萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

雑談寓話:或るフィクション&ノンフィクション@御曹司譚372

2015-09-08 19:10:27 | 雑談寓話
師走の半ば夜、再会した御曹司クンは泣いた。

「久しぶりに会えたのにいきなりさーもうちょい浸らせてくれよなーもー、」

って乾杯のセリフから御曹司クン涙目で、

「泣きたいなら泣いちゃいな、待っててやるからさ?笑」

って言ったら、

「…もーさー、そんな…あいかわらず優し、」

ってセリフから涙こぼれて中ジョッキ片手に御曹司は泣きだした。
声はない、顔すこし傾けてビール啜りながら泣いている、
そんな顔は相変わらず拗ねてるようで、だけど記憶よりすこし大人びて見えた。

こいつも色々あったんだろな?

って思った、
それは花サンのことだけじゃない、御曹司クンが背負う諸事情全般だろう。

ソノ業界ソレナリ大手の跡取り、
多忙な両親とは会話の時間あまり無し、
お袋の味は家庭料理<レストラン系、
ゲイ寄りバイ、カミングアウトほぼ未済

こんなのドラマみたいな設定、きっとBL本とやらも喜ぶのだろう?
だけど御曹司クンには現実で、そのリアルは甘くない。

跡取り息子→職場の人間関係は縁故なしと違う気苦労がある。
代表取締役である父親と比較されて「あたりまえ」評価対象であることが日常だ。
社内評論家たちの視線はどんな空気なのか?
ソレだけでも御曹司クンの涙はしかたない。

御曹司クンの性格から言って、ソレナリ笑顔でやってるだろう。
でも「ソレナリ」だから鬱屈アタリマエに溜まる、
その吐け口をドコにするのか?

が、御曹司クンの問題点だなー。

なんて考えながら御曹司クンの泣き顔と酒飲んで、
花サンが泣いていた理由を思い出して、
で、ふたりが選ぶ先をツイ心配した。

こういう御曹司クンと花サンが結婚して、幸せなんだろうか?

「…ぅー…泣き止むの待ってくれてる?」

って泣き顔×セリフに思考中断されて、笑
あらためて見たテーブル越し、赤い目の拗ね顔に笑った、

「泣きながら話すとか無理だろ?笑」
「う…悔しいその言い方、けどうれしー」

なんて会話に御曹司クンは少し笑って、
涙まみれだろう笑顔におしぼり投げてやった、

「涙拭いたら溜まってるもん吐いちゃえよ、聴いてやるから、」

ホント全部ここで吐いちゃえばいい、
ソレで楽になれば余裕できるだろう?
だから言ったら御曹司クンはヤヤ照れた、

「ちょ…なんか照れるしソレ、照」

なんでこいつデレてんの?
って思ってすぐ言い返してやった、

「吐き出すのは口から本音の言葉だからな、シモじゃないから期待するなよ?笑」

ソレくらい御曹司クンも解っちゃいるだろう、笑
でもトリアエズ笑わせたくて言って、で、拗ね笑いが返ってきた、

「ソレくらい解ってるっつーの、変態あつかいすんなよバカっ、」

拗ねて、だけど半分は嬉しい。
そんな顔ひさしぶりで懐かしかった、で、ついツッコミいれた、笑

「ふーん、無断キスしようとか変態痴漢だよな、ねえ?笑」
「そっ、それは感情の昂りっていうかなんつーかっ、」

慌てたみたいな声、目の動き、
そんな挙動不審も前と変わらない、ちょっと安心して訊いた、

「で、いちばん最近の我慢した原因は?笑」

こう見えてコイツは我慢だらけだ、
事情ソレくらい解ってる、だから訊いたら御曹司クンは笑った、

「俺が我慢してるとかさー言ってくれんのホント…おまえくらいだ、」

おまえくらいだ、なんて言葉は=孤独

他に誰もいないって意味だ、
それだけ寂しい時間が御曹司クンの現実で、
そこに「居るべき名前」がでてこ無いことが哀しかった、で、訊いた、

「花サンも気づいてると思うよ、おまえの我慢もさ?」

気づいている、だから彼女も悩んでいる。
けれど御曹司クンはシニカルな口元で笑った、

「…どうかなー気づいてても聞いてくれないんなら無視と同じじゃね?」

第109回 1年以上前に書いたブログブログトーナメント

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移動中に取り急ぎ、笑



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