先週金曜日、『大統領の執事の涙』を見に出かけた。映画ファンの掟なのでストーリーについては書かないことにする。感想をいくつか。
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同作を「アメリカ近現代史・政治史をなぞるだけの映画」とする映画評がある。実際に鑑賞して、それはある意味正しいと感じた。この作品はある黒人執事の目を通して、第2次世界大戦後の米国社会の変化を見る、見せる作品である。ある程度「なぞる」のはやむを得ない。しかし「なぞるだけ」の歴史再現ドラマではない。
主人公のセシル・ゲインズと妻、夫妻の二人の息子たち。4人は激変する米国社会で、生きる場所・意味をさがしつつ懸命に生活している。社会の変化はホワイトハウスの執事として生計を立てるゲインズ一家にも押し寄せる。その中で、親子の世代間対立、意見の相違、別れ、再会がていねいに描かれる。これは、どこにでも存在したであろう家族、人々、できごとを題材にしたドラマである。
以下は悪口ではない。念のため。
作品についてこんなことを考えた。これはNHK、特にEテレで時間と予算をかけて作成された、ミニシリーズのようだ。やや教科書的、大河ドラマ的な作品になっているのではないか。そういうことが苦手な人は、好きになれない作品かも知れない。そう感じた。でも、米国史をほんの少しでも学んだことがあるものにとって、歴史の激動を(追)体験させてくれるような作品である。
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映画を観ながら考えたこと。大統領役の俳優さんは大変だ。
昨年「42」でも書いたことだが、『よく知られた俳優が、ジャッキー・ロビンソンのようにこれまたよく知られた人物を演じると...』なのである。
劇中ゲインズと言葉を交わすのは、アイゼンハワー、ケネディー、ジョンソン、ニクソン、レーガンの5大統領。さらに、ジャクリーン・ケネディー、ナンシー・レーガン両大統領夫人。なんと現駐日大使、幼少期のキャロライン・ケネディーまで登場している。実写部分もフォード、カーター、オバマの3大統領。キング牧師、若き日のジェシー・ジャクソン師も登場する。それらがよくつながっている。特に二人のファーストレイディー、ジャクリーン・ケネディー(ミンカ・ケリー)とナンシー・レーガン(ジェーン・フォンダ)はすごいと思った。二人とは似ていないかも知れないが、二人のファーストレイディーがそこにいる。そう思えた。
俳優にとっては技術の見せ所かも知れないが、そっくりショーの批判されることだってある。
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以下思い違いかも知れない。
ホワイトハウスで仕事をする執事・ゲインズ。見学の小学生にクッキーを振る舞うシーンが2度ある。2度目の方がクッキーをもらう白人の子どもたちが、『Thank you.』をきちんといっていたように思えた。
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セシル・ゲインズは、「42」で取り上げたジャッキー・ロビンソンの現役生活最晩年頃、ホワイトハウスの執事になっている。
☆4つ(4/5)あげていい。