ただ君の隣に、
secret talk70 安穏act.7 ―dead of night
そんなつもりないから。
だなんて君は言うけれど、何について「ない」と言う?
君が言う「ない」は、この自分と同じだろうか?
―男同士でとか…ない、よな?
ほら自問自答する、自分こそ「ない」から。
正直に言えば「ない」と思いたい、でも想いはどこへ?
「…宮田は、嫌だった?」
ほら君が訊く、何が「嫌」なのだろう?
「嫌って、何が?湯原?」
訊き返しながら心臓が響く、轟く。
穿たれて疼いて鼓動ひっぱたく、これは何だろう?
ああそうか、ひとつの回答が怖い?
“ 男同士とか嫌だ ”
そんな回答ひとつ怖い、君の声なら。
そんな拒絶ひとつ鼓動ふるえる、なぜ、どうして?
―俺、やっぱり湯原が好きなのか?
ほら自問自答する、こんなこと知らない。
こんなふう心臓に谺する問い、こんな想い知らなくて、だから笑った。
「どうして湯原、俺に嫌だったとか訊いてくれるわけ?」
なにげない問いかけ、冗談みたいな自分の声。
だって本気でなんか言えないことだ、男同士だなんて「嫌」だろう君は?
嫌がられる、嫌われる、そんなこと解っている、そうして震える心臓まんなか君が言った。
「らーめん…」
ぼそり、君の唇つぶやいてオレンジこぼれる。
あまい香しずかに穏やかに黒目がちの瞳が見あげた。
「…またかよって言うからだろ宮田が、だから嫌だったか訊いただけ」
それ以外なにがある?
そんな視線が自分を映す、黒目がちの瞳いぶかしげに見あげてくれる。
それ以外なにもない、それのになぜ訊くのだろう?そんな貌の君で、ああ、なんだそのことか?
「ラーメンが嫌かってこと?」
「ん、」
問いかけて君が肯く、ああなんだそのことか?
なにげない言葉の答えに呼吸ほっと胸くつろげた。
「ラーメンが嫌だったら俺、最初も誘わないだろ?」
くつろいだ鼓動ほどかれる、唇ほころぶ。
こんな「嫌」だったなら可笑しい、笑った隣に君が見あげた。
「それなら昼、ラーメン」
見あげる小さな顔の前髪ゆれて瞳が透ける。
黒目がちの瞳が見てくれる、その視線ただ幸せに笑った。
「いいよ、新しい店いっしょに開拓しよっか?」
君と一緒に新しいことをする、そういうの悪くない。
新宿で昼を食べて、公園に行って、それから帰路につく。
それが君との決まったコースになった、いつのまにか。
―このコース、湯原以外とはもう歩かないだろな俺?
あと何回、このコースを辿れるのだろう?
警察学校も卒業まであと2ヶ月ほど、もうじき遠くなる。
この隣から遠くなる、離れてゆく、そうして思い出す全てから目を背けたい、きっと、
きっともう、この駅に降りることも辛いかもしれない。
―新宿がそんなふうになるんだ、俺?
雑踏ゆく風、埃っぽい人並み、それから時おり視線。
いくどか出遭う視線の相手、でも通りすがり残らない。
ただそれだけの街だった、それなのに君のため君の街になる。
あと2ヵ月でたぶん、この道も怖くなる君のために。
「宮田、」
ほら君が呼ぶ、ほら自分が立ち止まる、時このまま止められたら?
そんな背中のまんなか温もりふれる、気配ぶつかりかける温もり。
「急に止まるなよ宮田?」
すこし笑ってくれる声、君の声だ。
この声そのまま抱きしめられたらいいのに?
「ごめん湯原、でも呼んだの湯原だろ?」
君が呼んだから立ち止まった、それだけ。
それだけ止めたい時間のまんなか、君が訊いた。
「誕生日に何もらったら、女の人は喜ぶかな」
呼吸、一瞬で止まる、どうして君そんなこと訊くのだろう?
