花燈火、ゆり戻す戀に
燈花の百合―万葉集×古事記
燈火の 光に見ゆる紗由理花 由利も逢はむと 想ひ初めてき 内蔵縄麻呂
ともしびの ひかりにみゆる さゆりばな ゆりもあはむと おもひそめてき
燈火の光に見える薄紅いろ清らかな百合の花
薄暮ほの白く揺れて明るませ、また揺らぎ夕風の戻るように
君の許に戻りたいと想い初めてる、清らかに優しい百合のような君に今逢いたい
『万葉集』第十八巻に掲載の歌です。
宴席で読まれたちょっと政治的な色もある歌ですが、相聞歌に訳しました。
宴の土産として百合の花で作った髪飾りが贈られた歌になります、が、百合の花にある恋愛伝説から恋歌解釈です。
歌中「由理」は百合のことで、万葉仮名では「由理」「由利」と表記されていました。
現在の「百合」は中国から伝来した書き方で、2~3世紀頃の中国の古書に記載されています。
いずれも読み方は「ゆり」ですが、語源の説は幾つかあってドレと正解特定はされていません。
その一説に風揺らぐ花の様子「揺り」があるんですけど、上記の歌そのまんまです。
また、球根が寄り重なり集まっている形「寄り」が転訛したとも言われています。
百合の花物語には伊須気余理比売命の伝説があります。
読みは「いすきよりひめのみこと」この「余理」が転訛して「ゆり」になったという語源説ですが「寄り」にも通じます。
彼女が百合の花を摘んでいる姿に神武天皇が恋して妻とした物語が『古事記』に記載され、これが日本最古の百合に関する記述です。
この花物語は奈良の三輪山麓が舞台とされており、当時の植物分布などから彼女が摘んだ百合は笹百合だと考えられます。
笹百合は中部地方より西から四国や九州に分布する日本固有種で、芳香があり葉や茎が笹に似ているので「笹百合」の名が付きました。
花色はごく淡い薄紅色でアルビノの純白もあります、この変成種として新潟や東北に自生する姫早百合があり淡紅色で芳香性の花です。
姫早百合は別名に乙女百合・春百合・小町百合・会津百合など異称も多く、淡桃色と香が親しまれ園芸種として乱獲されました。
またダム建設などで植生地が絶滅させられた為に絶滅危惧IB類ENに指定され、そのあと保護活動で少し持ち直しています。
現在は2008年の新レッドリストでは準絶滅危惧NTにランクされていますが、希少種であることは今も変わりません。
それは笹百合も同じで園芸目的の乱獲が続けられるために分布を狭めていく現状があります。
で、写真の花は鉄砲百合だと思うんですけど、台湾固有種の帰化植物である高砂百合との交雑がちょっと入っている感じです。
鉄砲百合は南西諸島や九州南部が原産で本州以東は園芸用として移入され野生化して根付きました、写真も野生化した花です。
高砂百合は白ベースに淡紫色の筋が特徴で、根元がつながっている細めの花被片は6枚で外側は橙褐色になります。
歌は冒頭「燈火の光」とあることから百合の花色が明るい色だと解かります。
ここでは薄暮ゆれる燈火のようなイメージ+当時スタンダードだった笹百合の花色で訳してみました。
薄紅あわい花色は優しい柔肌と頬なめらかな貌をを想わせて、伝説の花物語にもなぞらえる恋愛の相聞歌です。
昨夜UP「七彩の光 aurora」校正をあと少しします。
第67話「陽照4」も加筆は終わりました、校正ちょっとする予定です。
今夜は第67話の続きと短篇1つ掲載しようかなと思っています。
寝落ちした昨夜は短編2本の予定が1本でしたが、笑
取り急ぎ、
美しき百合の花 2ブログトーナメント
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