映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

キャッツ

2020年12月13日 | 映画(か行)

猫に寄せすぎ・・・

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言わずと知れたミュージカルの金字塔、キャッツ。
私、劇団四季のキャッツが大好きで、札幌に四季劇場があったときに何度も見ました。

それで、本作も劇場で見ようかと思ってはいたのですが、
CGであまりにも人を猫に近寄せすぎていて気色悪い・・・
と、不評だったようなのです。
それでなんとなく見そびれていましたが、
この度、音楽を楽しむだけでもいいか・・・と思って拝見。

満月の夜、年に一度開かれるジェリクル舞踏会に参加するため、
ロンドンの街の片隅に個性豊かな猫たちが集まってきます。

そしてその日は、新しい人生(ニャン生)を生きることを許される
たった一匹の猫が選ばれる特別の日でもあります。
生まれ変わるために天上に昇るジェリクルキャッツとなるのは、一体誰?

さてさて、見始めてやはり、その猫猫しさにちょっとギクッとします。
四つん這いのスタイルになられたりすると、
「人面猫」みたいでかなりキモチワルイ。
でもまあ、見てるうちに少しずつなれてきます・・・。
あ、でもネズミやゴキブリまでもが人間のミニサイズで出てくるのは
さすがに気味悪かったかなあ・・・。
まあ、おなじみの歌を楽しめただけでも良しとしますか。
でも結局、本作は舞台でこそ楽しめるものだなあ・・・という認識は新たにしました。

猫を擬人化したというよりも、猫のように私たちも自由で個性豊かであれ、
という物語であるように思うので、
ムリに猫そっくりにしなくてもいいのではないかなあ。

それと以前から思ってはいたのですが、
生まれ変わるために天上へ上っていくとはすなわち「死」ですよね。
死をこんなにも寿ぐというのが、本作の最も深遠なるところ・・・という気がします。

そんな中で、イギリスの誇る名優ジュディ・デンチとイアン・マッケラン。
この人たちが出てくるとさすがにオーラがあるといいますか、
猫まみれの姿でありながらしっかりした存在感。
歌は他のプロ級の歌い手たちと比べたら、ささやくような感じなのに、胸に響く。
これぞ超ベテランの味というものか。
すばらしかった・・・。

 

Amazonプライムビデオにて

「キャッツ」

2019年/イギリス・アメリカ/109分

監督:トム・クーパー

原作:T.S.エリオット、アンドリュー・ロイド=ウェーバー

出演:フランチェスカ・ヘイワード、ロビー・フェアチャイルド、ジェニファー・ハドソン、
   ジュディ・デンチ、ローリー・デビッドソン、イアン・マッケラン、イドリス・エルバ

 

音楽・ダンス★★★★★

猫の造形度★★☆☆☆

満足度★★★☆☆

 


スタートアップ・ガールズ

2020年12月12日 | 映画(さ行)

今時の女性の生き方

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大学生でITと医療で起業を目指す天才肌の自由人、小松光(上白石萌音)。
そして、大企業に勤務し、起業家への投資の部門にいる安定志向のOL、南堀希(山崎紘菜)。
性格が正反対のこの二人が、新プロジェクトのビジネスパートナーとなり、
ぶつかり合いながら成長していく物語。

えーと、スタートアップというのはつまり「起業」の意味です。
光がここではあまりにも破天荒で、常識に欠けているのですが、
ひらめきだけは素晴らしい。
上白石萌音ちゃんは、こんな役もこなすのか、とやや意外な感じを受けました。
でもまあ、そこが面白い。
けれどここに出てきたアプリのアイデアって、それほど画期的かな?とは思いましたが・・・。

希の方は、いかにも堅実なのです。
堅実すぎて、光やユーザーの思いに近寄れないところも。
だからまあ、割れ鍋に綴じ蓋とでも言いましょうか、
この二人を足して二で割るといい感じになる。
だけれどそれでは凡庸でつまらないですけどね。

