萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

第86話 花残 act.5 side story「陽はまた昇る」

2019-01-07 22:30:09 | 陽はまた昇るside story
Interval、
英二24歳3月末


第86話 花残 act.5 side story「陽はまた昇る」

桜ふる、君も花を見る?

「は…、」

ため息ひとつネクタイ緩める、背中に駅が離れてゆく。
スーツもネクタイも嫌いじゃない、それでも息苦しさに今を哂った。

―蒔田さんは嫌いじゃないけど、今日の話はちょっと疲れたな?

くつろげた衿元に肩肘ゆるめて、もたれる車窓に街うつろう。
コンクリート聳える群れ、アスファルト詰まるテールランプ、灰色だらけの都会風景。
それでも時おり咲く薄紅は春、桜並木とビルの波ながめながら英二は見た。

「桜…か、」

桜、さくら、記憶ゆする花。
遠い昏い、遠くても明るい、近く燈らす夜と朝。

―周太は俺のこと思いだすのかな、桜…去年と、その前と、

君に出逢った春3月、警察学校の門前。
ただ下見に訪れた桜の道、たたずんだ横顔が自分を惹きこんだ。
あの時あの場所で君、何を想っていたのだろう?

『…ここの、教官じゃないかな』

最初に聴いた君の声、そう言って自分を見た。
こんなことまで憶えている、こんな自分を君は知らない。

―きっと俺のこと印象最悪だったろうな、周太?

あの日あの時、いいかげんな姿で自分は立っていた。
あの門を入ること覚悟ではなく逃亡で、ただ自分の現実から離れたかった。

―そんな俺が結局、鷲田を名乗ること選んだんだ。周太を追いかけるうちに、

鷲田、この名前が自分の現実。
この姓を名前に生きること、そこに敷かれる道の涯。
その道程は自由で監獄だ。

『鷲田君が警視庁を受験したとき、宮田次長検事のお孫さんだと話題になったよ。司法試験を首席合格している君が何故だろうとね?』

祖父二人、二人の孫であるということ。
その事実が自由も監獄も与える、それが自分の世界で現実。
そういう自分だから雪山あの瞬間、君を選んで生きたいとあがいた。

“生きろ周太っ、”

雪山の狙撃、誘発された雪崩、あの冷厳の底に命を願った。
それは自分のためじゃない、唯ひとり君を生かしたかった。
そうして生き延びた今を車窓は街に流れる、でも君は遠い。

―俺も生きたいんだ周太と、そして…山の世界に生きて、

山、そこで共にした生死の瞬間。

雪山ふかく抱かれる冷厳、大気の水分きらめき凍る空。
あの場所に君の命ひとつ抱いて、その死は怖くて、けれど生きていると鼓動が響いた。

―あの切り株が芽吹いていたんだ、だから生きられると思えた俺は、

雪崩の巣窟きらめく斜面、あの切株に命たくすしかなかった。
切株に撃ちこんだハーケンの手元、萌黄色ちいさな芽が見えた。
撃ちこむときは気づかなかった、それだけ必死な自分と幼い芽に微笑んだ。

ああ生きているんだ。

微笑んだ頭上、轟音と冷厳の波かぶさり呑みこんだ。
つないだ巨木の切株に命を託す、その瞬間に生きた芽を見た。
そんな自分だから他人事に想えない「事件」あの雪山に「起こされた」こと。

『約束は今この時を逃せば叶わない。だから渡部は今回の事件を起こしました、』

あの「今」に「あの男」の意図がある。

―総務省の官僚じゃなかったら巻きこまれなかった、輪倉さんも渡部さんも…冤罪の人も、

観碕征治 内務省警保局にいた男。

内務省は総務省の前身、戦前まで警察も管轄だった。
そこで過去から紡ぐ権力に事件を惹き起こす、いつも何度も。

―でも輪倉さんがいなければ他の誰かだっただけだ、総務省で「使える」誰かを、

あの男は「使える」なら使う、それだけだ。
その動機すべて過去にある、過去への執着ゆえに「今」を壊す。
そういう男だと今は知っている、だから「聴きたい」のだろう?