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英二23歳side story追伸@第6話 木洩日
secret talk70 安穏act.7 ―dead of night
そんなつもりないから。
だなんて君は言うけれど、何について「ない」と言う?
君が言う「ない」は、この自分と同じだろうか?
―男同士でとか…ない、よな?
ほら自問自答する、自分こそ「ない」から。
正直に言えば「ない」と思いたい、でも想いはどこへ?
「…宮田は、嫌だった?」
ほら君が訊く、何が「嫌」なのだろう?
「嫌って、何が?湯原?」
訊き返しながら心臓が響く、轟く。
穿たれて疼いて鼓動ひっぱたく、これは何だろう?
ああそうか、ひとつの回答が怖い?
“ 男同士とか嫌だ ”
そんな回答ひとつ怖い、君の声なら。
そんな拒絶ひとつ鼓動ふるえる、なぜ、どうして?
―俺、やっぱり湯原が好きなのか?
ほら自問自答する、こんなこと知らない。
こんなふう心臓に谺する問い、こんな想い知らなくて、だから笑った。
「どうして湯原、俺に嫌だったとか訊いてくれるわけ?」
なにげない問いかけ、冗談みたいな自分の声。
だって本気でなんか言えないことだ、男同士だなんて「嫌」だろう君は?
嫌がられる、嫌われる、そんなこと解っている、そうして震える心臓まんなか君が言った。
「らーめん…」
ぼそり、君の唇つぶやいてオレンジこぼれる。
あまい香しずかに穏やかに黒目がちの瞳が見あげた。
「…またかよって言うからだろ宮田が、だから嫌だったか訊いただけ」
それ以外なにがある?
そんな視線が自分を映す、黒目がちの瞳いぶかしげに見あげてくれる。
それ以外なにもない、それのになぜ訊くのだろう?そんな貌の君で、ああ、なんだそのことか?
「ラーメンが嫌かってこと?」
「ん、」
問いかけて君が肯く、ああなんだそのことか?
なにげない言葉の答えに呼吸ほっと胸くつろげた。
「ラーメンが嫌だったら俺、最初も誘わないだろ?」
くつろいだ鼓動ほどかれる、唇ほころぶ。
こんな「嫌」だったなら可笑しい、笑った隣に君が見あげた。
「それなら昼、ラーメン」
見あげる小さな顔の前髪ゆれて瞳が透ける。
黒目がちの瞳が見てくれる、その視線ただ幸せに笑った。
「いいよ、新しい店いっしょに開拓しよっか?」
君と一緒に新しいことをする、そういうの悪くない。
新宿で昼を食べて、公園に行って、それから帰路につく。
それが君との決まったコースになった、いつのまにか。
―このコース、湯原以外とはもう歩かないだろな俺?
あと何回、このコースを辿れるのだろう?
警察学校も卒業まであと2ヶ月ほど、もうじき遠くなる。
この隣から遠くなる、離れてゆく、そうして思い出す全てから目を背けたい、きっと、
きっともう、この駅に降りることも辛いかもしれない。
―新宿がそんなふうになるんだ、俺?
雑踏ゆく風、埃っぽい人並み、それから時おり視線。
いくどか出遭う視線の相手、でも通りすがり残らない。
ただそれだけの街だった、それなのに君のため君の街になる。
あと2ヵ月でたぶん、この道も怖くなる君のために。
「宮田、」
ほら君が呼ぶ、ほら自分が立ち止まる、時このまま止められたら?
そんな背中のまんなか温もりふれる、気配ぶつかりかける温もり。
「急に止まるなよ宮田?」
すこし笑ってくれる声、君の声だ。
この声そのまま抱きしめられたらいいのに?
「ごめん湯原、でも呼んだの湯原だろ?」
君が呼んだから立ち止まった、それだけ。
それだけ止めたい時間のまんなか、君が訊いた。
「誕生日に何もらったら、女の人は喜ぶかな」
呼吸、一瞬で止まる、どうして君そんなこと訊くのだろう?
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