こうしたストーリーにラブストーリーが絡むのが定番ではありますが、
なんと本作ではそれはありません。
希とちょっといい感じになるのが水木(山本耕史)なのですが、
特に進展はしませんし、光の方は何もナシ。

うん、今時の女性を描く作品としてはこの方がよほどいさぎよくて
現実的のような気がします。
今や女性の「勝ち負け」は恋とか結婚ではないということか。

<WOWOW視聴にて>

「スタートアップ・ガールズ」

2019年/日本/93分

監督:池田千尋

脚本:高橋泉

出演:上白石萌音、山崎紘菜、渡辺真起子、山本耕史

 

女性の自立度★★★★☆

満足度★★★☆☆


エンツォ レーサーになりたかった犬とある家族の物語

2020年12月11日 | 映画(あ行)

いつも家族と共にあった、犬

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日本では劇場未公開作品。

 

カーレーサーのデニー・スウィフト(マイロ・ビンティミリア)が、ある日思いついて子犬を買ってきます。
エンツォと名付けられたその犬はすくすく育って、デニーの良い相棒に。
デニーがレースのテレビ番組を見せたり、実際にレース場に連れて行ったりするので、
エンツォもカーレースが大好きなのです。

そしてデニーはイブ(アマンダ・セイフライド)という女性と知り合い、結婚。
その仲の良さにちょっぴりデニーを奪われたようで、嫉妬するエンツォではありますが・・・。
やがて2人の間に女児誕生。
その子・ゾーイを自分が守ると心に誓うエンツォ。
3人と1匹の幸せな日が続きましたが、あるとき、イブが体調を崩し・・・。

 

 

年を取ってすっかり弱ってしまったエンツォが、
昔自分がこの家に来た頃からのことを回想する形で、物語は語られて行きます。
エンツォのモノローグの声はケビン・コスナー。
わーい、渋い!

犬の短い一生と、この家にとっての晴れの日から土砂降りの日までが
見事に重なり合って、なんだか時の流れが愛おしく感じられるようでした。
デニーはレーサーといっても、それだけでは食べられないほとんどが下積みの生活。
いつかF1レーサーになることが夢で、
イブがいつもデニーの後押しをしてくれていたのです。
でも、そのイブが亡くなってしまう・・・。
喜びも悲しみも、家族とともにある犬が、思いを共有するのですね。
老いて行くエンツォが、たまらなく愛おしい・・・。

そして、やむなく2日間ほど家に置き去りになってしまったエンツォが、
これまでしたこともない「悪さ」をしてしまったところのシーンが秀逸でした。
犬好きの方なら必見。

 

<WOWOW視聴にて>

「エンツォ レーサーになりたかった犬とある家族の物語」

2019年/アメリカ/109分

監督:サイモン・カーティス

原作:ガース・スタイン

出演:マイロ・ビンティミリア、アマンダ・セイフライド、ゲイリー・コール、キャシー・ベイカー、(声)ケビン・コスナー

 

家族愛度★★★★☆

犬の一生度★★★★☆

満足度★★★★☆

 


「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」丸山正樹

2020年12月10日 | 本(ミステリ)

ろう者の現実を浮かび上がらせながら

 

 

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仕事と結婚に失敗した中年男・荒井尚人。
今の恋人にも半ば心を閉ざしているが、やがて唯一つの技能を活かして手話通訳士となる。
彼は両親がろう者、兄もろう者という家庭で育ち、
ただ一人の聴者(ろう者の両親を持つ聴者の子供を"コーダ"という)として
家族の「通訳者」であり続けてきたのだ。
ろう者の法廷通訳を務めていたら若いボランティア女性が接近してきた。
現在と過去、二つの事件の謎が交錯を始め…。
マイノリティの静かな叫びが胸を打つ。
衝撃のラスト!

