全英連参加者のブログ

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第180回国会における野田内閣総理大臣施政方針演説を読んで

2012-01-29 06:18:19 | 気になる 政治・政治家

 使命感でも惰性でもないが、国会の総理大臣演説は必ず「読む」ことに決めている。今回も総理官邸ウェブサイトに掲出された草稿を読んでみた。

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 演説は以下の5章立て。資料は総理官邸ウェブサイトに掲出された草稿である。実際の演説では、違っているかもしれない。

 1 はじめに
 2 三つの優先課題への取組
  (復興の槌音よ、鳴り響け)
  (原発事故と戦い抜き、福島再生を果たす)
  (日本経済の再生に挑む)
 3 政治・行政改革と社会保障・税一体改革の包括的な推進
  (政治・行政改革を断行する決意)
  (社会保障・税一体改革の意義)
  (改革の具体化に向けた協議の要請)
 4 アジア太平洋の世紀を拓く外交・安全保障政策
  (アジア太平洋の世紀と日本の役割)
  (近隣諸国との二国間関係の強化)
  (人類のより良き未来のために)
 5 むすびに

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 国際関係を考えると、どこの国が演説で出てくるかは重要な観点だ。まず国の名前から調べてみた。
 すべて「4」に出てくる。

 2国間、多国間関係を表す語
 アメリカ(日米同盟、合意)
 中国(日中両国の「戦略的互恵関係」
 韓国(日韓)
 オーストラリア(日豪交渉)
 北朝鮮(北朝鮮の動向、日朝関係、日朝平壌宣言)
 イラン(イランの核問題)
 スーダン(南スーダンでの国連平和維持活動)

 3カ国以上
 日中韓(日本・中国・韓国)
 米中だけでなく、韓国、ロシア、インド、オーストラリアなど

 地域
 1例を除いてすべて「4」で出てきた。
 アジアが一番多い。14回出てくる。次がアフリカで1回。地域を表す語として、ASEANが1回出てきた。
 アジアは協力関係や経済発展を述べる部分で多い。

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 カッコの中にある数字は、演説の第何章で使われたかを表している。(22)ならば、2章で2回という意味である。

 では、カタカナ語の分析に入る。
 使ってよさそうだと思う語

 イデオロギー(1)
 インフラ(44)
 エール(2)
 エネルギー(2222222)
 (省エネ国家を含む)
 (温室効果)ガス(2)
 ODA(4)
 カバー(3)
 (公共)サービス、(行政)サービス、(郵便局において三事業の)サービス(233)
 サイバー(攻撃)(4)
 (電力)システム、(子育て新)システム(23)
 (石油)ショック(2)
 ステップ(2)
 東京電力福島第一原発の事故。昨年末の「ステップ2」
 (世界の成長)センター(4)
 チャンス(44)
 (地域で対話を深めていくべき)テーマ(4)
 (長引く)デフレ(2)
 テロ(44)
 パーセント(3333)
 (環太平洋)パートナーシップ(協定)(4)
 プロジェクト(2)
 ページ(2)
 リーダーシップ(3)
 リスク(34)
 ルール(44)
 ワンストップ(2)
 この語は、以下の部分で出てくる。全部読めば意味がわかる。
 復興庁を二月上旬に立ち上げ、ワンストップで現地の要望をきめ細かにくみ取り、全体の司令塔となって、復興事業をこれまで以上に加速化していきます。
 「一カ所で...」でいいと思うのだが。

 まだ「日本語化」しているとは、言い切れないと感じる語
 イノベーション(を推進)(2)
 グローバル(な金融市場)(3)
 ゼロベース(2)
 「対前年比伸び率ゼロ」では?
 ビジョン(22)挑戦を促す明快なビジョン、国家ビジョン
 「将来像」では?
 フロンティア(2223)
 前後を読むと意味がとるのだが、なかなか定義の難しい語である。
 FTTAP(4)
 これは、評価できる。「アジア太平洋自由貿易圏、いわゆるFTAAP構想」とちゃんと言い換えている。

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 政治的立場で賛否があることはあたりまえだが、野田総理大臣の演説は上手いと思う。少なくとも日本語を使おうという意図は見える。カタカナ語もかなり意図的に削っている印象がある。もちろん演説草稿を書くのは(政治任用の)秘書官であり、中央官庁の中から選ばれている秘書官であるが、かなり自分の色が出ているようにも思える。ただ演説(発言)が巧みであると言うことは、「口だけ(言うだけ)」であるという評価・批判と紙一重である。レトリックに走りすぎるのは、危険である。今回の演説でも福田康夫、麻生太郎という二人の元総理の演説を引用するというかなり禁じ手を使っている。
 前回の演説を聴いて感じたことなのだが、野田総理大臣の施政方針演説には、あまり普通だと入ってこないような、エピソード、表現があるように思える。それが野田流なのだろうが、正直大丈夫かなと思う。

 前回(第179臨時国会) 施政方針演説
 「早くお外で鬼ごっこやリレーをしたい」、「お友だちとドングリ拾いやきれいな葉っぱ集めをして遊びたい」
 福島の幼稚園児について述べた部分

 今回(第180通常国会) 施政方針演説
 「がんばっぺ、福島。まげねど、宮城。がんばっぺし、岩手。そして、がんばろう、日本」「大震災直後から全国に響くエールを、これからも、つないでいきましょう」
 東日本大震災の復興について述べた部分

 誰も批判できない言葉である。こういう言葉を入れて、批判を押さえる。意図的に入れているのだから、巧妙。言葉は悪いが確信犯である。

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 さて、民主党と自民党&公明党のみなさま。公務員給与を8%カットを早々と決めました。ま~さ~か、議員定数削減も、歳費削減もできないなんてことはないでしょうね。まじめに議論をし、法律を作り、身を切らないと、あなた方が今度は国民に切られる番です。前にも書いたけど、

 きちんと覚えておくから、
  忘れないでね!!!

 です。

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 今回の演説では以下の語は1回しか出てこなかった。

 教育...0
 学校...1
 先生...0

 避難されている方々がふるさとにお戻りいただくには、安心して暮らせる生活環境の再建を急がなければなりません。病院や学校などの公共サービスの早期再開を図るとともに、(第2章)

 学校は確かに公共サービスである。私立学校であれば学校はサービス業に分類されるのだから間違いではない。でも、それ以上のもの、地域の中核であることをになっている。また、以前(2011.10.11、「10.11 7ヶ月過ぎた。」)ブログでも取りあげたが、震災で学業が中断、断念に追い込まれた高校生の問題だってある。施政方針演説は政府活動について大局的なことを中心に述べるのはわかっているが、なんだか不満である。

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