萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

如月、雪湖水鏡

2018-02-06 22:17:26 | 写真:山岳点景
雪化粧の水面、冬晴れ青色


聞いてください17ブログトーナメント
撮影地:山中湖と富士山@山梨県

冬期、寒冷地は道路も凍結します。
写真撮影も足場きちんと確認=安全自助してくださいね。
○冬期閉鎖しない道路も山間部は凍ります、冬タイヤ・チェーン×運転技術が必須です。
○山は斜面方角により気温が異なります、北斜面にカーブしたらいきなり凍結も当り前・実際よくスピンや突っ込んだ跡を見ます。
○ハイキング的コースでも運動靴NG、登山靴×ゲイターで足の保温しないと爪先から凍えて行動不能にすぐ陥ります。
○崖際に三脚はNG!雪庇の踏みぬき崩壊で転滑落→遭難死が毎年何件も発生しています。
○14時過ぎると気温低下→路面もアイスバーンはもちろんブラックバーンに凍ります、運転要注意。
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secret talk66 安穏act.3 ―dead of night

2018-02-06 00:00:01 | dead of night 陽はまた昇る
端緒、黎明、
英二23歳side story追伸@第6話 木洩日


secret talk66 安穏act.3 ―dead of night

月が昇る、夜がゆく。
明日がもう今日になる。

「どうなるかな…」

ひとりごとベッドの上、開けっぱなした月に融ける。
カーテン揺らす夜の風、紺青色ひるがえす雲に銀色かがやく。
あの月が動くたび朝は近づいて、そして来る時間に英二は微笑んだ。

「…遠足の子どもみたいだ、俺、」

もう今日になる、そうして来る朝に待ちわびる。
ただ楽しみで、そうして燻る鼓動に眠られない。

―どんな家なんだろ、湯原の部屋とか、

誰かの家に行く、それだけのことに想像めぐる。
どんな場所があの横顔を育てたのだろう?それに、

―湯原の「母さん」か、

母親。

どんな母親なのだろう、あの横顔を生んだのは。
どんな貌でどんな声で育てられたのだろう?

―俺の母さんとは全く違うんだろうな、たぶん、

違う、きっと。
その「違う」はたぶん君に限ったことじゃない。
自分の家とは全て違う、そんな予感にあの声が映る。

“ 殉職したんだ ”

君の声が叫ぶ、静かに。
涙が声になるのなら、たぶんあんな声だ。

―湯原の父さん…か、どんな人だったんだろ、

殉職、その現実はきっと苦しい。
苦しいから多分あんな声になる、あんな貌で、あんな眼で。
自分は知らない苦しみがある、でも、自分と比べてどちらが幸せなのだろう?

「…泣けるかな俺は、」

想い声になる。
あの涙に考えてしまう、自分は泣くだろうか?
もし自分の親が死んだなら、自分の心は正しく泣くのだろうか?

―お祖父さんの時は泣いたな俺、でも、

でも、父に母に泣くだろうか?
こんな疑問自体もう「正しく」ない、そういう自分の家だ。
そういう自分が君の家に行く、そうして知れるなら幸せだろうか?

「湯原の家…か、」

声なぞって瞳を閉じて、今日の時間なぞりだす。
明日のため外泊申請書を書いた、それだけで鼓動いつもと違った。
それを提出する鼓動も違って、それから、

『宮田君、実家ではない所が書いてあるけど?』

そうだ、あの担当者の貌。

―なんであんな貌したんだ?

一瞬のこと、けれど確かな違和感。
なぜ外泊先を見た瞬間、あんな眼になった?

『わかりました、担当教官と話してもらえますか?』

回答する貌「いつもどおり」唇うごかした、でも眼が違った。
瞳孔が大きく見えた。

―感情が揺れて瞳孔が大きくなるんだよな、

心理学のテキストに書いてあったこと。
その知識が今こんなところで反芻する、それだけの違和感があった。
外泊先が常と違う、それだけ、それだけで何故あんな貌しなくてはいけない?

―湯原の名前を見てあの貌になったんだ、もしかしたら?

もしかしたら?

仮定ひとつ見つめて瞳がひらく。
ベッド寝ころんだ視界に月が高い、開けたままのカーテン、月。

※校正中
secret talk64 安穏act.2← →secret talk67

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