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私には初めての作家さん。
本作の主人公は、手話通訳士というまれな題材のミステリです。

彼の両親と兄がろう者ということで、彼の生活の中に元々手話がありました。
でも一家の中でただ1人の聴者ということの異端者的な存在感が、
彼の心の底の重りとなっています。

仕事にも結婚にも失敗し、心を閉ざしていた彼のもとに、
手話通訳の仕事をしないかという誘いが来ます。
そして彼は、ろう者というマイノリティ故に起こった
過去と現在を結ぶ事件に関わることになりますが・・・。

 

以前ほんの少し手話の講習を受けたことがありますが、
本作によると手話にも2種類あって、
一つは「日本語対応手話」というもので
日本語に手の動きを一つ一つ当てはめていくもの。
私が講習を受けたのもそれですし、テレビなどで手話通訳で目にするのもこれです。

 

そしてもう一つが、「日本手話」。
ろう者が昔から使っているもので、
日本語の文法とは全く異なった独自の言語体系を持つとのこと。
そのため、生まれたときから使っているろう者でなければ
その習得はかなり困難だそうです。
でも、それをもっぱら使って育ったろう者であれば
「日本語対応手話」の方がよほどわかりにくく、疲れるものである・・・と。
なるほど、知らないことは多々あるものですね。

このように、私たちが全然わかっていないろう者に寄り添う本作、
大変興味深く読みました。

でも、実のところこの主人公荒井が、正義感に突っ走るあまり、
恋人や関係者の感情を置き去りにしてしまうあたりが、私には好感度低いのです・・・。
でも本作は著者の小説デビュー作だそうですし、
シリーズの続きもでているようなので、そちらも読んでみようかと思います。

「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」丸山正樹 文春文庫

満足度★★★☆☆


「ポーの一族 秘密の花園1」萩尾望都 

2020年12月08日 | コミックス

意外に簡単に人を狩るエドガー

 

 

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『ポーの一族 春の夢』『ポーの一族 ユニコーン』に続く第3弾。
19世紀末、旅の途中のエドガーとアラン。
体調を崩したアランのためにアーサー・クエントン卿の館に滞在することになり、
エドガーは…?

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「ポーの一族」新シリーズの第3弾です。

前作で、「現在」に復活したエドガーが描かれたのですが、
残念ながらその続きの話とはならず、本作の舞台は1888年。
アランがその後どうなるのか、という話はまだまだお預けのようです。

 

さて、本作に登場するのは、アーサー・トーマス・クエントン卿。
「ポーの一族」ファンならば覚えがあると思います。

本作は何と旧シリーズにあった「ランプトンは語る」の前日譚ということになります。
トーマス・ローレンスが描いた「ランプトンの肖像」という絵画がありまして、
赤い服をきた美少年の絵です。
その「ランプトンの肖像」の模写があって、しかしなぜかその顔がエドガーの顔。
クエントン卿が描いたというその絵のことが問題となった「ランプトンは語る」のストーリー。
本作では、まさにその絵が描かれたときのことが詳しく語られています。

 

旅の途中エドガーとアランは道に迷い、クエントン卿の屋敷にたどり着き、
そこでしばらく世話になることになります。
そんな時に出会った人々、
そして、正体不明のエドガーに妙に惹かれてしまうクエントン卿の物語。

ここで興味深いのは、アランが眠り続けてしまうということ。
バンパネラの一族にはどうやらそうした時期があるらしいのです。
そして、エドガーは自分の生命(生命といえるのか?)を維持するために、
意外と頻繁に人間を狩ります・・・。
それはいずれ死が近い老人であったり、
やむなく秘密を維持するためだったりしますが・・・。

つまりバンパネラというのは、やはり「鬼」なのだろうなあ・・・。
炭治郎に見つからないようにせねば・・・。

 

とにかく、本話については次巻に続くということになっていまして、
このペースだとまた1年以上後ということになりそうですね・・・。
気長に待つことにしましょう。
その頃にはコロナ禍も去っているといいのですが・・・。

