内閣総理大臣所信表明演説。国会において、重要政策課題を見据え、自らの政権の目指すことを掲げ、方針を述べる。総理大臣にとって非常に重要な機会である。日本国の総理大臣であるから、きちんとした日本語で訴えるべき当然の義務がある。こんなこと誰も疑わない。当たり前のこと。だから誰もそんなことを注文しない。
安倍総理大臣は前回総理大臣就任時の所信表明演説において、意味未確定な大量のカタカナ語を乱発した。その演説は西暦と元号も混在する、不思議なものだった。はっきり言ってお粗末な、常軌を逸したしろもの。その異様さに、僕は演説で用いられたカタカナ語をリストアップし、ブログで取り上げた。それ以来、僕のブログでは総理の所信表明演説、演説で使われるカタカナ語を取り上げるようにしている。日本国総理大臣が母語・日本語で語れないのでは、危険。気味が悪いからである。
英語の先生は、むやみにカタカナ語を使う人を信用しないのだ。
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1月28日に通常国会が開会。安倍総理は所信表明演説。さっそく官邸ウェブサイトにアップされた演説原稿DLして読んでみた。演説は新聞各紙にも書いてあるが、短くテーマも絞り込んだものである。
段落構成は以下のようになっている。便宜上①~⑥と番号をふる。
①アルジェリアのテロ事件についての言及
②はじめに
③経済再生
④震災復興
⑤外交・安全保障
⑥おわりに
演説にでてきたカタカナ語などをまとめてみよう。①とある場合は、上記①の部分で出てきたことを表す。複数の場合は②③のようにまとめた。
地名・国名・地域・国際機関
アルジェリア①
アジア太平洋地域⑤
日アセアン⑤
アセアン諸国⑤
ベトナム、タイ、インドネシア⑤
(この3カ国は、国会開会前に訪問していた場所である。)
演説原稿に「アセアン」とカタカナで書かれていた。アセアンは正式名称の「東南アジア諸国連合」といわれないことが多い。しかしながら、文字にする場合は、カタカナよりも「ASEAN」だと僕は思っていた。ちょっと新鮮な感じがした。
以下はカタカナ表記ではないが、日本との2カ国関係を表す語(国の名前)が出てきた。
『その基軸となる日米同盟を一層強化して、日米の絆を取り戻さなければなりません。二月第三週に予定される日米首脳会談において、緊密な日米同盟。。。』
日米(アメリカ)...4回
日韓(韓国)...なし。
日朝(北朝鮮)...1回
日中(中国)...なし。
テロ等を表す語(で、いいだろうか)として、以下の語が出てきた。
サイバー攻撃⑤
テロ①⑤、テロ行為⑤、テロ事件①⑤
経済関係・政治・行政の語として、以下の語が出てきた。
デフレ②③
イノベーション③
キャリア③
チャンス③
(成長)センター③
(経済全体の)パイ③
(政策)パッケージ③
iPs細胞③
プライマリーバランス③
フル(回転)③
ワンストップ④
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今回一番たくさん出てきたカタカナ語は、テロ、テロ〇〇である。何ともイヤな感じである。
演説全体でカタカナ語はびっくりするくらい少ない。アルファベットはiPS細胞だけである。
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この中で、言い換えを考えるべきは何か考えてみた。僕はやっぱり「イノベーション」がまだしっくり来ない。「技術革新」ではなぜダメなんだろう。
「(経済全体の)パイ」は「豊かさ」「総量」ではどうだろう。
政策のパッケージは「包括的な政策」とか「総合的な政策」と言えないだろうか。
「ワンストップ」は、「復興庁現地事務所で一括処理」ではダメなのか。
「プライマリーバランス」も、もう少し説明する(言い換える)ことができそうだ。
日本語で語りかける。民主主義国家たる日本では、政治はそれでしか進まないのだ。安倍総理&スピーチライターズは、さらなる努力を求めたい。僕はこれからもチェックは続ける。
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2007.09.13、「カタカナ語-2007.09.10」
2006.10.29、「KATAKANA part6 -final」
(リンクをたどれば、全部読むことができます。)
2007年は退任直前の演説の分析。2006年は就任直後の上記カタカナ語乱発演説の分析である。なお、この演説は平成25年1月31日現在、以下のアドレスで読むことができる。総理官邸のウェブサイトである。
第165回国会における安倍内閣総理大臣所信表明演説
http://www.kantei.go.jp/jp/abespeech/2006/09/29syosin.html