清商(きよしょう)は静岡市立清水商業高等学校の愛称である。以前浦和レッズに在籍していた小野伸二選手の母校である。
9日、船橋市立船橋高等学校の優勝で幕を下ろした今年の高校サッカーであるが、今回出場していた高校サッカーの名門・強豪の清水商業高等学校が統合でなくなる、少なくとも現在の学科編成の清水商業高校でなくなるということだ。
・・・まったく知らなかった。
昨年夏、甲子園の出場校を調べた時(2011.08.03、「’11 夏の甲子園出場校分析」)、能代市立能代商業高等学校が統合対象になっていることを知り、かなりおどろいたことを思い出した。いろいろ調べてみると、高等学校の適正配置の問題も絡んだ、なかなか... 大変なことのようだ。埼玉県の県立高校の先生である僕にはそう思えた。
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静岡市立商業高等学校
1922年創立の商業学校を起源(組合立)とし、'24年清水市立になる。'48年学制改革により、清水市立商業高等学校に。その後、2003年4月1日に静岡市・清水市の合併に伴い、静岡市立清水商業高等学校に校名変更。今年創立90年である。
平成23年度の静岡県の資料によると、本年度同校は学級数が14である。(1学年4、2年・3年は各5だと思われる。)
ウェブサイトを見る限り、進学がかなり多い商業科単独校である。統合相手と統合のかたちを調べてみた。
統合相手
静岡県立庵原高等学校
庵原は「いはら」と読む。1980年開校の普通科・英語科併置校。創立30年ちょっとである。ただし、2011年度から英語科は募集停止。
クラス数が学校のサイトを見ても、発見できなかったので、Yahoo! JAPANの進学情報を調べてみた。各学年のクラス数は1年3、2年5、3年4と出ていた。この学校は12学級(4クラス×3)が本来の学級数である。
統合の形式は公文書を見ないとわからない。静岡県のウェブサイトを調べてみたところ、こんな記事があった。
静岡県教育委員会学校教育課 > 教育委員会学校教育課高校班・高校再編整備室トップページ
平成23年9月8日静岡市内の新構想高等学校校名募集
平成25年4月に、静岡市内に新しく、静岡地区新構想高等学校(仮称)と、清庵地区新構想高等学校(仮称)が開校します。
静岡地区新構想高校は、県立静岡南高校と静岡市立商業高校を再編し整備する、静岡県立の全日制総合学科の高校です。
清庵地区新構想高校は、県立庵原高校と静岡市立清水商業高校を再編し整備する、静岡市立の全日制普通科及び商業科の高校です。
静岡県教育委員会と静岡市教育委員会は、再編対象校の伝統や特色を生かして新たに開校するこの2校の校名を、皆様から募集します。
これを見ると、こういうことになる。番号は僕が便宜的につけたもの。
①旧静岡市内にある、旧静岡市立の高校と、静岡県立の高校を統合。
・・・旧静岡市立高校をひとつ減らす。
②旧清水市内にある、旧清水市立の高校と、静岡県立の高校を統合。
・・・県立高校をひとつ減らす。
静岡市のウェブサイト
教育総務課 > 静岡市内の公立高等学校の共同再編計画・共同具体構想
平成20年3月にまとめられた、静岡県・静岡県教育委員会と静岡市・静岡市教育委員会の文書が見つかった。
かなり長くなるが、引用させてもらう。全ページは無理なので、具体的に学校をどのように統合するかの部分である。数字などは便宜的に全角になおした部分もある。元資料は上記赤字部分を検索されたい。
以下引用
Ⅰ 清庵地区
静岡県立庵原高等学校及び静岡市立清水商業高等学校を再編整備して設置する新構想高等学校の概要は、次のとおりである。
1 学校づくりの基本的な方向
新構想高等学校は、両校の伝統や地域に果たしてきた役割を十分踏まえ、新しい時代に対応した教育を実現するため、次に示す内容を基本的な方向とし、今後、具体的な教育目標等を検討する。
〇高いこころざしを持ち、知・徳・体のバランスの取れた人材の育成
〇学科併置の特色を生かした教育の推進
〇国際理解教育の推進
〇将来の職業人を育成するビジネス教育の推進
〇地域に根ざした開かれた学校づくりの推進
2 設置者
静岡市とする。
3 開校予定年度等