「ポーの一族 秘密の花園1」萩尾望都 小学館フラワーコミックススペシャル

満足度★★★★☆


デスノート Light up the NEW world

2020年12月07日 | 映画(た行)

前作のインパクトにはかなわない

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デスノート、前作から10年後に作られた、前作から10年後を舞台とした物語。

死神が6冊のデスノートをばらまきます。
かつて夜神総一郎が立ち上げたデスノート対策本部が再始動。
キラ事件に精通した三島(東出昌大)を始めとした特別チームのメンバーに、
Lの正当な後継者である私立探偵竜崎(池松壮亮)が加わります。
そして、死んだはずのキラからのメッセージが届く。
それはキラの後継と名乗る男・紫苑(菅田将暉)の仕業だった・・・。

この事態を収めるには6冊すべてのノートを集めなければなりません。
竜崎・三島側と紫苑側のノート争奪戦が繰り広げられます。

ノートが増え、死神の独特なキャラもまた幅を広げ、そして豪華な俳優陣・・・。
ということで、言うことなしのはずなのだけれど・・・。
どうも正直言ってパンチがたりません。
やはり前作の藤原竜也さんによる自信満々のキラと、
松山ケンイチさんによる変人Lの存在感があまりにも大きくて、
今、ここまでの豪華俳優の布陣を見ても、どうも小粒感が否めないのです。
本作、作らなくても良かったのでは・・・と思わざるを得ない。

私、ここに登場する竜崎は、あの、
スピンオフ版に出てきた少年が後継者として登場するべきだと思うのです。
知能指数かなり良さそうでしたし。
第一、あのときデスノート2冊は竜崎が焼却したはずなのです。
そこがつながっていない。
それから、竜崎の精子が残されていて・・・などという話は興ざめも甚だしい。
Lは、そんなことするキャラじゃありません!!

ザンネンデシタ・・・

 

<WOWOW視聴にて>

「デスノート Light up the NEW world」

2016年/日本/135分

監督:佐藤信介

原作:大場つぐみ、小畑健

出演:東出昌大、池松壮亮、菅田将暉、中村獅童(声)、戸田恵梨香

 

満足度★★.5

 


L  change the WorLd

2020年12月06日 | 映画(あ行)

デスノート、決着までの間の大事件

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デスノート前2作に続く第3弾。
でも、これは続きというよりもスピンオフというべきでしょう。

キラ事件解決のためにある決断をしたL(松山ケンイチ)に
残された時間は23日間。
そんな彼に、人類の存亡を欠けた新たな事件が舞い込むのです。
Lが主役の物語なので、確かに「続き」にはできないですもんね・・・。
自分の運命を知りつつも、最後まで使命を果たそうとするLがイカしてます。

彼が挑むのは、ウイルスを用いた人類殲滅テロ。
地球の環境破壊を憂う一団が、人類が増えすぎたためにこうなったのだと、
人類のほとんどを滅亡させてしまおうという恐ろしい計画を立てたのでした・・・。

素材がウイルスということで、今見るのにはちょっと微妙。
あっという間に周囲に感染して、その場で症状が出て死んでいくという、
超劇ウイルスです。
これはマスクや密を避けるくらいでは防げなさそう・・・。
それで、本作では対策としてワクチンではなく抗ウイルス薬を開発するわけなのです。
予防ではなくて、ウイルスそのものを撃退する薬。
こんなのがコロナウイルスにもあるといいのですが・・・。

しかし作中にこんな説明がありました。
兵器としてウイルスを使おうとするものは、
必ず同時にワクチンも開発するものだ。
そうでなければ、自分も死んでしまうから・・・と。

なるほど、ということはやはり今回の新型コロナウイルスはやはり
「兵器」というわけではなかったのか。
・・・いや、開発途上で誤って漏れ出てしまったとすれば・・・、なんてね。

