映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「星に降る雪/修道院」池澤夏樹

2017年05月18日 | 本(その他)
男はロマンチスト、女は現実的

星に降る雪/修道院
池澤 夏樹
角川書店


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男は雪山に暮らし、地下の天文台から星を見ている。
死んだ親友の恋人は訊ねる、あなたは何を待っているの? 
岐阜、クレタ。
二つの土地、「向こう側」に憑かれた二人の男。
生と死のはざま、超越体験を巡る二つの物語。

* * * * * * * * * *

池澤夏樹さんの中編「星に降る雪」と「修道院」の2作が収められています。


「星に降る雪」
田村は、山中の地下にあるニュートリノの観測施設に勤務。
以前雪山で雪崩に遭遇し、その時自分はかろうじて助かったけれども
親友が亡くなってしまったのです。
そして亡くなった親友の恋人が訪ねてきて問う。

「あなたはどういう体験をしたの?」

田村はその時に、あるメッセージを受け取ったのだという。
白い雪の闇の中から、あるいは宇宙の深遠から、
無数のメッセージが心のなかに充満し、どっと降ってきて、
彼の心を押し倒し、押し流し、上からのしかかってきて埋める。
それは地上的には意味がなく、向こう側でしか意味を持たない・・・。

そんな彼だけの、絶対的な「理解」ゆえに、
田村は人里離れた山の中の施設をあえて仕事場に選んでいるのです。
彼女は結局それを理解できない。
いや、私もよくわからないですけど・・・。



「修道院」は、ギリシャが舞台のぜんぜん違うストーリーですが、
でも結局この2編、男性はロマンチストで、女性はとても現実的。
そういう物語です。
そうそう、どちらも私がこれまで読んできた池澤作品にはあまり見られなかった
男女の性愛のシーンがあります。
が、何やら生臭いシーンでさえも、静謐なイメージが残る。
作家の技量ですなあ・・・。

「星に降る雪/修道院」池澤夏樹 角川書店
満足度★★★.5


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