標記情報が平成29年12月21日文部科学省のウェブサイトに掲出された。専門職大学にかかることがらである。
以下引用する。
本年11月末に申請のあった平成31年度開設予定の大学等の設置認可について、文部科学大臣から12月20日(水曜日)に大学設置・学校法人審議会へ諮問されましたので,お知らせします。
1.諮問内容について
平成31年度開設予定の設置認可申請があった大学等
(専門職大学及び専門職短期大学) 16校[私立16件]
16校から設置認可申請があったことは、「東京電子の新大学」でも取り上げたが、この情報がそれである。なお、東京電子が設置を目指している専門職大学は2020(平成32)年開学予定なので、今回の申請には含まれていない。
早速資料を読み込んでみる。元の資料は以下のものである。(認可申請についての感想は、こちら。)
・平成31年度開設予定大学等認可申請一覧(平成29年12月)
〇専門職大学名(位置)
学部名
学科名
専攻名(入学定員)
16校すべて私立大学。丸数字は文部科学省の資料順である。
①国際工科専門職大学(東京都新宿区、名古屋市、大阪市)
東京工科学部
先端情報工学科(120)
カーデザイン学科(38, 2年次編入学定員2)
デジタルエンタテインメント学科(80)
大阪工科学部
先端情報工学科(80)
カーデザイン学科(38, 2年次編入学定員2)
デジタルエンタテインメント学科(38, 2年次編入学定員2)
名古屋工科学部
先端情報工学科(80)
カーデザイン学科(30)
デジタルエンタテインメント学科(38, 2年次編入学定員2)
②国際ファッション専門職大学(東京都新宿区、名古屋市、大阪市)
国際ファッション学部
ファッションクリエイション学科(80)
ファッションビジネス学科(38, 2年次編入学定員2)
大阪ファッション学科(38, 2年次編入学定員2)
名古屋ファッション学科(38, 2年次編入学定員2)
③専門職大学 東都学院大学(東京都目黒区、神奈川県茅ヶ崎市)
保健医療学部
理学療法学科(80)
④東京医療福祉専門職大学(東京都新宿区)
医療福祉学部
生命医療学科
救急救命コース(40)
臨床工学コースⅠ(40)
臨床工学コースⅡ(40)
口腔歯科コースⅠ(40)
口腔歯科コースⅡ(40)
医療技術学科
理学療法コースⅠ(60)
理学療法コースⅡ(40)
作業療法コースⅠ(40)
作業療法コースⅡ(40)
言語聴覚コース(40)
視能療法コース(40)
東洋医療学科
鍼灸コースⅠ(昼間部)(30)
鍼灸コースⅡ(夜間部)(30)
柔道整復コースⅠ(昼間部)(30)
柔道整復コースⅡ(夜間部)(30)
福祉心理学科
社会福祉・精神保健福祉コース(40)
社会福祉・精神保健福祉・介護福祉コース(40)
看護保健学部
高度看護学科
高度看護コースⅠ(160)
高度看護コースⅡ(60)
⑤東京専門職大学(東京都江東区)
医療福祉学部
リハビリテーション学科
理学療法専攻 昼間コース(80)
理学療法専攻 夜間コース(40)
作業療法専攻 昼間コース(80)
作業療法専攻 夜間コース(40)
福祉介護イノベーション学科(40)
⑥金沢専門職大学(石川県白山市)
職業経営学部
職業経営学科(80)
⑦名古屋医療福祉専門職大学(名古屋市)
医療福祉学部
生命医療学科
救急救命コース(40)
臨床工学コース(40)
口腔歯科コースⅠ(40)
口腔歯科コースⅡ(40)
医療技術学科
理学療法コースⅠ(40)
理学療法コースⅡ(40)
作業療法コースⅠ(40)
作業療法コースⅡ(40)
言語聴覚コース(40)
視能療法コース(40)
東洋医療学科
鍼灸コースⅠ(昼間部)(30)
鍼灸コースⅡ(夜間部)(30)
柔道整復コースⅠ(昼間部)(30)
柔道整復コースⅡ(夜間部)(30)
福祉心理学科
