井上隆史 平凡社 2020
500ページを超える大部なもの。
没後50周年で発刊された。
全20章。最初に分析の視点であるセバスチャン・コンプレックスが示され、年代順に解き明かされていく。自死に向けての推理小説を読んでいるような面白さがある。同時に、作者の三島作品への愛を感じる場面も多い。
ノーベル賞のくだりも興味深かったし、繊細な面にフォーカスする手法もなるほどと思った。
俗物的な面があったことが、逃げ場としていくつか触れられているが、もっとエピソードはあり、その辺はどうだったのかなと思うところはある。
三島のオーソドックスな評伝として残っていくものかなと思う。