Thou art more lovely and more temperate.
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/07/8f/32810cc501174a7ae3b5b7240b74b993.jpg)
第85話 春鎮 act.26-another,side story「陽はまた昇る」
からり、扉が開く。
「あ、よかった一番乗りだ周太、」
チタンフレームの瞳ぱっと笑う、ひとなつっこい眼ざし明るい。
こじんまり寛ぐ座敷、腰おろした手がパネルとった。
「腹減ったよなあ、まず何いく周太?」
もう注文していいのかな?
まだ二人の酒席、花束そっと置きながら訊いた。
「でも賢弥、みんなまだだけど…?」
「大丈夫だよ、先にオーダーしとけって言われてるんだ、」
愉しげな笑顔のむこう、活けられた花やさしい。
やわらかな照明に咲く春たちに微笑んだ。
「きれい…さくらに菜の花、かわいいね?」
座敷のかたすみ春が咲く。
匂いやかな薄紅と明るい黄色、燈される花に友達が笑った。
「サクラサクでいいな?合格祝いだって予約したからかも、」
「ん、お祝いらしいね…、」
うなずいて見つめる花ひとつ、ふわり肩くつろぐ。
都会の一室でも花は優しくて、心そっと声こぼれた。
「賢弥、さっきの話だけど…いい? 」
たしかめたい、今すこしだけ。
まだ来ない待ち人の時間にチタンフレームの瞳が笑った。
「ときにオーダーしたらな、オレンジのカクテルあんぞ?」
パネル差しだして明眸が笑ってくれる。
メニュー眺めて、決めて発注すると言ってくれた。
「たぶん5分でくるよ、先生たちは15分後だってさ。そのつもりで話そ?」
「ん…ありがと、」
うなずいて溜息ひとつ、それから息ひとつ呑む。
さっきから聴きたかった疑問ひとつ、そっと声にした。
「僕…もっと驚かれると想ってた、」
どうして君、驚かないでくれたのだろう?
“冷たい偏見で見られる事も知っている。ゲイと知られて、全てを否定された事もありました、”
新宿のガード下、あの青年が言ったこと。
ごく普通の会社員に見えた、それでも否定された現実がある。
あんなふう自分も泣くだろう、そう思っていた現実にチタンフレームの瞳が笑った。
「まあなあ、ヒント無かったら驚いたかもな?」
どういう意味?
「…ひんと?」
「うん、ココロの準備ってあるだろ、お?」
かたん、
気配に眼鏡の視線が扉見る。
瞳笑って、浅黒い指ひとつ口もと立ててくれた。
「一旦停止な周太、予想より2分速かった、」
また話そう?
そんな仕草に扉から声かかる。
ノックからり開いて、運ばれた盆からオレンジ香る。
(to be continued)
harushizume―周太24歳3月下旬
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第85話 春鎮 act.26-another,side story「陽はまた昇る」
からり、扉が開く。
「あ、よかった一番乗りだ周太、」
チタンフレームの瞳ぱっと笑う、ひとなつっこい眼ざし明るい。
こじんまり寛ぐ座敷、腰おろした手がパネルとった。
「腹減ったよなあ、まず何いく周太?」
もう注文していいのかな?
まだ二人の酒席、花束そっと置きながら訊いた。
「でも賢弥、みんなまだだけど…?」
「大丈夫だよ、先にオーダーしとけって言われてるんだ、」
愉しげな笑顔のむこう、活けられた花やさしい。
やわらかな照明に咲く春たちに微笑んだ。
「きれい…さくらに菜の花、かわいいね?」
座敷のかたすみ春が咲く。
匂いやかな薄紅と明るい黄色、燈される花に友達が笑った。
「サクラサクでいいな?合格祝いだって予約したからかも、」
「ん、お祝いらしいね…、」
うなずいて見つめる花ひとつ、ふわり肩くつろぐ。
都会の一室でも花は優しくて、心そっと声こぼれた。
「賢弥、さっきの話だけど…いい? 」
たしかめたい、今すこしだけ。
まだ来ない待ち人の時間にチタンフレームの瞳が笑った。
「ときにオーダーしたらな、オレンジのカクテルあんぞ?」
パネル差しだして明眸が笑ってくれる。
メニュー眺めて、決めて発注すると言ってくれた。
「たぶん5分でくるよ、先生たちは15分後だってさ。そのつもりで話そ?」
「ん…ありがと、」
うなずいて溜息ひとつ、それから息ひとつ呑む。
さっきから聴きたかった疑問ひとつ、そっと声にした。
「僕…もっと驚かれると想ってた、」
どうして君、驚かないでくれたのだろう?
“冷たい偏見で見られる事も知っている。ゲイと知られて、全てを否定された事もありました、”
新宿のガード下、あの青年が言ったこと。
ごく普通の会社員に見えた、それでも否定された現実がある。
あんなふう自分も泣くだろう、そう思っていた現実にチタンフレームの瞳が笑った。
「まあなあ、ヒント無かったら驚いたかもな?」
どういう意味?
「…ひんと?」
「うん、ココロの準備ってあるだろ、お?」
かたん、
気配に眼鏡の視線が扉見る。
瞳笑って、浅黒い指ひとつ口もと立ててくれた。
「一旦停止な周太、予想より2分速かった、」
また話そう?
そんな仕草に扉から声かかる。
ノックからり開いて、運ばれた盆からオレンジ香る。
(to be continued)