映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「これでよろしくて?」 川上弘美

2012年12月20日 | 本(その他)
家族って

これでよろしくて? (中公文庫)
川上 弘美
中央公論新社


            * * * * * * * * *


菜月は結婚まもない専業主婦。
ある日突然、「これでよろしくて?同好会」という会に誘われ、
わけも分からいうちに参加してしまいました。
おかしな宗教?と危ぶみながら参加したその会は、
年齢もまちまちの女性ばかりのおしゃべりの会。
今時、女子会は珍しくありませんが、
この会はひたすら各自の思うところを述べ合う会。
例えば、
「社会人の息子の部屋を訪ねてみると、息子はおらず、息子の友人とその彼女が寝ていた。
その時どうする?」
などと突拍子もない議題があって、それぞれの考えを述べていくのです。
次第に家族のこと、夫婦のこと、微妙な機微が照らしだされます。
だからといって、どうということもありません。

「前向きになる」とか、
「思いのたけをぶちまける」とか
「癒される」とか、
そういう生産的なことのためにこの会は催されているわけではない・・・
と主催の土井婦人は行っています。
ひとつの思いにとらわれず、色々な方向から物事を考えてみようということなのかもしれません。
それはなにかの役に立つと言うよりも、
自らの偏った思い込みで深みにはまらないようにするための
次善の策なのかも知れません。


それこれするうちに、
菜月の家に、夫の妹が転がり込み、
次にはその妹と入れ替わりに義母が転がり込んで
ずっと住み着いてしまったりします。
別に嫌いではないけれど、気を使うし、
早く帰って欲しいけれど、決して口に出しては言えません。
夫と妹、夫と義母、
紛れもなく家族であるのに、自分だけ見の置きどころがないような・・・。
夫と私はまだ「家族」ではないと感じてしまう菜月。


人との関わりの奥深さを実感するストーリーでした。


このとりとめのない「同好会」にはちょっと興味はありますが、
残念ながら、菜月の結婚をめぐるくるくるした考えの変遷が、
私にはあまりピンときませんでした。
専業主婦でもないし、親との同居もなし
・・・というような実態のためかも知れません。
一番実感したのは2DKの家で夫の母と一日中顔を合わせていなければならないという
その大変さ・・・というところでしたが・・・。

「これでよろしくて?」 川上弘美 中公文庫
満足度★★★☆☆


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