平成25年度とする。ただし、平成24年度までに入学する生徒の募集は両校で行い、平成23年度・24年度に入学する生徒は、平成25年度から新構想高等学校の在校生とする。また、新構想高等学校の開校に向けた準備が円滑に行われるよう、平成23年度・24年度の移行期間における両校の教育内容の在り方等について、在校生の教育環境を十分考慮して検討する。
4 設置学科等
(1)基本的な方針
両校の現在の設置学科や、清庵地区の学科別の生徒受入れ割合の状況を踏まえ、異なる学科で学ぶ生徒が、互いに刺激を与えつつ成長できる学習環境となるよう、普通科、商業科、英語科を併置することを軸に検討する。また、複数学科を併置する特色を生かし、所属する学科の学習を中心に行いながら、学科の枠を越えて幅広い教科・科目が選択できる総合選択制を導入するなど、柔軟な教育課程の編成・実施等について検討する。
(2)設置学科の特色
ア 普通科
大学等への進学を前提とした教育課程を編成・実施するとともに、将来の職業人として求められる資質・能力を育成するため、商業科目を学ぶ機会を設けるなど、商業科を併置する特色を生かした教育課程の工夫を行う。
イ 商業科
会計、情報、マーケティングの3分野を踏まえ、時代の変化に適切に対応した実践的なビジネス教育を実施するとともに、普通科、英語科を併置する特色を生かし、大学等への進学にも十分対応できる教育課程の工夫を行う。
ウ 英語科
言語や異文化に関する科目を充実させ、大学等への進学を前提とした教育課程を編成・実施するとともに、将来の職業人として求められる資質・能力を育成するため、商業科目を学ぶ機会を設けるなど、商業科を併置する特色を生かした教育課程の工夫を行う。
(3)その他
英語科については、普通科の類型(コース)としての設置や、英語以外の外国語も学ぶことができる特色ある学科の在り方等を検討する。また、体育的・文化的活動の振興を図る観点等も視野に、その他の学科の設置等についても検討する。
5 学校規模
高等学校の適正規模や清庵地区の今後の中学校卒業者数の推移を踏まえ、1学年7~8学級とする。
6 設置場所及び施設整備
設置場所は、現清水商業高等学校の校地及び隣接する現清水文化センター敷地とし、学校施設は、全面改築を基本として整備する。
引用ここまで
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清庵(「せいあん」と読む)地区の新校は実質清水商業を母体とする。少なくとも事務引き継ぎ校は同校であるように見える。
4の(3)にある英語科の記述だが、平成23年度から、県立庵原高校は英語科の募集を停止しているのだがら、今年の4月も英語科の募集をしないものと思う。これを新校であらためて再スタートするのは、なかなか難しいだろう。英語類型もしくはコースの方が実際的だと思う。少なくとも埼玉県の過去20年近い経験からはそう思える。
6に施設設備のことが書いてある。平成23年度と同じならば、平成24年度清水商高は4クラス、庵原高は3クラスが新入生の入学定員である。平成25年度はこうなる。
3年生(清水商4、庵原高3)
2年生( 〃 )
1年生(新校新入生7クラスか8クラス)
21か22クラス。現在15学級規模の清水商業高校の施設設備だけでは足りないだろう。隣接するとある、「清水文化センター」は静岡市の施設。今年閉館する。これもあわせて敷地として、校舎を新築ではないが全面改築とするようだ。
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もう一つの学校も読んでみた。
以下引用
Ⅱ 静岡地区
静岡県立静岡南高等学校及び静岡市立商業高等学校を再編整備して設置する新構想高等学校の概要は、次のとおりである。
1 学校づくりの基本的な方向
新構想高等学校は、両校の伝統や地域に果たしてきた役割を十分踏まえ、新しい時代に対応した教育を実現するため、次に示す内容を基本的な方向とし、今後、具体的な教育目標等を検討する。
〇高いこころざしを持ち、知・徳・体のバランスの取れた人材の育成
〇多様な学習ニーズに対応した教育の推進
〇共生・共育の推進
〇地域の文化や伝統産業を生かした教育の推進