『例の嘱託OBが長野の件を聴きたいらしい、』

長野の籠城事件、その後いくど接触はかられている?
もう自分と祖父達の関係は把握しているだろう、その意図を思案かたわら微笑んだ。

「…箱庭の住人が、」

声ひそやかに微笑んで、車窓いつもの風景に流れこむ。
ゆるやかになるスピード列車は停まって、いつもの駅に英二は降りた。

―もう着いてるんだろな、佐伯は?

佐伯啓次郎が来る、自室の隣に。
それは時間どんなふうに変えるだろう?

『あの佐伯か、』

あの佐伯、そんなふう蒔田ですら言った。
どういう男なのだろう?

『アイツ山岳会でも凄腕だがな、まあ頑張れ?』

蒔田の台詞に記憶なぞる、アルコールまだ新しい記憶。
酒と星空と雪の記憶ながめながら、いつものゲートを潜った。

※加筆校正中

第86話 花残act.4← →第86話 花残 act.6

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初春ひらく

2019-01-07 07:41:19 | 写真:花木点景
白梅ひらく、馥郁の春。
花木点景:白梅


撮影地:神奈川県2016.1

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水仙、冬麗の光陰

2019-01-06 22:43:00 | 写真:花木点景
冬の陽だまり、香る光の陰翳。
花木点景:水仙


季節を感じるお花さん108ブログトーナメント
撮影地:神奈川県2016.1


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睦月五日、三角草ーGuardian

2019-01-06 07:32:01 | 創作短篇:日花物語
護られる手、
1月5日誕生花ミスミソウ


睦月五日、三角草ーGuardian

料理人なんか、と幾度もう言われたろう?
そして称賛の眼ざしも幾度もう僕のもの。

「シェフ、」
「はい?」

呼ばれて返事して、でも手は皿に動かす。
唇かすめる湯気あまく深く芳ばしい、そんな居場所いつもの言葉。

「お客様がシェフにお礼をと言われていますが?」

お礼、こんなふう言われる日常。
ほら?また過去を笑い飛ばせる。

『料理人なんかに、』

過去の声また響く、あれは卑下の聲。
それすら過去と呼べる今に微笑んだ。

「はい、何番テーブル?」
「1番です、皿はどれもキレイでした。」

答えたコックコート姿に皿を渡す。
ソースなめらかな艶チェックして、コック帽を直しながら扉を開けた。

ほら、今日も満席。

「あらシェフ、今日もおいしいわ、」
「今日もいい味だ、ありがとうシェフ?」

ほら席あちこち笑いかけてくる。
いつもの声に笑顔むけ会釈ゆっくり歩む、その靴先ふわり絨毯うずむ。

「ほんと素敵なお店ね、上品だけど気さくに寛げて、」
「いい雰囲気だろう?」

踏みしめる絨毯ごと声が称える。
こうして聞くごと過去は遠退いて、一番テーブルに辿りついた。

「本日はようこそ、お口に合いましたでしょうか?」

微笑んで軽やかに頭さげて、今日の客を見る。
仕立て美しいカジュアルジャケット、銀髪なめらかな紳士、そんな客が穏やかに笑った。

「とても美味しかった、いい時間を過ごさせてもらいました。」
「気に入って頂けたなら、」

笑いかけ会釈して、満足の瞳が自分を讃えてくれる。
讃える眼ざし穏やかに朗らかで、その視線が同席者に微笑んだ。

「彼女も気に入ったようだよ?いつも食が細いのに残さずたいらげました、」

言葉に笑いかけた先、満足の瞳が笑ってくれる。
この眼は今日が初見、これから常連になるだろうか?

―デセールもプティ・フールも完食か、ほんとに気に入ったみたいだ?

