ダロン・アセモグル&サイモン・ジョンソン著 早川書房2023
テクノロジーの歴史とそれが社会に対してどんなインパクトがあったかを通説を超えて、格差という観点からも分析する。しかしながら、マルクス経済学のアプローチではない。歴史学と近代経済学と欠けていた新たな視点というところだ。ノーベル賞の前段階と言われるジョン・ベイツ・クラーク・メダルを受賞した著者である。
上巻が歴史中心で、ちょっと読むのに苦労したが、下巻は最近の話題からGAFAからAI、そして民主主義の危機までを論じる。結語的なテクノロジーの方向転換というのは、まだまだ深い検討が必要ではあるが。
巻末の文献の解説と出典は素晴らしい。筆者たちのアプローチを学問的に先行研究に照らして論じる。章ごとにもきちんとしたそうした解説がつく。知的な水準を落とさず、わかりやすく、素晴らしい書籍だ。