〇地域に根ざした開かれた学校づくりの推進
2 設置者
静岡県とする。
3 開校予定年度等
(ここは清庵地区の記述内容と同一)
4 設置学科等
(1)基本的な方針
静岡地区の学科別の生徒受入れ割合の状況を踏まえ、多様な進路選択に対応できる総合学科を設置する。また、静岡県立静岡北養護学校南の丘分校(高等部)を併置する。
(2)総合学科の系列
総合学科における選択科目群(系列)については、両校の現在の設置学科を踏まえ、文科系の普通科目、理科系の普通科目を中心に学ぶ系列や会計、情報、マーケティング、商業デザイン等の商業科目を中心に学ぶ系列を設置する。 また、多様な学習ニーズに対応するため、福祉、家庭の科目を中心に幅広く学ぶ系列や、例えば、雛具、漆器、塗下駄、和染等の地域の文化や伝統産業を学ぶ、特色ある系列の設置についても検討する。 なお、体験的、実践的な教科・科目を効果的に学び、将来を見据えた進路選択が可能となるよう、総合学科の原則履修科目である「産業社会と人間」の学習や進路ガイダンス等の充実を図る。
(3)共生・共育
静岡南高等学校で実施している共生・共育の成果を生かしつつ、学校行事や日常的な学校生活における交流等を一層推進する。また、静岡北養護学校南の丘分校(高等部)に在籍する生徒の社会的な自立を目指すため、高等学校の専門教育に係る施設・設備等を活用して職業教育の充実を図る。
(4)その他
設置する系列や共生・共育の実施内容については、今後引き続き検討する。
5 学校規模
高等学校の適正規模や静岡地区の今後の中学校卒業者数の推移を踏まえ、1学年6~7学級とする。また、静岡北養護学校南の丘分校(高等部)については、1学年2学級程度とする。
6 設置場所及び施設整備
設置場所は、現静岡市立商業高校の校地を軸に検討し、学校施設については、現校舎等の活用及び改築を基本に、併置する静岡北養護学校南の丘分校(高等部)の施設を含めて整備する。
開校に向けて
新構想高等学校の開校に向け、平成20年度から清庵地区及び静岡地区の地区ごとに、関係校の教職員を含めた検討組織を整え、更に具体的な検討を行っていく。
引用ここまで
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県立静岡南高は1983年創立、全日制普通科の学校。ウェブサイトを見たところ、2004年から『静岡県立静岡北養護学校南の丘分校を併置し、共生・共育を始める』との記述がある。市立商業高は1928年創立。当初は私学だったが、1953年9月に静岡市に経営移管。市立高校になっている。
両校は統合後、総合学科を有する単位制による全日制の学校になる。設置場所は、「現静岡市立商業高校の校地を軸に...」とあり、やや含みを持たせている。設置者は静岡県である。
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統合後は静岡市が設置者の学校は、清庵地区新校(清水区)と静岡市立高等学校(葵区)の2校になる。
推計人口(2011年12月1日)を調べてみると、静岡県が3,751,308人、県庁所在地である静岡市は714,322人である。
平成23年度、静岡県には県立高校が95校(2分校)ある。この他、静岡市3、浜松市1、沼津市1、富士市1に市立高校がある。
静岡市の推計人口(以下同じ)は、県全体の人口の19%である。そこに全県立高校95中の31校がある。これはおおよそ3分の1、32.6%である。更に県内の私立高校44校中13校もある。これは県内私学44校の29%である。これに静岡市立の3校を加えると(31+13+3)と47にもなる。なお、県土(一部境界未確定あり)全体に占める、静岡県の面積は18%である。
隣接市町村からの通学者(進学者)のこと、公立高校には通信制高校を含むとしても、県人口の19%、県土の18%の静岡市に、全高校数145の32%である47校がひしめき合っている。静岡市は政令指定都市である。それでも市立高校は2校しか維持しない。きびしいものである。
いろいろ考えさせられた。
さいたま市はどうなんだろう。勉強になりました。
参考としたサイト等
静岡県
静岡市
Yahoo! 学習情報
各学校公式サイト他