社会福祉・精神保健福祉コース(38, 2年次編入学定員2)
看護保健学部
高度看護学科
高度看護コースⅠ(昼間主コース120)
高度看護コースⅡ(夜間主コース40)
⑧京都専門職大学(京都市)
実践栄養調理学部
栄養マネジメント学科(60)
和食ビジネス学科(30, 3年次編入学定員10)
⑨大阪医療福祉専門職大学(大阪市)
医療福祉学部
生命医療学科
救急救命コース(40)
臨床工学コース(40)
医療技術学科
理学療法コースⅠ(40)
理学療法コースⅡ(40)
作業療法コースⅠ(40)
作業療法コースⅡ(40)
言語聴覚コース(40)
視能療法コース(40)
東洋医療学科
鍼灸コースⅠ(昼間部)(30)
鍼灸コースⅡ(夜間部)(30)
柔道整復コースⅠ(昼間部)(30)
柔道整復コースⅡ(夜間部)(30)
福祉心理学科
社会福祉・精神保健福祉コース(38, 2年次編入学定員2)
看護保健学部
高度看護学科
高度看護コースⅠ(昼主体)(120)
高度看護コースⅡ(夜主体)(40)
⑩島根保健福祉専門職大学(島根県仁多郡奥出雲町)
保健科学部
理学療法学科(40)
作業療法学科(30)
⑪岡山医療専門職大学(岡山市)
健康科学部
理学療法学科(80)
前期(3年)と後期(1年)
作業療法学科(39)
前期(3年)と後期(1年)
⑫高知リハビリテーション専門職大学(高知県土佐市)
リハビリテーション学部
リハビリテーション学科
理学療法学専攻(70)
作業療法学専攻(40)
言語聴覚学専攻(40)
⑬福岡専門職大学(福岡市)
保健医療学部
柔道整復学科(80)
鍼灸学科(40)
理学療法学科(80)
診療放射線学科(80)
看護学科(80)
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申請者(設置者)調査
①②④⑦⑨日本教育財団
モード学園、HAL、東京ならば首都医校などを設置運営する学校法人。平成30年4月から東京通信大学も開校。
③小関学院
東都リハビリテーション学院を設置運営する学校法人。
⑤敬心学園
医療系専門学校を5校設置運営している。
⑥国際ビジネス学院
ペット、ホテル&ブライダル、医療事務関係の専門学校を設置運営する学校法人。
⑧大和学園
栄養、調理、製菓等の専門学校を設置運営する学校法人。
⑩仁多学園
島根リハビリテーション学院専門学校を設置運営する学校法人。
⑪本山学園
岡山医療技術専門学校他2校を設置運営する学校法人。
⑫高知学園
高知短期大学、同附属幼稚園の他、小中高リハビリの専門学校を設置運営する学校法人。
⑬福岡医療学院
福岡医療専門学校を設置運営する学校法人。
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続けて、専門職短期大学も見てみよう。
〇専門職短期大学名(位置)
学科名
専攻名(入学定員)
3校すべて私立大学。丸数字は文部科学省の資料順である。
①ヤマザキ動物看護専門職短期大学(東京都渋谷区)
動物トータルケア学科(80)
②日本歯科専門職短期大学(静岡県磐田市)
歯科衛生学科
昼間部(40)
夜間部(40)
③大阪調理専門職短期大学(大阪府泉大津市)
食育学科(30,2年次編入学定員5)
申請者(設置者)調査
①ヤマザキ学園
ヤマザキ学園大学を設置運営している。同大学は、専門学校から短期大学(三年制)を経て、四年制大学と改組された。現在動物看護学部動物看護学科(2専攻)を運営している。
既設大学とは別に、専門職短期大学(三年制)を開設する。
平成31年度から、大学の名称をヤマザキ動物看護大学と変更予定。
②染葉学園
静岡県下で専門学校を4校設置運営している。
③村川学園
大阪府泉大津市で大阪調理製菓専門学校を設置運営している。
【感想】
こまるな。。。
第一印象が、「高校の進路指導部は、困るな」である。
