2011年正月第2弾、TOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開
中国と台湾の歴史に翻弄(ほんろう)された元夫婦の悲喜こもごもを描き、家族とはどうあるべきかを問い掛ける人間ドラマ。40数年前に妻と離ればなれになった台湾の老兵が
、上海に新しい家族を持つ妻の元を訪ねたことから、家族それぞれの思いが浮き彫りになっていく様子を映し出す。監督は、『トゥヤーの結婚』で国際的な名声を得たワン・チュアンアン。第60回ベルリン国際映画祭の最優秀脚本賞にあたる銀熊賞を受賞した、深みのあるストーリーに感じ入る。
配給:ギャガ
・ここのところずっと固い記事ばかり書いてきたので肩が凝った。当たり前である。固い人間ではないからである。私はただのおっちょこちょいで、まるっきり漫談みたいな人生を送ってきてしまったからである。致し方なし。それでも、こんな人間でもいい映画には感動することもある。
・この映画は、昨日、大学の講義の空き時間に見させていただいたものである。タイトルも聞いたことがなかったが、紹介にまず興味を持ったのである。政治と文学というテーマであると思った。最初は。ドストエフスキーみたいだなと感じたのである。ドストエフスキーは学部時代の卒論のテーマでもあったから、それなりに読みこんだつもりであるからである。
・そんな感じで見させていただいた。あくまで空き時間である。それにクラスメイトも一緒であったから気軽に見始めた。字幕があるから、わかるよと同級生諸君(こんなじじぃに同級生とは死んでも言われたくないだろうケド)に言われて見始めたのだが、画面が小さくて困った。こっちに来なさいよと言われて、一番前に座らせていただいた。それでもまだ小さいので、フンフンとうなりながらである。
・遅れてきた同級生が来てからそれが一変した。なんと、手元の機械であっという間に画面を大きくしてくださったのである。リモコンというのだそうである。笑った。こんなこともオイラは知らないのかって、ね。自宅のテレビと一緒じゃないかと。もっともテレビは殆ど見ないからなぁ。。。。。
・しかしである。そこからぐいぐい引きつけられていった。政治的にはまったくの素人であるから以下の感想文は、素人の戯言として書かせていただくケド。
・二人の男性に翻弄される女性。彼女の生き方を、決して他人事ではないと思ったからである。妻として、たった一年だけ過ごした男性が、国民党で一緒に逃げようとした港で会えなくて、彼女は一人中国に残されてしまう。
・彼女はその後、大陸側で、夫と多くの子とも達と40年にわたって家庭を構築して、それなりに幸福に過ごしていく。そして、ある日突然一年だけ過ごした前の夫が、上海の彼女の家を訪ねてくるのである。そこからの描き方が抜群であった。
・女性主人公を主役として考えていくのであろう、普通は。有名な女優さんだそうで、不勉強な私は、知らなかった。彼女の陰影に富む演技は実にすばらしい。迷いや、悩み、前の夫と再婚しようと決意するまでの起伏ある心理状態を見事に演じきっている。
・それよりも、現在の夫を演じた男優さんがすばらしい。彼は、前の夫と再婚を決意する妻を許すどころか、応援するのである。これにはびっくりした。脚本の見事さであろう。そして役者の演じ方も実にいい。
・なぜそんなことが言えるのであろうかと思ったのである。そこまで見事に割り切れることができるのだろうかとも。カードをとりながら見ていたので、だんだん分析的になってきていた。素直に見られないのである、アタシャ。
・そして、気がついた。現在の夫もまた、政治的に痛みを負って生きていたのであった。台湾にいる前の夫も、戦争で引き裂かれ、政治的な争いの中で痛みを背負っていたのであった。
・二人とも、主体を生きることができなかったのである。他者に翻弄され、価値を信ずることができず生きてきたのであろう。なんともなんともいたましいことであった。それに気がついたら、実に哀しくなって、お目目からアセが出てきた。すぐ後ろの同級生もグスングスンとやっていた。私以外は全員(3人しかいないが)中国の大学の先生方である。しかも女性であるから、身につまされたのだろうか。私だって目からアセが出るのである。当時者としてはもっと切実なのだろう。もっとも、これ以上は書かない。国情の違いというものがあるだろうから。
・されど身につまされた。
・なぜか。それは、私の配偶者が、この映画の主人公のように、ある日突然、前の・・・とか言っていなくなったらどうしようと思ったのである。あっても不思議ではない。可能性として。
・それにしても急転直下。現在の夫は、脳梗塞になってしまう。それでも、この夫は言う。妻に。あなたの幸福のためにはそれがいいのだと。できた夫である。ここまで言えるかということである。アタシャ言えないです。くだらない煩悩の固まりでありますから。
・さらにできた男が、前の夫。すべてをそれであきらめるのである。これ以上は書かない。書いてはいけない。映画会社に叱られてしまう。
・いい映画だった。身につまされるという点を除けばであるが。