惨な現状を目の当たりにします。
そこで彼は私財を投げうち、スーダンに教会と孤児院を建設。
しかし、そこはLRAの格好の標的となり、実際に襲撃を受けるのですが、
サムは自身がマシンガンを持ち、敵に立ち向かいます。
いつしか周りの人々が彼をこう呼ぶ。
マシンガン・プリーチャー(銃を持つ牧師)と。



実際には彼は牧師ではないのですが、教会をたて、時には神の教えを説くこともあって、
牧師と呼ばれているのです。
それにしても、仮にも牧師と呼ばれる人が
マシンガンを手に人を殺すこともあるというのは、なかなか衝撃的です。
でも、確かに作品を見る限りはそれもやむないことと思えてきます。
LRA=神の抵抗軍というのは、
住民を大量虐殺し、
子どもを誘拐し性的虐待を加え、少年兵として使い捨ての道具にするという悪名高い集団。
彼らから自身と子供たちを守るためには武装しかない。
そういう厳しい現実があるのです。
しかし、今作はサムをそのままヒーローとして祭り上げているわけでもないのです。
サムはスーダンの子供たちを守りたい一心で、
アメリカの妻や娘、友人までをも傷つけてしまうこともある。
ほとんど狂的までの彼の一途な思いに、今作は現地の子どもにこう語らせています。

「心を憎しみでいっぱいにしてはダメ。
それでは相手に負けたことになってしまう。」



サム自身、先に教会でこんな話をするシーンがあるのです。

「私はある時、銃を持った悪い奴らに追われて、森へ逃げ込んだ。
そして、カバンから銃を取り出そうと思ったら銃が入っていなかった。
おフクロが、銃の代わりに聖書を入れておいたのだ。
がっかりした私は聖書を持ったまま覚悟を決めて木の根元に座り込んだ。
すると、なんと悪い奴らは俺の目の前を通りすぎていってしまった。
彼らは私には気づかなかったのだ。」

神は私達をいつも見守っているという逸話です。
でも、こういったサムが、
結局今は、聖書ではなくて銃を持ってしまっている。
本当はどうすることが正しいのか。
答えはありません。
今も、内乱は続き、サム・チルダースの孤児院は続いている。
それが事実です。




マシンガン・プリーチャー [DVD]
ジェラルド・バトラー、ミシェル・モナハン、マイケル・シャノン
エイベックス・エンタテインメント


2011年/アメリカ/129分
監督:マーク・フォースター
出演:ジェラルド・バトラー、ミシェル・モナハン、マイケル・シャノン、キャシー・ベイカー、スレイマン・スイ・サバネ


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