地元大宮から千葉県船橋までを結ぶ東武野田線。本年4月1日から、路線愛称を「東武アーバンパークライン」にするとのこと。 |
先月18日、職場で新聞を見て、しばし考えた。口から出た言葉は「う~ん」である。沿線住民&英語の先生として、「一言もの申して」みたい。
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まずこの愛称、「東武伊勢崎線」を「東武スカイツリーライン」とした時よりも、メッセージ伝達機能が弱い印象を受ける。
この線名(愛称)、通常「とうぶ」はあまり意識せず、省かれる。利用者、特に沿線住民にとって、身の回りに東武鉄道しかなければ、鉄道会社の名前は、ほとんど意識には上らない。だからこの線名は実質的に、「すかいつりー」と「らいん」という二つの音のかたまりとして、「言われ」、「聞かれ」ている。前者はは知名度抜群、後者も鉄道、道路名称としての市民権を得ており、認知度が高い言葉である。この名称は、「すかいつりー」というイメージ・情報を、メッセージとしてきちんと伝えることができている。
これに対して、「あーばん...」は、名称に固有名詞が含まれていない。最初から「とうぶあーばんぱーくらいん」と、長音が二つある。間延びしている印象である。そもそも、この名前、つなげて書かれると読みにくいのではないか。
「東武アーバンパークライン」
どうだろう?
英語の意味がわからないと、区切りがわかりづらいので、読みにくく、そして言いにくいのではないだろうか。
現在東武野田線は「のだせん」としか呼ばれない。新愛称を、初見ではかなりの人が「(あー)ばんぱー」「くらいん」で区切るのではないか。未知語は、既知語に影響される。何を伝えたいかわからなくなる。最初の「とうぶ」は「すかいつりーらいん」同様に省かれる可能性が高い。それでも文字数は10文字である。4から10はまずいだろう。
外来語が、「あーばん」「ぱーく」「らいん」と、会社名を省いてもまだ3ヶある。この中で、認知度は高い順に「らいん」「ぱーく」「あーばん」だろうか。仮に「かたまり」を意識しても、長い。やはり言いにくい。
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プレスレリース、「3 導入目的」には、こう書かれている。(赤は僕が気になるところ。)
愛称名を導入することにより、当社沿線をはじめ首都圏の皆様により一層親しみをもっていただき、更なるイメージアップを図ることで、沿線価値向上を目指します。
時事通信ニュース(17日付)では、こう書かれていた。
「都市」と「公園」を組み合わせた愛称の採用で、路線のイメージと沿線の不動産価値の向上を目指す。
路線イメージがパッとしない。不動産価値も、そんなに高くない。時事通信の記事の書き方だと、身もふたもないが、当たらずとも遠からずである。
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いろいろ考えたが一番の問題は、実態に即しているか否かである。大宮から春日部、柏を経由して船橋に至る東武野田線。いったいどこがurban(都会の)なのだろう。ruralとは言わないが、countrysideという場所も多い。英語のurbanがどの程度の状況を表すか、はっきりこうだと言えないのだが、野田線の走る場所は、「南関東(圏)外環」が実態である。実態に即さない名前は定着しない。無理せず、背伸びをしないほうがいいと思えるんだけどな。
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先月末に「アーバン+パークで東武野田線はこう変わる」(東洋経済オンライン記事)を読んだ。
『野田線利用者には数駅間の移動で使うものが多く、大宮=柏のような都市間移動にはあまりつかわない』という記述があり、いわれてみればそうだと感じた。『全線各駅停車のみ(速達列車がない)』『一部単線区間のあること』など、今後の課題がうまくまとまっていた。特記する。
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参考:YouTube
「10分で大宮→船橋 東武野田線 倍速映像」【検索】
・・・東武線沿線の様子がよくわかる。
写真はWikipediaによる。
撮影者:Ohtsuka Makotoさん。