空いた皿に満足度うかがえる。
これは「次回」もあるだろう?そんな予想にメゾソプラノ響いた。

「ほんとうに、ほっぺこぼれそうでした、」

あ、なつかしい言葉だ?

『大介がつくるとね、ほっぺこぼれそうよ?』

なつかしい声が笑いだす、遠い遠い幸せな声。
ただ懐かしく女性客に微笑んだ。

「ありがとうございます、」

すこし頭さげ笑いかけて、映るワンピースの薄紅色やわらかい。
藤色ふくんだ紅色あわい優雅、そのシルクに過去が呼んだ。

「私にはなつかしい味でした、みかんゼリーが特に、」

今、なんて言った?

「それはおまえ、オレンジのジュレだろう?間違えるなんて失礼だよ、」

銀髪の紳士がたしなめる、でも「間違え」じゃない。
メニューの名は紳士が言う通りで、それでも彼女は微笑んだ。

「ごめんなさい。でも私には、みかんゼリーなの、」

メゾソプラノが微笑む、その口もと黒子が青い。
この口もと昔むかし笑っていた僕の前で?

「シェフが考えたメニューなのだから、おまえ流に言っては違うだろう?」
「ごめんなさい、」

謝りながら微笑む口もと、黒子が青い。
笑っている瞳ゆるやかに睫あげて、まっすぐ自分を見た。

「ごめんなさい、ここではオレンジのジュレと言うんですね?でも私が初めて食べたときは、みかんゼリーだったんです、」

テーブルから見あげてくれる瞳、黒目がち鳶色が深い。
この瞳だ。

『大介がつくるとね、ほっぺこぼれそうよ?』

遠い幸せな日、笑ってくれた。
あれから冬いくつ超えたろう?想い素直に微笑んだ。

「奥様が仰る通りです。私が初めて作った時も、みかんゼリーでした。」

笑いかけた真中、黒目がち鳶色ふかくなる。
あまいオレンジ香る午後、ほら?遠い遠い幸せの声。

「ええ…今日のみかんゼリーも、ほっぺこぼれそうでした、」

メゾソプラノが微笑む、遠い遠い声より深い声。
見あげてくれる輪郭やわらかに臈たけて白い、遠い遠い日は薔薇色まるかった頬。

「光栄です、喜んでいただけたのなら。」

笑いかけて頭さげる、軽く、でもさっきより深く。
傾けたコック帽に君の眼差しふれてくれる、もう見つめあえない瞳。

「…ええ、私ほんとに喜んでいます、なつかしい大好きな味なんです、」

幸せな声が告げてくる、あのころのまま君の言葉。

『大好きよ、大介!』

みかん香る、あまい清らかな酸味、涼やかな艶。
オレンジ色あざやかに透けるひとつの菓子、それから薄紅やさしいワンピース。
もう遠い遠い幸せなとき、あのころのまま薄紅やわらかにまとう女性へ笑いかけた。

「私も大好きな味です。メニューは師匠から教えられた通りのフランス語で載せていますが、今の時季だけミカンで作るんですよ?」

大好きだ、今も。

『大介がつくるとね、ほっぺこぼれそうよ?』

大好きで忘れられない、だから今も作り続けて皿に載せる。
隔てられた過去のまま。

「なるほど。彼女が言う通り、ほんとうにミカンゼリーなのだね?」
「はい、内緒ですよ?」

目の前の紳士に笑いかけて、けれど記憶もう軋む。
遠く遠く隔てられた記憶、過去。

『料理人なんかに、娘をやれるか?』

遠くなった言葉、遠い遠い幸せの終止符。
それでも忘れられなかった、忘れられないまま作り続けてきた。
いつか君を迎えに行く、ただ願いごと作り続けた一皿、その甘い香にメゾソプラノが告げた。