寄り道してしまいました。
ということで、本筋のストーリーはどうということもないモノだったのですが、
変人めいたLをたっぷり堪能できたのでヨシという感じです。

相変わらず猫背で常に甘いものを食べていて、変な動作をする。
アクションも子どもをあやすのも苦手。
うーん、結局どうしてLがこんなふうなのか、
その生い立ちとか前身とかが語られるのかと思えば、
全く語られませんでした・・・。
残念。
でも、人並み以上の正義心と、まともな大人の精神は持っているので、
そう悲惨な生い立ちではないのかも。
「甘いものが好きなのは、脳を使うには甘いものが必要だから」
などと自分では言っていましたが。

なんと、彼の極秘行動のために、どピンクのクレープ販売仕様のワゴン車が登場。
あらら・・、「メロンパン号」登場10年以上前に、
こんな「クレープ号」があったなんて・・・!!

そして福田麻由子さんが、12・3歳くらいのかわいらしい少女!!
これもいい。
私的には好きな作品です。

この題名、誤りじゃなくて、あえてWorLdと、エルが大文字なんです・・・。

<WOWOW視聴にて>

「L  change the WorLd」

2008年/日本/129分

監督:中田秀夫

出演:松山ケンイチ、工藤夕貴、福田麻由子、南原清隆、平泉成、高嶋政伸

スピンオフ度★★★★★

満足度★★★★☆


アイネクライネナハトムジーク

2020年12月05日 | 映画(あ行)

ドロボウも殺人もないけど

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伊坂幸太郎さん原作で、読んだこともありまして、
でも例によって内容はほとんど忘れていたので十分楽しめました。
というより本作、もちろん三浦春馬さん追悼の意をこめて見たわけです。

仙台駅前で街頭アンケートを集めていた佐藤(三浦春馬)。
ふとしたきっかけでアンケートに応えてくれた紗季(多部未華子)と付き合うようになります。
その10年後、共に暮らしていた2人でしたが、
佐藤は意を決して紗季にプロポーズしますが・・・。

という2人のストーリーが本筋ではありますが、
本作は2人と関連した周囲の人々の群像劇でもあります。

美人の同級生由美と結婚し、幸せな家庭を築いている、佐藤の親友・一真(矢本悠馬)

ある日突然、妻子に逃げられた男・藤間(原田泰造)

声でしか知らない男に恋をする美容師・美奈子(貫地谷しほり)

等々。

それがまたそれぞれ、
たった一度ボクシングヘビー級世界タイトルを取ったボクサー、
ウィンストン小野との関連も見えてくるあたり、
泥棒も殺人もなくても、
やはり伊坂幸太郎さんらしい伏線の張り巡らされたストーリーで、
とても興味深く見ました。

出会いとは。
恋とは。
結婚とは。
ごく普通の生活を営む人々から、ほろりと転げ落ちる本音がいい。

いつもちゃらんぽらんで、なんでこいつがこんな美人で聡明な人と
結婚できたのかと思わせる一真。
でもその裏話には、感動させられます。

そんな風に、実は誰にでも「奇跡」と呼べるような瞬間があるのかもしれません。

顔中でくしゃっと笑う、三浦春馬さんの笑顔が胸に痛い・・・。

<WOWOW視聴にて>

「アイネクライネナハトムジーク」

2019年/日本/119分

監督:今泉力哉

原作:伊坂幸太郎

出演:三浦春馬、多部未華子、矢本悠馬、森絵梨佳、恒松祐理、貫地谷しほり、原田泰造


「ほの暗い永久から出でて 生と死を巡る対話」上橋菜穂子 津田篤太郎

2020年12月04日 | 本(解説)

自分を生み出したものと、滅ぼそうとするものは同一

 

 

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人はなんのために生まれ、生きて、死ぬのか。
『精霊の守り人』で知られる作家が最愛の母の死を看取る日々の中で、
聖路加国際病院の気鋭の医師と交わした往復書簡。
豊かな知性と感性に彩られた二人の対話は驚きに満ち、
深く静謐な世界へと導かれていく。
未曾有のパンデミックに向き合う思い、未来への希望を綴った新章を追加。

