萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

未来点景 soliloquy めぐる秋―another,side story

2016-09-29 22:00:20 | soliloquy 陽はまた昇る
The day is come when I again repose 安らぎの再来を、
周太某日@第85話+X日後



未来点景 soliloquy めぐる秋―another,side story

いつかと願っていたのは、ごくふつうの日。

「…まだかな?」

ひとりごとページ零れて窓を見る、空が青い。
見あげる梢は金色ゆらす、もう黄葉の季が訪れる。
昨日までは夏の陽ざしも今は澄んで、きっと風さわやかに涼しい。
だって街ゆく誰もが長い袖、シャツ一枚の短い季に週末がさざめいている。

ほら、ふつうの風景。

―でも新宿はまだ暑いのかな…川崎も、

なつかしい地名なつかしい気候、でも今は遠い。
遠くなってしまった懐かしい場所、それでもう良いと解かっている。
それでも鼓動ふかく欠片まだ疼くのは、帰りたい願いがあるのだろうか?

―どうしているのかな、みんな…深堀と柏木さん元気かな、瀬尾も…伊達さんも、

めぐりだす名前に懐かしい、そして最後の一人。
あの人にまた会えるのだろうか、もう生きる世界が違ってしまった人。
それでも繋がり全て忘れるなんて出来なくて、その証拠がスマートフォン揺らした。

「あ…、」

受信の画面そっと開いて、ほら懐かしい名前。

From:箭野孝俊
件名:春からよろしく
本文:湯原の後輩になるよ、学部は違うけどよろしくな。

「よかった…、」

うれしくて微笑んでしまう、この人と毎日また会える。
こんな日常が続いたらいい、もう数年前とは違う今に指先なぞった。

To :箭野孝俊
本文:合格おめでとうございます、同門になること本当に嬉しいです。
   お祝いに飲みいきませんか?ご都合また教えてください。

「ん…、」

指先そっと送信ボタンなぞる。
送られたデータ確認して、かたん、目の前の椅子が鳴った。

「周太、それ誰と飲みいくって?」

低い綺麗な声、でも不機嫌。
そんなトーンに顔上げた先、切長い瞳が見つめていた。

「おまたせ周太、そのメール誰?」

あ、面倒なことになりそう?
そんな待ち人の声につい言い返した。

「…質問の前に英二、遅刻したのに言うことそれだけ?」

ほら言い返した、これも今の日常。
こんな日常が幸せで、だから今、ささやかな幸せの喧嘩しよう?


(to be continue)

周太と英二もたまにはノンビリで→もうちょい続きます、笑
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コメント (2)
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