今回の専門職大学設置認可申請で赤字にしたものは、専門学校が主たる養成機関(学校)だったものが、ここ十数年間で大学・短期大学が養成機関として徐々に増えている分野である。平成30年度の開学・開設予定を見ても、その傾向は顕著である。
従来の専門学校か大学(短期大学)どちらかで学ぶから、専門学校、大学(短期大学)、専門職大学(同短期大学)の三つのうち、高校生はどこかを選ぶことになる。専門学校と大学ならば修業年限の違い、就職時の給与の違いなどがある程度イメージできるが、大学と専門職大学では少なくとも修業年限の違いはない。つまり技能と資格を得るコスト的な差異が見いだしにくい。分野によっては修業年数が延びることになる。
専門職大学については、学校教育法の第八十三条の二で以下のように規定されている。
「前条の大学のうち、深く専門の学芸を教授研究し、専門性が求められる職業を担うための実践的かつ応用的な能力を展開させることを目的とするものは、専門職大学とする。」
赤字にした設置申請を出している各専門職大学学部学科で育成することをめざす職業は、元々上記条文における下線部に書かれている教育を行うことが求められ、そうしてきた大学・短期大学である。これらと差別化ができるのだろうか。生徒から進学希望の相談を受けた場合、僕たちは説明できるのだろうか。
作れるの?
次に感じたことは、そもそも「23区内に作れるのか」である。
今回の専門職大学13校のうち、資料で東京23区内にキャンパスを置くと考えられるのは、①②③④⑤である。①の東京工科学部240名(編入枠を含む、以下同じ。)、②120名、③80名、④880名、⑤280名になる。資料の読み間違いがなければ、全部で1600名である。昨年9月19日に、「私大定員抑制方針撤回を」でも取り上げたが、23区内は既設大学は実質的に定員増はできなくなるはず。専門職大学の新設は別なのか。(専門職短期大学の①も含めれば、1680名である。)
なお、今回の専門職大学の申請分の合計は、13校18学部44学科にもなる。入学定員の純増は4201名。2年次編入枠18名、3年次編入10名である。平成31年度開学を目指す大学はこれら以外にも、昨年11月21日に、「平成29年10月末申請の大学等の設置認可及び平成30年度からの私立大学等の収容定員の増加に係る学則変更認可の諮問について(平成29年11月10日)」で取り上げた4校がある。
分野の偏りが顕著では?
東京、名古屋、大阪3エリアに設置を計画しているもの以外にも、全般的に看護医療系が非常に目につく。そのこと自体の是非はともかく、専門学校の教学スタッフが、そのまま大学で教えることが可能なのかわからないが、三年制から四年制に移行する(であろう)学部学科の場合、それなりに人を集めなくてはどうにもならないはずだ。これはできることなのだろうか。
制度新設時に話題になったICT分野、農業分野が少ない、もしくはない。
18歳人口は減る。それも、急速に。
大晦日に読売が報じた「私立大112法人が経営難、21法人は破綻恐れ」とも関連することだが、専門職大学と専門職短期大学が新規に16、一度に増えることをどうとらえるべきか。
’18年以降は、18歳人口が再び減少局面に入る。大学進学人口ではなく、18歳人口が”どんどん”減るのである。専門学校として受け入れていた集団が、そのまま専門職大学に移行すると考えているのであれば、危険だろう。上記申請16件(16校)のどれとは言わないが、全部にOKが出るとは思えない。
十年ほど前の「学校設置会社(株式会社)立大学」の時のようなことがないよう、大学設置・学校法人審議会には審査をしてもらいたいと思う。何をどのように言い繕っても、後々まであれは忖度だといわれる大学ができるのでは、よろしくない。
まだまだ、わからないことが多すぎる。
今後とも注視する。