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上橋菜穂子さんと、聖路加国際病院の医師・津田篤太郎さんの
往復書簡という形で語られる「いのち」についての話です。

上橋菜穂子さんがお母様の死を看取る日々を過ごし、
その時に津田先生にお世話になったそう。
本巻では、双方の体験を踏まえ、命のことをいろいろな角度から考察しています。

 

そんな中で、
「自分を生み出した者と、自分を滅ぼそうとする者は同一不可分」
という話があります。

例えば、私たちを取り巻く自然は豊かで、多くの豊穣を生み出し、
私たちを生かしています。
しかしその力が極端に強まれば、地震や洪水となって私たちに襲いかかり、
滅ぼそうとします。

また、私たちの知る神話エディプスの物語や、
中国の阿闍世の逸話にもあるそうなのですが、
親が子を殺そうとするのです。
まさに、自分を生み出した者が自分を滅ぼそうとする。
矛盾に満ちていますが、生と死は実は不可分、同一のもの
・・・と言うのはどこか安らいだ感じがします。

 

上橋菜穂子さんの守り人シリーズに描かれる、
意識の世界“サグ”と無意識の世界“ナユグ”は、
全く別のもののようでいて、実は双方つながっていて同一のものである、
という世界観にも重なっているのです。

深いなあ・・・と、感服。

 

それから、一般的に生命は次の世代を生み出すためにあって、
その個体の生殖行為が終わればその命も終わる、
と、ほとんどそういう風にできている。

人間、特に女性は閉経後明らかに老化が進み、
死の方向に勝手に体が変化していきます。
まさに、それが自然の摂理というべきもの。
だけれど私たちは「種の継続」ではなく「個」として、
もっと長く生きたいと思う。
それが私たちが生きる上でのそもそもの矛盾なのだろう、と。
私たちはなぜ「生きる」のか、
それが永遠の命題なのも当然なのかもしれません。

 

そして本巻、「未曾有のパンデミックにどう向き合うか」
という新章が追加されています。
このコロナ禍のこと。
100年前のスペイン風邪大流行を人々がどのように乗り越えたか、
が参考になるかもしれないと津田先生はおっしゃっています。
漢方も有効なのでは?と。

いずれにしてもお医者さまでない身としては、
今はじっと身を潜めて、危険が去るのを待つしかなさそうです・・・。

 

「ほの暗い永久から出でて 生と死を巡る対話」上橋菜穂子 津田篤太郎 文春文庫

満足度★★★★☆

 

 


デスノート the Last name

2020年12月02日 | 映画(た行)

デスノートの本領

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前作、DEATH NOTEの続きです。
元々この2作は前後編として、連続で上映されたのですね。
それで本作を見てなるほど、と思いました。
前作はまだほんの導入部というか、ほとんど状況説明でしかなかったようです。
本当に面白くなるのはここから。

前作でほんの少し顔を出していた、アイドル海砂(ミサ)(戸田恵梨香)が、
別のデスノートの持ち主となるのです。
以前から海砂は、「キラ」を英雄視していました。

自宅の監視に耐え、そしてまた恋人を失ったことから、
月(ライト)(藤原竜也)は、キラではないかとの容疑を晴らし、
L(松山ケンイチ)率いるキラの捜査チームに加わることになります。
そこへ、案外あっさりと海砂のキラの容疑が発覚し、捕らえられてきます。
拉致監禁された海砂を、月は、なんとか自分の正体をばらさずに救出しなければならない・・・。
一体、どうやって???