「私、ほんとうに大好きです、涼しいお菓子なのに温かくなれるの、」

あの日と同じ言葉が微笑む、その口もと黒子が青い。
もう確信するしかない現実の瞳に、そっと背すじ伸ばし笑った。

「ありがとうございます、奥様、」

奥様、それが今の君の呼び名。
あのころ隔てられて、今も変わらない壁に会釈した。

「お茶のおかわりお持ちいたします、」

笑いかけ頭下げて、君の視線ちいさく逸らす。
もう見つめあってはいけない、それが幸せたどる一筋の道。
ただ踵かえして絨毯を踏んで、扉から扉ひとつ自分の世界に開いた。

かたん、

扉を開いて厨房ざわめく、背に扉が閉じられる。
こうして隔てられていく面影に微笑んで、いつもの言葉を言った。

「1番テーブルにおかわりを、」

告げて厨房ながめて歩く、白いコックコートたち忙しい。
銀色ポット出されて馥郁ゆれて、あまやかな香くぐり勝手口ドア開けた。

さあっ…

風がゆく、あまい香ながれて落葉が香る。
裏庭ひとり枯草ふんで、いつもの庭木ことり背凭れた。

「は…、」

息をつく、肩ゆるやかに力ほどかれる。
硬くなった呼吸ゆるく吐いて、白い息に微笑んだ。

「憶えててくれたんだ…」

君は憶えていてくれた。
味も、僕のことも。

『でも私には、みかんゼリーなの、』

あのころのまま君が言った、あのころのまま薄紅色まとって。
もう遠いはずの幸せが現れてしまった、そんな足もとに微笑んだ。

「なんだ…同じ色じゃないか?」

足もと枯草落葉、けれど小さく薄紅色が咲く。
この花いつも毎年ここに見て、そのまま見つめた現実の声なぞる。

『私ほんとに喜んでいます、なつかしい大好きな味なんです、』

なつかしいと、現実に君は言った。

「なつかしいんだ…もう過去だから、」

声こぼれて軋む、過去になった現実に。
もう手をつないではいけない、もう幼い幸福は終わってしまった希望。
もう見つめあえない、もう迎えに行くこともできない、それでも護られる。

『ほんとうに大好きです、涼しいお菓子なのに温かくなれるの、』

それでも護られる、この手に温めるひと口で。


三角草:ミスミソウ、花言葉「自信・忍耐・悲痛、優雅、高貴、少年時代の希望」

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暁空、正月二日

2019-01-05 19:00:25 | 写真:街角点景
あらたまる年二日、瞬間あらたまる空。
街角点景:暁空


深夜高速の夜明け@サービスエリア、日の出が綺麗だったので。笑
撮影地:愛知県2019.1.2


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水仙、新春に白

2019-01-04 21:31:15 | 写真:花木点景
凛凛、無垢あらたに白い。
花木点景:水仙


撮影地:神奈川県2015.1


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正月四日な金曜×車窓雑談

2019-01-04 13:52:12 | 雑談
正月四日、仕事初め。
なんだけど今朝の電車は空いていて、
あー明日は土曜→今日も休んで連休継続が多いんだなあ?
あーだから今朝ご近所のおばさんにも、

あら?もう今日から?