そこで生きてくるのが、何やら七面倒くさいこのデスノートの「しばり」なんですね。
デスノートの持ち主がノートの所有を放棄すると、
デスノートに関する記憶を失ってしまうという。
そこで、ライトは非常に危険に満ちた手段に打って出るのです。

まさに、目的のためなら手段を選ばないヤツ。
その非情さは、またここでも露呈します。

 

それにしても、L、前作でもいいところなかったし、
本作でも結局キラにはやられっぱなしだったじゃない・・・?
と思ったのですが、最後にまさかのどんでん返し。
なるほど~。
まあ、そうでなければヤミ落ちになってしまいます・・・。
ただの甘いものオタクじゃなかったのね、L。
そしてまた、自分の信念のためには命をも懸ける・・・。
カッコイイです。

 

というわけで、結構面白かった。

第二のデスノートの死神さんがステキでした! 
思うに死神は「悪魔」というわけではないのですね。
ノートを自分の思うがママに使おうとする人間の欲望の方が問題。
良いも悪いもなく、死ぬべき人を死なせることが彼らの仕事なのでしょう。
ノートを人に拾わせて使わせるのは、ちょっとした暇つぶしなのかもしれません・・・。

 

<WOWOW視聴にて>

「デスノートthe Last name」

2006年/日本/140分

監督:金子修介

原作:大場つぐみ、小畑健

出演:藤原竜也、松山ケンイチ、戸田恵梨香、片瀬那奈、鹿賀丈史

策略度★★★★★

満足度★★★★☆

 


DEATH NOTE デスノート

2020年12月01日 | 映画(た行)

正義を果たすノート?

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そういえばこれ、見たことがなかったなあ・・・と思い、
今さらながら見てみました。
でもシリーズ最新作は割と最近のものでもあります。

 

デスノート、それは「そのノートに名前を書かれたものは死ぬ」という代物です。
死神が落としたそのデスノートを、
エリート大学生・夜神月(やがみらいと)(藤原竜也)が拾います。
彼は、理想の世界を築くため、自らの手で世界中の犯罪者を裁き始めます。

彼は犯罪者を抹殺することで「正義」を行っていると満足感を憶えていましたが、
やがて、FBIの捜査の手が伸び、
保身のためにその捜査陣をも殺してしまいます。
そして、このノートの存在を嗅ぎつけた「L(松山ケンイチ)」と対決することに・・・。

 

 

初めのうち、夜神のデスノートの対象者は
法の目をくぐり抜けた残忍な「犯罪者」で、
正義のために彼はデスノートを使っていた。
そこまでならまだもしかしたら納得の範疇ではありますが、
次第に夜神はその障壁を取り払い、
単に自分を邪魔する者を抹殺するようになっていきます。
デスノートの本来の持ち主である「死神」は、CGで描かれているのですが、
その死神が思わずつぶやいてしまう、「おまえ、悪魔だな」。
リンゴ好きの死神リュークは、なんだかユーモラスで、私は好きです・・・。

 

この、邪悪な男・夜神(キラ)は、まさに藤原竜也さんが演じるにふさわしい。
よりによって、このキラの父が警視庁の警官で、
キラ事件担当チームのトップというのがなんとも、劇的ではあります。
そしてキラはさらに冷徹で残酷な面をのぞかせるようになる・・・。
誰にも止められない、どうにかして~!!

 

そしてまた、こちらの方がよほど怪しい気もする「L」が、キラのライバル。
ですが本作では、Lの方が負けっぱなしでしたね・・・。
次の活躍を楽しみにしましょう。
Lは甘いものが大好きなようで、いつでもお菓子を食べまくり。
松山ケンイチさん、この撮影で太ったか、胃の具合が悪くなったか、
どちらかなのでは?

 

ここではほんの少しだけ出ていた、戸田恵梨香さんがなんともかわいらしい!!

 

<WOWOW視聴にて>

DEATH NOTE デスノート

2006年/日本/126分

監督:金子修介

 

原作:大場ツグミ・小畑健

出演:藤原竜也、松山ケンイチ、瀬戸朝香、香椎由宇、戸田恵梨香

 

満足度★★★☆☆