って訊かれたんだな?
なんて納得した今朝なんだけど、
ソンナワケで今日は早上がり→今すでに帰宅の車窓で、笑

明日から土日、
明日は家のんびり×庭いじりでもするかなー
なんて発想している今なんだけど、

「庭いじり」

なアタリが引っ越したんだなーって実感アラタメてで、
去年いまごろ家のコトばたばただったなーとアラタメてで、笑

なんていうナンでもない車窓つれづれ。
ほっとする暮らし97ブログトーナメント

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睦月三日、福寿草―Eden

2019-01-03 22:21:02 | 創作短篇:日花物語
楽園にて、
1月3日誕生花フクジュソウ


睦月三日、福寿草―Eden

黄色い陽だまり、春が咲く。

「おじいさん、ここにも咲きましたよ?」

ほら君が呼ぶ、いつからその呼び名だろう?
おだやかな春の声に考えながら微笑んだ。

「よく咲いてるな、だが、おじいさんじゃないだろう?」
「あら?」

陽だまり黄金色、おだやかな声が振り返る。
かすかに甘い空気ゆれる庭、花のたもと笑いかけた。

「おまえにとっての僕は、お祖父さんじゃないだろ?齢もそんなに離れているわけじゃない、」

こんなこと今更だろう?
それでも言ってみたい春の午後、銀髪の妻が笑った。

「そうですねえ?じゃあ、あなた?って呼べばいいかしら、」
「うん、それでいい、」

微笑んで庭下駄からり、足もと黄金の花が咲く。
いつのまに花こんなに増えたろう、あざやかな春の色に妻が言った。

「でもね?私も、おまえじゃないわよ?」

呼び名に妻が笑いだす、黒目がちの瞳ほろり和ませる。
こんなふう黙ってなんかいない妻に可笑しくて笑った。

「そうだなあ、じゃあ…ヒサコサン?」

ああほらくすぐったい、笑いたくなる。
ほらほら名前で呼ぶなんて?

「あら?ひさしぶりに呼ばれたわ、」

ほらほらほら妻が笑いだす、黒目がちの瞳くるり可笑しがる。
この仕草ずっと好きだった、この重ねこんだ幸せに頭つい掻いた。

「そんな笑うなよ?照れくさくなるだろ、」
「あら、私こそ照れくさいわよ、」

ああほらほら君が言い返す、黒目がちの瞳くるり僕を見る。
見あげてくれる睫まだ霜はおりない、このままと願う眼ざし春を見て。


福寿草:フクジュソウ、花言葉「幸せを招く、永久の幸福、最上の愛、悲しい思い出」

心温まる生活116ブログトーナメント
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正月星月×雑談

2019-01-03 07:26:00 | 雑談
元日+2時間=1月2日AM2時、家を出て東名高速道路ひたすら西へ。
渋滞どこにも無かったけれど時間のわりに車が多く、サービスエリアも車わりといて、
けっこうみんな深夜移動するんだなー思いながらSA歩いていたら・車中睡眠中やっぱり多いワケで。

そんな途次あちこちSAに立ち寄りながらが楽しい、笑
そんな途中のサービスエリア上空・有明月×星がきれいだった。
有明月=別称・下弦後の三日月、月齢26日くらい


なんでもいいよ43ブログトーナメント
撮影地:静岡県2019.1.2


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睦月二日、黄水仙―revert

2019-01-02 15:48:16 | 創作短篇:日花物語
ふたたび、
1月2日誕生花スイセン(黄色)


睦月二日、黄水仙―revert

冬麗、そんな晴れた空は。

「あれ…?」

声ひとり零れて仰ぎ見て、額そっと風ふれる。
視界おおう梢は黒い、その彼方あざやかな青と白。
黒と青と白、ただ三つの色彩どこか懐かしくて、額ふれる風ほろ苦い。

―雪の匂いだ、湿った土と、

ほろ苦い香あわい風、足もと微かな氷ふむ。
かさり、かさっ、靴底あわい霜柱くずれて進む。
地中から凍てつく畑の道、山あおぐ梢に青も白もただ懐かしい。

「…ただ畑の匂いなんだけど、」

ひとりごと唇ほろ苦い香、土が雪が匂う。
吹く風やわらかな冷気は山から奔る、そんな昼下がりの畑が甘く香った。

「お、」

声ひとつ、香の底に黄色ゆれる。
あわい色彩やわらかい、ゆれる黄色あわく甘く微笑んだ。

「…春だなあ?」

雪これから、そんな正月の畑に春が咲く。
そうして廻る日月ただ待ちわびて、君?
季節の彩り 108ブログトーナメント

黄水仙:キズイセン、花言葉「私のもとへ帰って、もう一度愛して」

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